暇だなぁ、なんて言っちゃいかんよ。
菜の花座の舞台に立ちたくて、京都から来るってんだから、その熱意と意欲と実行力と執念と、そう、あらゆる賛辞を送って歓迎しなくっちゃ。
本番前の1週間、こっちに泊まり込んで稽古に専念している。
よっぽど俺の書いた台本に惚れ込んでるんだな、って、違うって、菜の花座で芝居するのが楽しくって仕方ないからなのさ、もちろん、終演後の打ち上げも含めてね。
数年前まで単身赴任の米沢でプラザのシニア演劇学校に通ったのが病み付き、終了後即座に菜の花座入団、幾つもの舞台で味のある役どころを演じて来た。
特に音楽、楽器ならなんでもござれ、本職はサックスらしいんだが、『流れ旅 赤い夕陽の』では、戦地慰問芸人の一人として、アコーディオンを演奏してくれた。それも、初めて手にした楽器って!もはやその才能は玄人、天才の域だ。ちょっとほめ過ぎ。
今回『蒼き森の館』にも当初から是非出たいって申し出を受けたんで、彼が活躍できる役とシーンを用意した。大切な道化役で、とても重要なシーンなんだが、登場はそれ一つ、前後につながりがまったくないって設定で書いた。1週間で追いつかなくちゃならんからね。
館に住み着く霊を払う地元の法印様という突拍子もない役柄だ。持ち味を生かしてコミカルに描き上げてある。
まっ、こういう臨機応変、融通無碍の作劇てのは、得意なんでね、せいぜい羽目を外して自分もお客さんも楽しんでもらおうと思ってる。
残念なのは、現在肩を故障中とのことで、カーテンコールダンスには参加できないんだって。が、これって公演終わった後に、さぁて無事終わった思いっきり飲むぞぉ!、って、諸手を上げて万歳するんじゃないか?なんてツッコミ入ってたっ、俺が突っ込んだんだが。
まっ、こういう軽口がお似合いの明るい人柄、だから、その熱意とともに、団員すべてから愛されているんだがね。
今週の稽古は、法印様の登場シーンは特別枠、連日時間を掛けて絞られている。
さぁ、本番じゃ客席に笑いの渦を巻き起こすことができるかどうか?
美味い酒が飲めるかどうか?
胸を張って京都に帰れるかどうか?
稽古、稽古、稽古あるのみ!