今年一番の寒波襲来という九州から、降雪の予報はない快晴の根室中標津(なかしべつ)へ避寒?という旅になりました。
急に息子から航空チケットを手配したと連絡がありました。私と夫はそれぞれマイレージクラブにログインしてe-チケットをゲットし、A4の紙をひらひらさせながら搭乗口へ。羽田での乗換を10分あまりの速歩でこなして一路根室へふ~っ(´゚Д゚`;)。 一日早く宿に着いている息子とは現地集合することになっていました。
根室中標津(なかしべつ)空港の風景は広々とした原野と雪のシャリ岳。およそ日本のイメージとはかけ離れています。人も少ない・・・。旅館の車が迎えに来てくれて30分の雪の原をひた走りました。
着いたところは、養老牛(ようろうし)温泉『湯宿だいいち』。人里離れた山合いの温泉宿で、本館と新館は渡り廊下でつながって横に長ーい配置になっています。養老牛には2件の宿しかなく、四季を通じてとれにくい宿だそうです。この日も満室状態で、運よく3名もとれたのが珍しいとのこと。
本館ロビーは炭火の温もりが優しい和風設えになっています。ここでウェルカムドリンクをいただきながら手続きをします。本館は木材をふんだんに使った和のテイスト。雪と木材はしっとりなじみます。
本館の特別客室はロフトがベッドルームになっていて、隠れ家のような趣向に子供みたいに胸躍ります。ほかに和室と堀ごたつ式の板張りのリビングと露天風呂もついている贅沢な客室です。
戸外は-5℃なのにスチーム暖房と床暖房と二重ガラスで全く寒さを感じません。九州の我が家よりもよほど暖かく、エアコンは使いませんでした。温泉熱の威力です。全ての廊下にはオーナー氏の趣味で、絵画、版画が飾ってあるのも、心豊かになり嬉しく思いました。
雪深い北海道、それも道東に、この厳寒にこれだけの集客力が…、素朴な疑問でした。オーストラリアからのグループ、タイからのグループ、香港からのグループなど国際色豊かでリピーターも多いようでした。
高そうなカメラを提げて野鳥を目当てに来るシニア夫婦も目立ちました。庭に天然記念物の「しまふくろう」がやって来ることで人気があり、フクロウが来ると各部屋に電話連絡があります。フクロウは長居はしないようで私は見ることはできませんでした。
以前はたびたび見かけられたのが、心無い客のカメラのフラッシュと、天敵のテンが出没するようになってからめっきり少なくなったとか。
食事も楽しみです。ヤマメ、道東の海の幸、酪農産物、山菜、牛肉、豚肉・・・と食材が豊富で、連泊しても毎日違うメニューになっています。特に朝食の『養老牛放牧牛乳』はコクがあって、もう絶品です!北海道のおいしさここに極まれり。人気があるので「お一人様1本」の注意書きがあるほどです。
部屋の露天風呂のほかに大浴場、新館浴場あります。女性の大浴場は、10種類の風呂がありすべてに入ると1時間かかります。サウナ、岩盤浴も欲張りました。
内風呂は天井から床まですべてがヒノキとヒバの白木造り。巨大な丸太をくりぬいた丸木風呂も話題性があります。夕食時間を調節して、いつもベストタイムで一人風呂を堪能しました。
マイナスの世界で入る雪の中の岩風呂。雪とお風呂は蜜月です!頬を撫でる冷気と42度ほどの湯温に頭も体もすっきりです。
旅館の清潔さが目立ちました。隅にはホコリもゴミも全くないのです。従業員もかなりたくさんいて雇用に貢献していると思いました。朝礼が終わったのでしょうか、一列に並んで厨房に入っていく料理人の数もたくさんでした。
お風呂の後はリラックスルームで、マッサージ器やリクライニングの椅子にもたれてゆっくり読書。これこそがずっと憧れていた「旅の筋書き」の一コマです。息子は2冊の本が読めたと喜んでいました。
福岡から羽田経由の根室まで飛行距離2200キロ。♪思えば遠ーくへ来たもんだ~♪。そしてエピソード満載の旅でした。
先ず、地下鉄で福岡空港に間もなく到着という時に夫が最重要な薬の忘れものに気がつき途中まで引き返しましたが、どう見ても搭乗時間に間に合わないという事でまた空港へという行きつ戻りつ。不安を抱えたまま旅中の薬はないことに…(´・ェ・`)
そして、福岡空港が工事中で様相が変っていて戸惑い、搭乗時間ぎりぎりにチェックインしたことで焦りっぱなしふ~っ(´゚Д゚`;)…
さらに、飛行機が滑走路の途中でずっとストップしたまま。他の飛行機が鳥を吸い込んでトラぶり滑走路での時間待ちでした。羽田での乗り換え時間は30分。指定の搭乗時間までは15分しかありません。チェックインをスルーにしているので待っててくれるかしらと不安で落ち着きません。
羽田で着陸して次のゲートに到着するまでの800m程を10分で歩きました。向うからグランドホステスの女性が走ってきて、「急がなくてもいいですよ」と言いながらも歩きながらチケットのチェック。まるで年寄りの運動会でした。私たちが乗り込んだ途端に一斉に乗客の「目」が。すぐに飛行機のドアが閉まる旨の放送がありましたふ~っ(´゚Д゚`;)ふ~っ。
帰りは根室中標津発、新千歳乗り換えで福岡へというコースでしたが、電光掲示板には1時間遅れという冷たい表示が…。
折からの寒波で地方の飛行場が閉鎖状態で根室に到着すべき飛行機がかなり遅れているというものでした。予定より遅れて新千歳に着いたら乗り継ぎがどう見てもうまくいくはずがありません。
いくつかの選択肢の中から、3人分のチケットを羽田経由に変更できたことは本当にラッキーでした。
出発まで2時間半も待ち時間ができたので、おいしいソフトクリームがあるという「ラ・レトリ」へ。近いけど路面が凍結しているので徒歩は危険。タクシーにお願いするのが申し訳ないくらいの距離でしたが、北海道のタクシーは優しくてホッとしました。
ソフトクリームは冬には作っていませんでした。でもヨーグルトやジャガイモ餅、チーズなどやはりここでしか食べられない味でした。
ここは国後(くなしり)に近く「北方領土」の看板があちこちに見られました。雪の中の看板はずしりと重たく心に響きました。
3年前の2月にやはり函館に近い銀婚湯にきたことがありますが、今回の道東の方が雪が少ないと思いました。今回は根室だけでしたが、接した方皆さんが温かくておっとりして誠実で、時間もゆったり回っていた気がします。もう来ることはないと思っていた雪の温泉にまた来ることが出来て感謝しています。