えっ、ソンタクって忖度?
って勘違いして買ったわけじゃない。韓国に実在したホテルの名前だった。その主もソンタクさん。
おっ、これはって思わせる味のある装丁も気に入ったし、それ以上に、日韓併合以前の韓国の様子が書かれているようなので、興味津々、しかもミステリーだってよ。
読み始めて、うーん、なんか会話の文とか下手くそだぞ、こんな風に話しするか?やたら説明的だし。主人公は16歳の少年、これが冒険?謎解き?入り込みにくい設定だなぁ。
と、なげやり気分でたらたら読んで行ったら、なぁんだ、そうか、少年少女向けだった。なるほど、それなら仕方ない。
日本が無理やり属国化しよと企んだ乙巳(韓国語読みでウルサ)条約、その無効を国際社会に訴えようとオランダハーグでの会議に提出を試みた皇帝の密書、それを奪い合う独立派と親日派の陰の画策がテーマの本だった。
ミステリー仕立てで興味をかき立てるように書かれているが、この本の執筆の動機の主たるものは、当時の歴史背景を若者たちに伝えること、もちろん、韓国の視点で。
当時の漢城の街、現在のソウル、の様子も丁寧に詳しく描写されていて、登場人物も、主役他数人を除くと、ほぼ全員が実在の人物だった。当時の抵抗運動を主導した教会やその牧師さん、メディアの立場から反日運動を主導した新聞社等も実際に果たした役割に即して登場する。
親日派で韓国の植民地化に専心した李完用(イワニョン)、あれ、こいつ、『ミスター・サンシャイン』に出てた超級の悪役じゃないか?そうか、その筋じゃ名うての売国奴だったんだ、も出て来るし、反対に密書をオランダまで運んだ李ジュン(名前の文字難しすぎ!)烈士も活躍する。
韓国の独立に命を掛けて助っ人するのが、このホテルの支配人ソンタク女史で、生まれはアルザスのロシア出身?と言い、多くの人たちが日本の非道を阻止しようと懸命に働いた姿が全編にわたってちりばめられている。
これなら、韓国の植民地化直前の歴史をしっかり学ぶことができるな。言ってみれば司馬遼太郎の幕末ものと同じ役割か。おっと、あれは大人向けだったっけ。
あの時代について、日本じゃほとんど教えられない。せいぜい、日韓併合くらいだ。日清戦争が朝鮮の地で闘われたこととか、日露戦争が朝鮮と中国東北部の権益の奪い合いに端を発したなんてことも日本の若者は教えられていない。まして、東学党の戦いやその後続いた義兵たちのゲリラ戦なんて、韓ドラ見ない限り知る由もない。
そんな無知な一人として、この本の詳しい歴史解説はとても役に立った。もっともっと知りたいって関連本探すうになったもの。
それと、人命、地名、役所名等、すべて韓国語読みのフリガナがふってあるのもとても助かった。韓ドラ見てて悩みの一つは、名前が覚えられない!ってことだったんだ。この本のフリガナで少しは韓国語語感に馴染めた気がする。
ってことで、ミステリーとしてはも一つ物足りなかったが、韓国歴史案内本としては上々だったなぁ。
つい最近手にした「朝鮮半島の歴史」新城道彦著は近代編では、日本の立場から見た当時の動きがよくわかる。李完用も反対派を抑えて、日韓併合を粛々とリードした人物として好意的に描かれていた。
暗殺された伊藤博文も実行者の安重根も評価はまるで反対、それが歴史ってものの難しさなんだよな。
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