11日の「エキサイト」のニュースコーナーに「どこでもたばこが吸えなくなるアメリカ」というエントリーがありました。
僕は非喫煙者なので禁煙エリアがどうなっても、広がる分には何の影響もない立場です。アメリカはどうなのかなあと思って記事を読みました。アメリカはこのままいくとどうなるのかな、どこに行くのかな。人ごとながら考えてしまいました。
「あの国、極端なんだよね。。。。」
アメリカ史をちょっとでも勉強したことがあれば、20世紀初めの禁酒法とギャングの暗躍の話は誰でも一度は聞いたことがあると思います。しかし、飲酒法そのものの法的根拠はどこにあったのか知っている人はどれくらいいるのでしょう。
えらそうに言えません。僕も偶然知っただけですから。
その法律のおおもとは、州法でも連邦法でもありません。なんと、アメリカ合衆国憲法です。そのことを知ったときは非常に驚いたものでした。
以下の二つの修正条項は、その禁酒に関する法的根拠になっている条文です。
*****
修正第18条 〔1919年確定〕
第1節 本条の承認から1年を経たのちは、合衆国およびその管轄権に従属するすべての領土において、飲用の目的で酒精飲料を醸造、販売あるいは運搬し、またはその輸入あるいは輸出を行うことを禁止する。
第2節 連邦議会と各州とは、適当な法律の制定によって、本条を施行する権限を共に有する。
第3節 本条は、連邦議会がこれを各州に提議した日から7年以内に、本憲法の規定に従って各州の議会により、本憲法の修正として承認されない場合は、その効力を生じない。
修正第21条 〔1933年確定〕
第1節 合衆国憲法修正第18条は、ここにこれを廃止する。
第2節 合衆国の州、領土または属領の法律に違反して、それらの地域において引き渡しまたは使用するために、酒精飲料をその地域に輸送または移入することは、ここに禁止する。
第3節 本条は、連邦議会がこれを各州に提出した日から7年以内に、本憲法の規定に従って各州の憲法会議により本憲法の修正として承認されない場合は、その効力を生じない。
*****
憲法改正ですよ。け・ん・ぽ・う。
憲法は国の基本法、最高法規、社会を規定する最も重要な法律。社会の授業で勉強した記憶があります。
社会の英知の結集した言葉。。。
もちろん、日本でもアメリカでも憲法に書かれていることだけで、社会における事象すべてを規定できると考えるべきではない。当たり前のことですね。
憲法はその憲法を定めた人たちが大切だと考えることが書いてあるものだと思います。この考えはあっていると思います。
僕は文学部卒業生で、普通の地方公務員(学校の先生)です。法律・条例・条文の専門家とは言えません。普通に読むことしかできません。でも、書かれていることを、素直には読める方だと思います。読んでみます。
↓
第18条第1節は禁酒に関する憲法上の扱いを定め、連邦・各州政府に関連法を制定し、禁酒を実施する権限を認めていると思います。
…内容がすごいですね。飲むための酒を造るな、売るな、運ぶな、輸出入するなですから。
種類禁止の動きは、独立革命前のイギリス植民地時代にもみられたそうです。南北戦争後酒類を販売するサロンが雨後の竹の子のように増加したのにつれて、教会の支持を受けた禁酒運動が盛んになり、「憲法」で禁酒になったとある本に書いてありました。※
↓
第21条第1節は第18条は廃止することを定めています。でも第2節を読むと、憲法では禁止しないけど、それぞれの州、領土、属領の法律で、その地域に酒を持ち込むことの禁止できるように規定しています。(現在でもこの条文は生きています)
*****
国の成り立ちにより、憲法にも様々な顔があります。憲法を定めた人たちが、何が大切だと考えたかにより、条文が決まるものだと思いますし、改正も行われるのだと考えるべきです。現在に生きている、外国人である僕がいろいろ言うのはどうかと思うけど、やっぱりすごい条文ですよこれ。
アメリカ合衆国憲法のように世界最古の成文憲法のであっても、で、あるが故に、現在から考えると、不思議な条文がある。それを残していることで、その憲法を支えた社会、その社会で生きていた人々が何を考えていたかわかるような気がします。ちょっとカッコつけ過ぎたかな。
*****
エキサイトのニュースコーナーにもどりましょう。
ちょっと考えてみました。
第21条にある字句
酒精飲料をその地域に輸送または移入することは、ここに禁止する。
これの赤字部分を、「喫煙の目的でたばこ並びに喫煙具」に書き換えるだけで、禁煙法基本形ができあがりです。現在こんな形で禁煙エリアが広がっているのでしょう。
ある程度まで定着したら、それで終わるのかな。。。
*****
【喫煙者の悪夢】
アメリカ合衆国修正第3X条〔203X年確定〕
第1節 本条の承認から1年を経たのちは、合衆国およびその管轄権に従属するすべての領土において、喫煙の目的でたばこ並びに喫煙具を製造、販売あるいは運搬し、またはその輸入あるいは輸出を行うことを禁止する。
第2節 連邦議会と各州とは、適当な法律の制定によって、本条を施行する権限を共に有する。
第3節 本条は、連邦議会がこれを各州に提議した日から7年以内に、本憲法の規定に従って各州の議会により、本憲法の修正として承認されない場合は、その効力を生じない。
…絶対ないと言いきれないから、あの国はおっかないよ。
※アメリカ合衆国憲法 (株)中経出版
現在絶版です。前UNHCR緒方貞子さん、故M・マンスフィールド駐日大使がコメントを書いています。