新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

「ジャミールの新しい朝」

2008年06月25日 | 本・新聞小説

Photo 表紙の絵がほのぼのしている、こんなかわいい本「ジャミールの新しい朝」(くもん出版)をいただきました。「小学校中級から」となっていますが、決して子供向けだけの本ではありません。

子供の心のひだが誠実に、正直に表現してあり、読み進むうちにいつの間にか子供のころの純粋な気持に帰っている・・・。読むと心があたたかくなる本です。

帯には「君はひとりぼっちなんかじゃないよ。落ち込んだ時、悲しくなったとき、そっとこの本を開いてごらん。新しい一日が、ここからはじまるんだ。

舞台はトルコ。2か月の間に最愛の母を、続いて父を亡くした少年ジャミールは、今は一人ぼっち。ひとりで生きていくことを決心した彼は、だれの手も借りようとはせず、近所との交流も避けて、かたくなに心を閉ざします。そんなときにひょっこり出会った子犬。心を奪われそうになりながらも、必死に心を冷たくして子犬を追い払います。「そんな余裕はないんだ・・・」と。

そしてある朝、トルコの大地震が・・・。ジャミールは、崩壊した家の下敷きになり、暗闇の中で死の恐怖とたたかいながら、ひとり孤独に耐えます。そんなときに彼を見つけてくれたのが子犬でした。

ジャミールは犬に向かってささやきます。「はじめて会ったときから、ぼくは、おまえがすきだったよ。・・・・でも、それはこわいことなんだ。だって、ぼくが大すきな人は、みんな死んじゃうんだよ。さいしょはかあさん、それから、とうさん。ぼくはこわかったんだ。もし、ぼくがおおまえを大すきになったら、おまえにもなにかおこるんじゃないかと思って。そんなことになるのは、いやだった。わかるだろ?

がいくら追いはらってもはなれずにいてくれて、ほんとうによかった。その上、がれきのなかをはってきて、ぼくを見つけてくれたんだ。 」と、ジャミールは、一人ぼっちになって以来、ずっと胃の中にあった固いかたまりがとけていくのを感じていました。

子犬と村の人たちに助け出されて、瓦礫の村を目の当たりにしたジャミールは、自分の家を建てなおすには村の人の助けも必要だし、自分もみんなを助けてあげられるだろうと思います。村の人が彼に差し出していた手は、同情なんかでなく愛情であり、村の人たちとの心のつながりが支えになることにジャミールは気づいたのでした。

トルコに旅行をした折に、牛・羊の放牧や、くたびれた背広を着て日がな一日お茶を楽しむオジサンたちの習慣も見ました。畑仕事の手を休めて、観光バスに手を振ってくれた農家の人たちの笑顔。ジャミールの隣人たちのように、トルコは心の温かい人たちの国でした。

この本の訳者、加島葵氏は、北九州出身者です。多数の児童文学を翻訳出版されています。

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九大フィルと近藤嘉宏

2008年06月19日 | 音楽

Photo 若い人たちの努力とひたむきさにエールを送るのはもちろん、年々上達している九大フィルを聴くのが楽しみになっています。

いつも当日券1000円で入ります。なんと今回は、近藤嘉宏氏のピアノコンチェルトがあるのです。指揮はおなじみの堤俊作氏。

今年は九大フィル100周年を迎えるせいか、プログラムもメンデルスゾーン「真夏の夜の夢」、難曲といわれるブラームス「交響曲第4番」。近藤嘉宏氏のチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」です。

プロではなく、学生の、それも毎年メンバーが入れ替わるという厳しい状況の中で、全員が一丸となってこの日に臨んだのがわかる素晴らしい演奏でした。時折アマチュアということを忘れるくらいの演奏で、素人が聞いても確かに質的な向上を感じました。

それに近藤嘉宏氏のピアノコンチェルトは、視聴者には思いがけない嬉しいプレゼント。作曲された当時には「演奏不可能・・・」とまで酷評されたという曲。それを全部の鍵盤を使うかのようによく動く指と腕で、ピアノの魅力を余すところなく表現して、観客を完全に魅了していました。

こんな激しい曲を弾いたすぐ後なのに、アンコール曲にしては長いショパンの「英雄ポロネーズ」に、またまた観客は感激しました。

Konndou_2 ピアノ界の貴公子といわれる端正なスタイルとやさしい笑顔は、音楽ファンを必ず増やすでしょう。CDを買ったら、美しいスマイル付きのサインを貰いました。そうそう、秋には「近藤嘉宏が贈るオール・ショパン・プログラム」が演奏されるとか聞きました。

翌日、九大フィルのHPを見たら観客は1545名。そういえば、最初から最後まで2階席の観客も、背もたれに背を預けずに身を乗り出して聴いていました。そんな充実した演奏会でた。

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新刊 「霧のなかの赤いランプ」

2008年06月10日 | 本・新聞小説

0003_3 さる7日、八田昻(はったたかし)氏の「霧のなかの赤いランプ無法松・俊作の一生―の出版記念会が地元北九州で催されました。

八田氏は、「無法松の一生」で有名な郷土が誇る作家 ・岩下俊作の三男で、『文学に一生をかけた父の生涯はもとより、家族の歴史としても書き残しておかねば・・・』と評伝小説としてまとめあげられました。

出版記念会では、北橋市長や作家の佐木隆三氏などそうそうたる文化人から新進作家へ祝辞と温かいエールが送られました。八田氏とは幼少時代からの親友であったことから、夫も、俊作氏との懐かしい思い出を胸に出席しました。

この美しいタイトルは、父・俊作氏の詩「霧の中の赤いランプ」からとられていました。本文中にこの詩がでてきます。闇と霧の中に遠ざかっていく追憶のなかに、温かく輝くランプ。それは若くして亡くなった母の慈愛の光で、そのランプが俊作氏の生涯のバックボーンになったと書いてあります。ここに、父・俊作氏と筆者の心がぴったりと寄り添ったのを見た私は思わず胸が詰まりました。遊学のために家を離れてからは、父親との接点をなくしていた著者と父親との魂の遭遇だったのかもしれません。明治・大正・昭和の文壇の様子や各作家のエピソード、戦時中の作家活動、北九州の時代背景なども興味深いものです。

取り扱い書店は、福岡の丸善と紀伊国屋、北九州のクエスト小倉とクエスト黒崎です。

下記は西日本新聞(2008.6.1)「本と批評」より抜粋したものです。

『生涯を支えた生母への思慕』

 映画「無法松の一生」の原作といった方が、通りがいいだろう。小説「富島松五郎伝」。その作者、岩下俊作(1906-80)の生涯を評伝小説にまとめた。筆者は俊作の三男。「激動の時代に文学にかけた父の一生を、家族の歴史としても書き残しておきたかった」という。

 書き進むにつれ俊作の日記が北九州の実家の残されていた。その癖の強い片仮名交じりの文章を一カ月かけて丹念に読み、青・壮年期の父の心の動きを知ったことが執筆のきっかけとなった。

 いくつかの発見があった。「富島ー」がロスタンの戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」に着想を得ていたというのもその一つ。小倉工業学校(現小倉工高)在籍時の日記に、映画化された「シラノー」に接していたことが興奮気味に記されていた。’38年、八幡製鉄所の職工となっていた俊作は、盟友・火野葦平が「糞尿譚」で芥川賞を受賞したことに触発され、初の小説「富島ー」を執筆。「シラノ」と同じく主人公に悲恋の純愛を貫かせたこの作品は、直木賞候補作となった。

 評伝は祖父初次郎のことから書き起こす。漁師の家に生まれ、一旗揚げようと台湾、北海道へ渡るが、夢破れて小倉に戻り人力車の営業で財を成す。その二男秀吉(俊作)は幼くして母と死別。継母に育てられる。本をむさぼり読んだ少年期、「絶望的ナ苦悩」を抱えながら詩作に熱中する青年期。

 「書き進むにつれ、わからなかった俊作像がぼんやり現われてきた。祖父が身を固めろ迫ると『無抵抗ノ抵抗』と家出をしている。親思いの俊作にはそれが精いっぱいの反発だった」

 北九州の地で創作を競い合った葦平、劉寒吉ら同人誌「九州文学」の同世代の仲間たちとの活動史も熱くつづられる。

 晩年、俊作は詩「霧の中の赤いランプ」発表し若くして逝った生母を追慕した。評伝は俊作が時折見せた寂しい気配について触れ、生母への思慕が俊作の生涯のバックボーンだったと推測して結ぶ。血縁を超え、人間俊作への関心と共感が強く筆者をとらえたのだろう。その反動か「兄の感想は『おまえは冷たい』」。筆者は元NHK記者。68歳北九州市在住。    (編集委員 横尾和彦)  (北九州市文学協会・1500円)

読売新聞(2007.10.25)「時評」より

 岩下も、小説「富島松五郎伝」が「無法松」として有名になることで、神格化された作家の一人である。そのことが、逆に、岩下を苦しめることにもなった。八田が描くのは、そうした神格化に抗し、作家としての方途を模索して苦悩する父親の姿である。あるいは、作家活動を続けながらも、「会社員として一人前の仕事だけはしなければならない」とする生き方である。そして、そのような生き方の背後にある生活と、それに伴う悲喜こもごもの挿話である。

 家族の立場なのだから、父親に「香を焚いて」も、少しも不自然ではないのだが、連載を通じて印象に残るのは、脱神格化された岩下俊作の原像である。その原像が放つ人間臭さゆえに、これはやはり小説と呼ぶべきかもしれない。                         (松本常彦 九州大学大学院比較社会文化研究院教授)

読売新聞(2008.6.6)「時評」より

 『霧のなかの赤いランプ』は著者が父親の岩下俊作についてまとめたもの。有名な作家の評伝が小説と化すのは、そこに記された「家庭内の苦しみ」や「家族の歴史」とそれを掘り起こしていく作業を通して、読者が「家庭」や「家族」という自分の根っこと向き合わざるを得ないからである。                                                (松本常彦 九州大学大学院比較社会文化研究院教授)

●毎日新聞(2008.6.26)朝刊より

0003_10(記事をクリックすると、文字が大きくなります。)

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熊本・南小国町・小田温泉

2008年06月08日 | 国内旅行記

001081年末に肩を複雑骨折した母が、努力を重ね見事に復活。 元気になってまた一人暮らしを始め ました。

昨秋の京都旅行が最後になったのかな・・・と覚悟していただけに、また母と旅行ができるようになった幸せをしみじみ思っています。

今回選んだのは、熊本南小国町の小田温泉です。日経新聞で温泉大賞に輝いた黒川温泉はあまりに有名になりすぎたし、そこから2キロほど離れた静寂な森の宿「山しのぶ」の離れ部屋を予約しました。

Ota4063確かにここは穴場でした。新緑のトンネルをくぐった向こうに、静かにたたずんだ宿があります。1500坪の広い敷地内には数棟の離れ部屋があり、それぞれに専用の内風呂と露天風呂が付いていて24時間OK!主婦感覚では、まあなんと贅沢な…という感じ。それでも飽き足らずに敷地内の露天風呂や内風呂めぐりをして、最後は「囲炉裏談話室」で振る舞い酒を堪能しました。もちろん地酒。

右上の写真はじゃらんからの借り物ですが、でっかいロキングチェアーが印象的な図書室です。その向こうは田植えが終わったばかりの田んぼ。2階は天文館になっています。ウグイスの鳴き声、グミの木、アジサイなどよき子ども時代を思い出させるものでした。

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Photo_5 食事処での夕食も満足のいくものでした。おしながきを見ながら次々に運ばれてくる御馳走にわくわく!

地元の食材を生かして、手を抜かず丁寧に作られた一品一品。これだけを家で作るとしたら何日かかるのかしらと主婦はすぐに考えてしまいます。

部屋に帰ると、お夜食にと三人分のおにぎりが置いてありました。そうそう、その夜は報道スペシャル番組『中田英俊の真実』があるのでちょうどよかった!

設備の整った大きいホテルが増える一方で、こんな風に小さくてもこだわりを持った離れ形式の旅館も増えているような気がします。

088083翌日は「くじゅう花公園」へ。九重の雄大な自然の中に花のじゅうたんが広がっています。何度訪れてもその都度四季折々の花が咲いて違う顔を楽しませてくれます。

ちょうど幻の花「ブルーポピー」の展示があっていました。「ヒマラヤの青いケシ」は、その神秘的な美しさから「天上の妖精」と呼ばれているそうな。3000~5000mの高山植物ゆえにガラスケースの中で温度調節がされていました。

高速に乗らずに下道を行ったものだから、両側は新緑の香りぷんぷん!九州のおへそは、まだまだ豊かな自然と緑がいっぱいでした。

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アペリティフの日

2008年06月05日 | 食・レシピ

101今日はアペリティフの日。毎年6月の第一木曜日に世界各地で開催されている食の祭典です。

主催はフランス農水省、日仏学館、JALシーホークホテル。昨年に続き今年もシーホークのシアラが福岡会場になりました。

アペリティフとは、食事の前に、一口ディッシュとアルコール飲料やソフトドリンクを飲みながらゆったり過ごすひと時のことで、フランスでは欠かせないライフスタイルだそうです。

104_2会場では、市内のレストラン自慢の一口ディッシュやワイン、カクテルなどのドリンクが提供されます。

前売料金3000円でフードチケット10枚、ドリンクチケット4枚が渡され、好みのディッシュとチケットを交換してひと時の味を楽しみます。

おいしかったのは、鴨とフォアグラのテリーヌ、赤ピーマンとウニのカクテル。ワインにチーズもやはり相性はばっちり。本当は食前のお楽しみのはずなのに、10皿も食べればディナーの如し。おなかいっぱいになりました。

102今回は550人の参加。チケットは前売りで全部さばけたそうで当日券はなしとか。アペリティフの日も少しずつ定着しているのでしょうか。

う~ん、でも昨年に比べれば出店数も少し減った感じで、祭典らしきデコレーションもなくて少しさみしい感じ・・・。シラクさんからサルコジさんに代わった影響・・・?なんて考えてしまいました。

それに昨年は昼夜の2回に分けて催され椅子席でしたが、今回は夜のみで人数が多かったせいか立食でちょっと疲れました。

でも10種類のディッシュとワインやカクテルをこの料金で楽しめるなんてやっぱり「おいしい」催しです。

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