『KANO』は日本統治下の台湾をテーマにした作品です。あちこちから情報が入っていたので公開を楽しみにしていました。(「KANO」をクリックすると公式ページの動画が見られます。)
結成して1年しか経っていない嘉儀農林学校の野球部は、1929年日本から迎えた鬼監督のもとで急速に力をつけていき、その2年後ついに台湾代表として甲子園大会に出場するまでに成長していきます。まさに「男を泣かせる」感動の物語です。
実話を元にしており、鬼監督とはかつて松山商業の監督として鳴らした近藤兵太郎。長瀬正敏が演じます。
日本、台湾原住民、漢民族の混合チームは、はじけるエネルギーと実直なまでの闘志と子弟愛で実に涙と笑いの成長ぶりを見せてくれます。野球が好きで好きでたまらない・・・、この気持ちが万遍なく表されています。
初出場の甲子園大会では、なんと中京商業との決勝戦進出へ!この息をのむ点の取り合いが緻密に撮影されていて、まさに感動のシーンです。
蘇選手がアジア人として初めてフェンスに打球を当てて、係員があわててチョークで印をつけに走るシーンもありました。
呉投手の指は血みどろ、壮絶な戦いの結果は準優勝に終わります。ちなみに、投手の呉選手はこの後早大進学。長嶋茂雄選手に破られるまでの東京6大学通算本塁打記録所持者だったということがエンドロールで流れました。
また劇中でもう一人の呉選手は、後に台湾初の日本プロ野球選手に。巨人・阪神で主力選手として「人間機関車」と呼ばれて1995年に野球殿堂入りしたということです。
この快挙と時を同じくして台湾の農業の発展に力をそそいだ八田与一博士(大沢たかお)のダム建設の完成が重なり、二重の喜びと栄誉に国民は歓喜をもって迎えるところで終わります。嘉儀農林は、この後3度も甲子園出場を果たします。
コメントの投稿により後で調べたら、嘉義農林はこの1931年を契機として野球強豪校になり、5勝5敗の戦績を上げたということでした。1931夏、'33夏、'35春、夏、’36夏に出場しています)
台湾の近代史の中で重要な役割を果たした日本の陽の部分を、痛快なテンポと明るさで描いた映画です。映画評論家は★★★★をつけています。
♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪:;;;:♪
「マエストロ」 笑ったり泣いたり、まさに役者が本当に演奏していると思える感動のオーケストラの物語です。(「マエストロ」をクリックすると公式HPへ飛びます)
若きヴァイオリニスト香坂(松坂桃李)の元に届いたのは解散した名門オーケストラ再結成の知らせ。集まってきたのは他のオケからも受け入れられなかった「負け組」の団員達。プラス、新人のアマチュアフルート奏者のあまね(miwa)。
自信を無くした団員たちは音合わせもそろわず、気になるのは出演料のことばかり。そこに現れた作業着の素性不明の指揮者天道(西田敏行)。
指揮棒代わりにトンカチを振り回し、自分勝手に進めるやり方に団員たちの反発が・・・。
しかし天道は隠れている団員の個々の能力を引き出し、彼が導く音の深さに団員は次第に引き込まれていきます。しかし香坂だけは天道と父の隠された過去を知り反発を強めていきます。
かなりの紆余曲折の後、2日間の復活コンサートが行われることになりました。初日は満席のスタンディングオベイションの内に大成功に終わります。が、2日目の会場は空っぽ・・・。そこには天道が仕組んだ本当の秘密が隠されていました。
あとわずかな命しか残されていない妻に贈るレクイエムのために貸切にして、妻も求めていた最高の音を出させるためでした。
その時に、香坂は母が残した言葉「世界で一番美しいものは音楽」と、父の楽譜に残された「松籟」という言葉に突き動かされて、ずっと求め続けた音、弓の元から先まで全部ひと弓で使い切った天上に吸い込まれるような音を紡ぎ出し、本当の音を見つけました。
指揮棒を振る天道と目を合わせた時に、それまでの不安や迷いが消えてすべてを理解した香坂がいました。
この時の演目が「運命」「未完成」。キャストの動きと音が全く同化し、本物のオケと思ってしまうくらいに息を詰め身を乗り出したほどの感動の演奏でした。今でもあの演奏は実際にキャストの人たちが奏でたものという思いから逃れられません。
天道の指揮ぶりが見事です。手の動きと表情、音の導き方、会話のテンポの良さ・・・には、指揮指導があったにせよ抜群の音感がないととてもできない役です。
指揮指導は佐渡裕氏、エンディングテーマは辻井伸行氏。
クライマックスの「運命」「未完成」は佐渡氏の指揮によるベルリン交響楽団の演奏です。生の演奏にはない迫力が見られるのも撮影のカメラアングルのうまさでしょう。