映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

47RONIN

2013年12月11日 | 映画(は行)
エキゾチック&ファンタスティック



* * * * * * * * * *

キアヌ・リーブス主演で、47浪人・・・?
ということで、随分前から気になっていた作品なのですが・・・。
いやはや、皆様、
これはあの「忠臣蔵」の物語はすっかり忘れて観たほうが良いです。
単にモチーフとして名前や設定を借りているだけ。
はじめから何も知らない若い方のほうが受け入れられるかも。


つまりは単純に、ファンタジー・アクションと割りきって見れば良いのです。
赤穂の国の君主浅野は、
吉良(浅野忠信)と妖女ミヅキ(菊地凛子)の陰謀により、
切腹せざるを得ない事態となり、
そしてその部下たちもサムライとしての身分を奪われてしまいます。
大石内蔵助(真田広之)らは、
主君の仇討ちと、
吉良の妻にならねばならない浅野の娘・ミカ(柴咲コウ)を救い出すために、立ち上がる!!



映画を観ていても、これが日本とは到底思えない、
へんてこな舞台背景や衣装。
(あ、だから気にしないことにしたのだった!!)
でも、キツネやらドラゴンやらに姿を変える魔女(?)ミヅキは、
なかなかイカしてました。
こういうCG部分があるからこそ、ファンタジーと割り切ることができる。
あの、しなやかなキツネさんは好きですけどねー。
目つきが悪いですよね―。



あ、そうそう肝心のキアヌ・リーブスは
初めから素性不明の異端者として登場します。
浅野に拾われるのですが、周りからは蔑まれる惨めな存在。
しかし、ミカだけは優しく接してくれた・・・。
その出自の謎は途中で明らかにされ、なるほどと、納得させられます。
もちろん、キアヌ・リーブスはカッコ良いのですが、
真田広之さんがまたステキです。

すっかり国際俳優の貫禄ですね。
本作に彼がでていなければ全く目も当てられなかったかも。
その大石の息子、主税役が赤西仁さんなのですが、
結局この人は何をした? 
何にもいいとこなかったじゃん、という感じで、
ちと残念でした。
そして吉良にはせっかくの浅野忠信さんの起用なのですが、
こちらは単なる悪役という設定で、
いやもったいない、こんな役柄ならもっと他の誰でも良かったでしょ、
と思わざるをえない。



まあ、なんと言いますか、
絶対に日本人では作り得ない忠臣蔵ではあります。
エキゾチック!!&ファンタスティック?!

「47RONIN」
2013年/アメリカ/121分
監督:カール・リンシュ
出演:キアヌ・リーブス、真田広之、柴咲コウ、浅野忠信、菊地凛子、赤西仁
非日本度★★★★★
満足度★★☆☆☆

エンド・オブ・ホワイトハウス

2013年12月09日 | 映画(あ行)
全くの絵空事でなさそうなのが怖い



* * * * * * * * * *

ジェラルド・バトラーが主演と合わせて
製作にも関わっている作品です。
何故かこの公開時、別のホワイトハウス危機の作品もありましたよね。
そちらも、機会が出来ましたら、見たいと思います。

さて今作、北朝鮮テロリストの襲撃により、
様々なセキュリティに守られ難攻不落のはずのホワイトハウスが、13分で陥落。
大統領が人質となり、
日本海域からの米軍第7艦隊の撤収と、核爆弾作動コードを要求される・・・。
かつて大統領専属のシークレットサービスとして活躍していたマイク(ジェラルド・バトラー)は、
ある事故の後、一線から遠ざかっていたのですが、
単独で、テロリストに占拠されたホワイトハウスに潜入し、
大統領の救出を図ります。



冒頭、ちょっとショックな事故のシーン。
それがマイク・バニングのその後の性活に影を落としているわけですが、
そういう境地からの回復という側面や、
大統領の息子とマイクの絆という面もストーリーに良い深みを増しています。



そして、ワシントンDCに領空侵犯の飛行機が突っ込む様、
その直後、ホワイトハウスを襲撃するテロリスト、
ホワイトハウス前で起こる銃撃戦。
迫力に満ちています。
そしてスピーディ。
あれよあれよという間なのですが、
そうでないと、そもそもこのテロ作戦は失敗ですしね。
私達はどうしても9・11のテロを思い起こしてしまうわけですが、
今や、こんな光景が全くの絵空事と思えないところに薄ら寒さを覚えます。
本作をもし、9・11以前に観たとしたら、
これほど『怖い』感じがなかったのではないでしょうか。
ただの痛快なアクション作だと。
アメリカの不敗神話は敗れた。
こういう背景のもと、光る作品のような気がします。
けれども、それに立ち向かう逞しさも、充分に感じました。



ホワイトハウスのセキュリティというのは、
こんな風に、真正面から武装集団が乗り込んでくる、
というような事は想定外なのかもしれません。
しかし、この広い邸内であればこそ、
1人対数十人の戦いであっても、一人の方に利はある。
それなりの度胸と力量がなければダメですけれどね・・・。

エンド・オブ・ホワイトハウス [DVD]
ジェラルド・バトラー,モーガン・フリーマン,アーロン・エッカート,アンジェラ・バセット,メリッサ・レオ
TCエンタテインメント


「エンド・オブ・ホワイトハウス」
2013年/アメリカ/120分
監督:アントワン・フークア
出演:ジェラルド・バトラー、モーガン・フリーマン、アーロン・エッカート、アンジェラ・バセット、メリッサ・レオ、リック・ユーン
アメリカの悲劇度★★★★★
満足度★★★☆☆

大奥(2006)

2013年12月08日 | 西島秀俊
西島さんが出るなら、恩怨渦巻くドロドロの世界だって・・・



* * * * * * * * * *

おっと、これも西島秀俊カテゴリでいいんですか?
もちろん! 
今までこれを観ていないのが不思議なくらいでした。
というか「大奥」は苦手だったんだよね~。
そう、男女逆転の「大奥」はそれなりに面白かったんだけど、
なんというか女達の欲望やら妬み・嫉みの渦巻くドロドロした世界、というのが嫌でさ―。
テレビでも観たことなかったんだよ。
現実に近すぎるからかしらね?
そうかも・・・。


で、本作は、実際にあった「絵島生島事件」を元にしています。
江戸幕府7代将軍家継の時代。
といってもこの将軍はまだ幼少なんだね。
そう、いくらなんでもまだ結婚はできない。
だからまあ、普通、大奥では上様の覚えのめでたい女性が頂点に立つことになるのだろうけれど、
ここでは前将軍の側室であり、家継の生母である月光院(井川遥)が一応トップに立っている。
しかしそれを面白く思わないのが、前将軍の正室である天英院(高島礼子)その他の一派。
彼女らはなんとか月光院を今の地位から引きずり降ろそうと色々な陰謀を巡らせる。
ああ、やっぱりこわいよねー。
で、その月光院を支えるのが大奥総取締の絵島(仲間由紀恵)というわけなんだね。
そうなんだけどね、彼女に立ち向かってくるのは
浅野ゆう子、高島礼子、松下由樹、木村多江、杉田かおる・・・。
ひゃー怖い怖い。
こんな中で、日々ストレスに晒されてたら身がもたないよー。
それで西島秀俊さんは?
はい、それが、歌舞伎役者生島新五郎。
天英院の陰謀で、絵島を色仕掛けで誘惑しスキャンダルを起こそうという目論見のもと、
絵島に接近して来るのだけれど・・・
いつしか二人は本当に惹かれ合っていく・・・と。


きゃ~!! この彼がイナセでカッコイイのだわ―。
涼やかな目元!!
こんな人に誘惑されたら誰だってイチコロだよ・・・。
西島さんは本当にチョンマゲが似合うよねえ・・・。
若き日の山本覚馬もステキだったけど、
ここの「新さん」も、なんてセクシーなのかしらん。
雑踏の中で、新五郎に引かれた手がほどけ、立ち止まり見つめ合う二人。
そして今度は絵島から彼の方に歩み寄り手を握る。
いやあ、良いシーンでした!!

大奥 スタンダード・エディション [DVD]
仲間由紀恵,西島秀俊,井川遥,及川光博,杉田かおる
ポニーキャニオン


「大奥(2006)」
2006年/日本/125分
監督:林徹
出演:仲間由紀恵、西島秀俊、井川遥、及川光博、杉田かおる
女達のドロドロ度★★★★☆
西島秀俊の魅力度★★★★★
満足度★★★★☆

「風の中のマリア」 百田尚樹

2013年12月07日 | 本(その他)
オオスズメバチの驚くべき生態

風の中のマリア (講談社文庫)
百田 尚樹
講談社
 

* * * * * * * * * *

命はわずか三十日。
ここはオオスズメバチの帝国だ。
晩夏、隆盛を極めた帝国に生まれた戦士、マリア。
幼い妹たちと「偉大なる母」のため、
恋もせず、子も産まず、命を燃やして戦い続ける。
ある日出逢ったオスバチから告げられた自らの宿命。
永遠に続くと思われた帝国に影が射し始める。
著者の新たな代表作。


* * * * * * * * * *


本作、非常に風変わりな作品です。
主人公は学名で言うヴェスパ・マンダリニア、
つまりオオスズメバチのワーカー、マリア。
蜂が主人公といえば「みなしごハッチ」を連想してしまいますが、
そんな甘ったるいものではありません。
巣の中にいる幼い妹(幼虫)たちを養うために
命がけで狩りを続ける毎日。
マリアを主人公とした物語ではありますが、
オオスズメバチの不思議な生態を、非常に科学的に解き明かしています。
オオスズメバチといえば、
遠足の列に襲いかかったりする獰猛な嫌われ者の昆虫。
巣が見つかりさえすれば即、駆除の対象となってしまいます。
でもこの本を読んだら、
「そう簡単に駆除していいのか?」
という気持ちが沸き上がってしまいますね。
でもやっぱり、見つけたら駆除するでしょうけれど・・・。


オオスズメバチのワーカーはすべてメス。
彼女らが狙うのは他の昆虫たちですが
狩りをしたらすぐに頭部や腹部、脚などは切り離し、
胸の部分を噛み砕いて肉団子を作る。
それを巣に持ち帰って幼虫たちに食べさせます。
肉食なのはその幼虫たちのみ。
成虫の彼女たちが何を食べるのかといえば、
幼虫が吐き出す密や、木の樹液。
自ら狩った獲物は自分では決して口にしない、というところでまず驚かされました。
女王蜂は外には出ず、ひたすら卵を生み続けるだけ。
しかしその女王が、この一つの巣を作るまでの物語が又壮絶なのです。
そして秋も終わりに近づいた頃、
女王蜂はワーカーに殺され、オスバチが生まれ、
そして新たな女王蜂となるべきメスバチが生まれる。
すべては、蜂個体の遺伝子のためではなく、
種族の遺伝子を守り存続させるため。
彼女たちはDNAに突き動かされて行動しているわけですが、
その過酷で合理的なことに驚かされてしまうのです。
こんなに小さな命ではあるけれど、
その仕組みの不思議さは、大きな感動を呼び起こします。


あとは、人間の出没するところに巣を作らないことを学習してくれれば・・・。
無理ですね・・・。

「風の中のマリア」百田尚樹 講談社文庫
満足度★★★☆☆

かぐや姫の物語

2013年12月05日 | 映画(か行)
繰り返し続いていく“時”と、限りある“生”



* * * * * * * * * *

このアニメを見終わって、
さて、これは一体どういう物語だったのだろう、と思いました。
ストーリーは誰もが知るあの「竹取物語」そのもの。
竹から生まれたかぐや姫が美しく成長し、
多くの貴公子から求婚されるけれども、結婚を拒み、
やがて月の世界へ帰っていくという。
ただし、高畑監督が8年50億円を費やして描きたかった物語は
ただ古典のストーリーをなぞるというだけのはずがありません。
しかしまあ、はじめから答えはこのポスターに大きくでていたわけです。

「姫の犯した罪と罰」そう、そのことです。


さて、かぐや姫は一体何のタブーを犯してここへきて、
どうやってその罪を贖うことになるのか。
罪については作中でもさらりと触れられていました。
月の世界で、「地球に憧れたこと」への罰として、
地球に降ろされたと彼女は言っていませんでしたっけ?
しかし、お祖父さんお祖母さんと共に暮らした
山の春から秋にかけては、
かぐや姫にとって至福の時でした。
美しい自然。
大好きなお祖父さんお祖母さん。
近所の子供達と野山を駆け回り、
捨丸兄さんにちょっぴり憧れる。
ところが、都へ出てきてかぐや姫の生活は一転します。
広く豪華なお屋敷に、美しい着物。
けれど何も思い通りにならない窮屈な暮らし。
ある時“女のしるし”を見てからは、
何一つ心の底から楽しいと思えることもありません。
至福の時はあまりにも短く、残りは辛いことばかりだ。
時は流れる。
人の心を置き去りにして、どんどん時は流れてしまう。
あっという間に、あの楽しかった日々は過去のものとなり、
そして、たとえその故郷の山に帰ってみても、
懐かしい人々はいなくて、見知らぬ人が暮らしているばかり。
あの美しくきらめいていた日々には、どんなに帰りたくても帰れない。
そうした絶望を彼女が味わう事こそが
“罰”だったのではないでしょうか。




人は泣いたり笑ったりしながら短い一生を終える。
そう、おそらくは月の世界(=天上)から見れば、
人の世は常に移り変わっていく、なんともはかないうたかたにすぎないのでしょう。
そういう無常観が根底にあるのだと思います。

回れ回れ回れよ水ぐるま回れ、
回ってお日さん連れて来い。


わらべ唄にあるように、
何度も何度も一日は繰り返し、季節はめぐり、そして又繰り返してゆくけれど、
人は決してとどまっておらず移り変わりそして消えていく。
(けれどもそれはまた、新しい命が生まれてくるということでもあるのですが。)
その限りある人の世で、
精一杯に生きていく人々こそ美しいと、きっとかぐや姫は思ったのでしょう。
けれども、自分は異端者であり、決してその人々と同じ“生”を生きることはできない。
そのことがまた、彼女の孤独感、絶望感を深めているのです。



私は思うのです。
月の世界であのわらべ唄をうたっていたお姉さんは、
実はかぐや姫自身なのではないかと。
彼女は自分自身の未来を観ていたのです。
だって、それを傍で観ていたのでしょう、と? 
天上の世界のことですから、それくらいの不思議があっても・・・。
人の世とは違って永遠の時が変わらずにあるその世界、
何の不足があって、地球などにあこがれるのか、懐かしむのか。
月においては、そういう感情はタブーなのかも。
けれどもかぐやにとっては、
地上の美しい山野や季節の移り変わり、そして人々の暮らしを
繰り返し思い出し、慈しまずにはいられない。

なんだかしんみりと色々な考えが巡ってきます。
非常に奥深い作品だったと思います。

また本作は女性史的見地から考えてみても、面白いと思うのです。
例えば、“女”となって初めて“名前”が与えられること、など。
・・・でも今回はこれくらいにしておきましょう。


さてところで、本作の初めのほうで、
しきりに故郷の山を思い出し、懐かしがるかぐや姫が
私には「アルプスの少女ハイジ」と重なってみえました。
アルプスの山を離れたハイジは、山を懐かしがるあまりに心を病んでしまうのですよね。
そこには非常にしつけに厳しいロッテンマイヤー女史がいたわけですが、
こちらにもちゃんと相模という家庭教師兼お目付け役がいます。
このあたり、高畑監督はきっと、ハイジを意識していたと思います。

また、かぐや姫に求婚する貴公子たち、
これがそれぞれの声を務めた俳優さん達によく似ていました。
これは声を先にとって、その声に基づいた画を描くという
「プレスコ」の手法のなせる技。
そのため、2012年6月に他界された地井武男さんが翁の声で出演
という奇跡的な出来事も起こります。

そして、赤ちゃんの本当に赤ちゃんらしい動き、仕草が素晴らしく可愛らしい!!。
寝返りもやっとの赤ちゃんが
おすわりをして、ずり歩きをして、立ち上がって、歩き出す
・・・そういうイベント的な出来事が
次から次へとあっという間に起こる。
その瞬間をこんなにたくさん一度に見られるなんて、
なんて幸せ。
実際に赤ちゃんがこんなに早く成長してくれたら楽なんですけどね~。

「かぐや姫の物語」
2013年/日本/
監督:高畑勲
出演(声):朝倉あき、高良健吾、地井武男、宮本信子、高畑淳子、立川志の輔、川上隆也、伊集院光、宇崎竜童

日本度★★★★★
満足度★★★★★

ハングオーバー!!! 最後の反省会

2013年12月04日 | 映画(は行)
「最後」でよかった。



* * * * * * * * * *

ハングオーバーのシリーズ3作目。

バンコクの刑務所に収監されていたアジア系ギャングのボス、
ミスターチャウの脱獄シーンから始まります。
監獄のかべに穴をあけ、ポスターで隠してあった、というのは
完璧に「ショーシャンクの空に」のパクリ。
そんなところでニヤリとさせられて、
本題、アメリカのおなじみメンバーの話題へ・・・。



しかし、そのしょっぱなから、変な失望を味わうこととなりました。
いきなり、キリンの首がゴロリ。
ジョークやブラックユーモアとしても、
私はちょっと受け入れられなかった・・・。
このアランの変人ぶりはビョーキのなせる技として、
施設に入りリハビリを受けることになり、
フィル、ステュー、ダグ、アランが車で出発。
しかし、いきなりギャングに襲われダグが拉致されてしまいます。
ミスターチャウに金塊を盗まれ恨みを持つ彼らは、
アラン達にチャウと金塊を探しだして差し出すことを要求。
というのも、これまでの散々な馬鹿騒ぎのなかで、
アランたちとチャウがつながりを持っていると、思われてしまったためです。



チャウがアランたちを罠にはめ、
まんまと逆に金塊を奪った技にはちょっと感動しました。
ははあ・・・、実にうまいやり方。
お馬鹿のように見えてなかなかやるではありませんか。
(それにしては、屋敷内の事情について詳しく知りすぎ・・・という疑問は残りますが。)
でもその他については、単にお馬鹿の丸出しで、
なんだかなあ・・・と思い続けた100分。



思えば第一作、
泥酔から覚めた時の極めて不可解な状況がどうして生まれたのか、
という謎解きに魅力がありました。
でも本作はそれがない。
さすがにあれだけひどい目に会えば
二度と同じ過ちを犯すまいと誓った彼らの決意が見えるようで、
それはそれでいいのですけどね。
となれば、たよりはひたすらアランの変人・奇行ぶりを目玉にしていく他ありません。
しかしそれが、バカバカしいだけでつまらない。
見なければよかった。
これが正直なところ。
・・・。



ハングオーバー!!! 最後の反省会 ブルーレイ&DVD(2枚組)(初回限定生産) [Blu-ray]
ブラッドリー・クーパー,エド・ヘルムズ,ザック・ガリフィアナキス,ケン・チョン,ヘザー・グラハム
ワーナー・ホーム・ビデオ


「ハングオーバー!!! 最後の反省会」
2013年/アメリカ/100分
監督:トッド・フィリップス
出演:ブラッドリー・クーパー、エド・ヘルムズ、ザック・ガリフィアナキス、ジャティン・バーサ、ケン・チョン
おバカ度★★★★★
満足度★☆☆☆☆

海と大陸

2013年12月03日 | 映画(あ行)
くっきりと浮かび上がる明暗



* * * * * * * * * *

地中海に浮かぶ小さな島リノーサ島。
かつては漁業で栄えたのですが、今は寂れています。
それでも、夏は観光客で賑わいを見せている。
この島で暮らす20歳の青年フィリポ。
父を海で亡くしています。
伝統の漁業を続けようとする祖父。
漁業から手を引き、観光で稼いでいる叔父。
本土で新生活を始めたい母。
フィリポは三者それぞれの合間で、気持ちが定まりません。

陽光の降り注ぐ地中海の島で、
これは一人の青年の自立と家族愛の物語かと思ったのですが、
その前に、もっと大きな問題が立ちふさがります。



ある時、祖父と漁に出ていたフィリポは
アフリカからの難民を乗せたボートを発見します。
その中の、幼い息子を連れ妊娠している女性を匿うことになってしまいました。
「いまどきの規則はどうだか知らないが、溺れているものを見捨てることはできない。」
そういう祖父の持論のためです。
しかし、このことがフィリポの身の回りに色々な波紋を広げていきます。



イタリアの離島に流れ着くアフリカの難民。
日本で暮らす私達にはピンときませんが、
改めて地図を見ると、確かにアフリカの北部から船を漕ぎだすと、
この辺りが近いのですね。
着の身着のまま、ろくな食料もなく小さく頼りなげなボートで
命がけでアフリカを脱出してくる。
生まれ育った土地からそうまでして脱出しなければならない国の事情
ということを考えると恐ろしいくらいです。
そうして、命からがら上陸できたとしても、密入国の犯罪者扱い。
一方、この島を訪れる観光客たちのなんと豊かで平和なこと・・・。
ちょうど、観光客たちが船の上で総立ちで踊るシーンがあるのですが、
その姿と難民が助けを求めてボートの上で立ち上がり手を振る姿が重なります。

現象は同じでも天と地ほどに異なる事情。
双方を迎える「島」の両面性を考えずにいられません。


お母さんっ子で、見るからに“ぼっちゃん”だったフィリポですが、
この難民の問題に正面から立ち向かわざるをえない体験を経て、
大きく変わっていくのでした。
まぶしいくらいの太陽の光は、そこに落とす影をより濃くします。
その明暗をくっきり分けた映像も美しいのですが、
島に現れる明暗、つまり観光客と難民の明暗も見事に描き出されていたのでした。
この小さな美しい島で、凝縮された世界の矛盾を観たような気がします。

海と大陸 [DVD]
フィリッポ・プチッロ
角川書店



「海と大陸」
2011年/イタリア・フランス/93分
監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ
出演:フィリッポ・プチッロ、ドナテッラ・フィノッキアーロ、ミンモ・クティッキョ、ジョゼッペ・フィオレッロ

世界の矛盾を問う★★★★☆
青年の成長度★★★★☆
満足度★★★★☆

「グイン・サーガ 131」 五代ゆう 

2013年12月01日 | グイン・サーガ
グイン・サーガ再始動!!

パロの暗黒 (ハヤカワ文庫JA)
天狼プロダクション
早川書房


* * * * * * * * * *

聖女王リンダをめぐって暗躍する、殺戮王イシュトヴァーンが、
パロに恐るべき喧騒を巻き起こす。
イシュトヴァーンは、女王リンダへの求婚をいったんあきらめ、
フロリーを追ってヤガへと軍を進める。
しかしそれは見せかけで、魔道師による追跡の目をあざむいてパロへ戻り、
身分を隠してクリスタルへ侵入するのだった。
しかしヴァレリウスは対抗手段を講じていた。
世界最大最高のファンタジイ・ロマン、満を持してここに再開幕!


* * * * * * * * * *

グインの物語は、「グイン・サーガ・ワールド」で、
外伝がいろいろな人に書き継がれているのは知っていましたが、
もう読む気がしなくてそちらは読んでいませんでした。
だからグインからはしばらく遠ざかっていて何も知らなかったもので、
このたび書店の店頭でこの本を見つけてびっくり!
だって、だって、外伝ではなくて「131巻」ということで、
正編の続きなんですもんね。
本巻は、五代ゆうさんが書いていますが、
次巻は宵野ゆめさん。
天狼プロダクションが監修を行っている・・・と。


続きと聞けばうれしいのですが、
なんとも複雑な気持ちがすることも否めません。
本当に、期待通りならばいいけれど・・・。
いやいや、誰にだって栗本薫さんにはなれません。
はじめから高望みはやめようと割り切ったほうがいいのか・・・とか。
思いは千々に乱れるのですが、
これまで全巻読み通したファンとしては、やはりこれを見逃す手はありませんよね。
(実のところ、本作はすでに「グイン・サーガ・ワールド」に掲載済のものとのことです。)


今作の著者五代ゆうさんはあとがきでこのように言っています。

自分に課した「きまりごと」。
「栗本先生なら絶対にやらなかったことをあえてすること」
そして、「どうあろうと、あくまで『私の』グインを書こう」ということ。


確かに、こう思わなければとても書けないでしょうね。
どんな風に書いても、結局批判は当然あるでしょうし・・・。
だから、そういう意味ではまさしく、
栗本「グイン」ではなく、五代「グイン」として書き上がっているなあ・・・
というのが正直な感想です。


方向としては、全く私が期待したような「続き」にはなっていません。
戦乱で散々な目にあって、しかしようやく落ち着きを取り戻そうとしていたパロが、
またしてもとんでもない災厄に襲われる。
そして、なんと"あの方"が復活・・・!?
ホントに、栗本先生なら絶対にやらないことだと思います。
でもまあ、栗本薫氏自体が意外性の塊で、
そのストーリー展開に何度驚かされたか分からないくらいでもあるので、
100%ナシってわけでもないかもしれません。


ところで、
「ヤガへ旅だったはずのイシュトバーンが、リンダへの未練が捨てきれずパロに舞い戻ってくる」
という部分も、五代さんの創作かと思ったのですが、
この部分は確かに、130巻で書かれていたことでした。
そんなことも忘れているようなので、大きなことはいえない・・・。
第一考えてみたら、このブログで「グイン・サーガ」は
ぴょこぴょこコンビ でやってたはず。
それすら忘れてたくらいなので
文句をいえた義理ではありませんね・・・。


そして、まあ、面白くは読めましたよ・・・。
だけれども・・・。
ないものねだりはわかっているのですが、どうしても思わずにいられない。
ちょっと、登場人物に品格がありませぬ
ヴァレリウスはねずみ男だし、
イシュトはただのならず者。
リギアは破廉恥女で、
マリウスはまるで駄々っ子。
気持ちはわかります。
でもここまでデフォルメすると・・・、
そのわざとらしさは芸能人のものまね大会のよう・・・。
逆に、ホンモノへの思慕が積もってしまうではありませんか・・・。
しかし、これはあれですかね。
おなじみのアニメ主人公の声優が変わった時の違和感。
それが繰り返し見るうちに次第に馴染んで当たり前になっていく。
そんな感じで五代版に馴染んでいくしかないのでしょうか・・・。


ともあれ、私はここに脚を踏み込んでしまったので、
次の132巻も読んでみることにします。

「グイン・サーガ 131」五代ゆう ハヤカワ文庫
不満足度★★★★☆