新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

辻井伸行コンサート

2017年01月10日 | 音楽

今年もあっという間に10日間が過ぎました。国内外とも聞こえてくるニュースは心を削ぐようなものばかりです。ぱ~っと心を明るくしてくれるような出来事やニュースが待たれます。

その一つが妹と一緒に行くことになっていた「辻井伸行コンサート」ですが、肝心の妹は初釜が重なって行けなくなり、結局私と夫が楽しませて貰いました。

  

辻井氏は、2009年にヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優秀して華々しい世界デビューを果たし、たびたびテレビでも放映されたので記憶に新しいと思います。
人の心を打つのは、視覚に障害を持ちながらも全くそれを感じさせないピアニストであることでしょう。パンフレットにもその障害のことはひと言も触れてなくて、辻井氏にとっては先ず第一にピアニストという職業が普遍的なものである証拠だと思います。

バッハのイタリア協奏曲はそのメロディからピアノとチェンバロが重なって聞こえてくるような曲でやはり「バッハ」だと素人にもわかりました。協奏曲でもバックに交響楽団がないものがあることを初めて知りました。
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17番、ベートーベン《月光》、べートーベン《熱情》と馴染のある曲は、新春の明るさと折り目正しさを与えてくれた感じがしました。

会場の久留米シティプラザは半年前にオープンしたばかりで、4層の客席と左右両サイドのバルコニー席で1500席。バルコニー席はまるでオペラ座みたいな感じでとても珍しく思いました。

アンコールは、ショパン《別れの曲》、 辻井伸行《風の家》、 ショパン《革命のエチュード》。ショパンが大好きなようで、アンコールには個性が表れる気がします。

感動したのは辻井氏がマジョルカ島を訪れた時に作曲した《風の家》。肌で感じ、耳で聞き、海と緑の臭いをかぎ独自の世界の中で作曲されたものでしょう。
透明感があり美しい曲でした。その中のワンフレイズがNHKラジオ深夜便のメロディに似ていて思わず「あれっ…?」、毎晩耳にしているのでなかなか親しみやすく思いました。

地方都市で満席。天井に届きそうなバルコニー席の人はまるで雲上人・・・。チケットは「完売」表示で、これだけの集客力があるものはめったにないと思います。辻氏はクラシックの底辺を広めるのにも大きな影響力を発揮していると思いました。

辻氏がステージに現れるときは係員のエスコートがあります。演目が終わって係員と一緒にステージに登場した場合。係員がピアノの後ろに立ちほどなくして一人で戻る時はアンコールOK。なるほど分かりやすい! 拍手が一段と大きくなります。
それが4回目の時は辻氏が正面、左、右、正面と90度に腰を折って礼をすると、鳴り止まない拍手に今度はにっこり微笑み後ろを向くと、ピアノの蓋がパタンと閉じられました。小さな笑いが和やかに起こって、観客も納得して閉会になりました。

1曲を仕上げるのに、障害のない人に比べると何十倍もの時間と手間と努力がいるのでしょうが、それを誇張しないのはまさにプロ中のプロだと思いました。
『これまでにいくつものチャレンジを重ね、その度にハードルを切り開いてきた』辻井伸行さんに、さらに期待をしたいと思います。

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