萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

山岳点景:夏鏡

2016-07-14 22:50:00 | 写真:山岳点景
青の世界



山岳点景:夏鏡

青×蒼、水が空を映すのか、空が水を映すのか?

撮影地:八島湿原@長野県


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第85話 暮春 act.3-side story「陽はまた昇る」

2016-07-14 22:30:05 | 陽はまた昇るside story
You which beyond that heaven which was most high 楽園を超えた君 
英二24歳3月下旬



第85話 暮春 act.3-side story「陽はまた昇る」

忘れられる、この一瞬に。

コンっ、

慎重の一打、ハーケンが謳う。
蒼い薄氷に槌音は呑まれて水音とどろく、落ちる飛沫が凍る。
凍てついた三月の谷間、ハーケン鳴らせザイル手繰り、息が白い。

「はあっ、」

呼吸も凍てつく残雪の山、これも東京三月のリアル。
こんなこと二年前の自分は知らなかった、けれど今は懐かしく英二は微笑んだ。

「ただいま奥多摩、」

微笑んで凍れる岩を攀じ登る、グローブの掌を冷気が透かす。
もう全面凍結はない三月の滝、それでも飛沫に凍る岩場は滑りやすく脆い。

「みやたーっ、1時方向ユルんでるから撃ちすぎるなっ、砕けるぞ!」

指示のテノール透って氷壁を響く。
一挙一歩に力を加減し登攀する、その頭上に波濤の銀色まばゆい。

そうだ、こんな詩があった。

-Once again
Do I behold these steep and lofty cliffs, 
That on a wild secluded scene impress  
Thoughts of more deep seclusion; and connect
The landscape with the quiet of the sky. 

いま再び
峻厳はるかな懸崖を仰ぎ、
太古のまま隠されたシーンが心を刻む
深まる孤高にむきあい、そして通じるのは
天空の沈思はるかな視界。

幼いころ読んで聞かされた異国の詩、青紫の瞳、やさしい声。
そんな記憶たち今を映る、あの詩を聞いたのは現実の予兆だったろか?

「…解ってそうだもんな?」

ひとりごと笑って岩を掴む。
ふれる氷塊に掌が覚める、冷厳の感覚が左腕を奔る。
痛んだはずの肩すら目覚めて痛みは消えて、そうして滝の天辺に登りあがった。

「つっ…」

ずきり、左肩にぶく疼いて肋骨のヒビ軋む。
完治していない雪崩の傷、その痛みすら誇らしく笑った。

「は…保ったな、」

一週間前の受傷は治りかけ、それでも滝ひとつ完登した。
これだけの体力と技術が今はある、積んだ自信の眼下すぐ青いヘルメットが来た。

「よっ、」

軽やかなテノール青い肩を現わす。
ブルーあざやかな冬の隊服に雪白の顎のぞいて、底抜けに明るい眼が笑った。

「おまたせ宮田、傷はどうかね?」

笑って隣に来てくれる。
並び立つ滝の上、後続を眺めながら微笑んだ。

「ちょっと痛むけど大丈夫です、国村さんは息切れしませんね?」

あいかわらずだ、この男は?
感心と笑いかけた隣、山っ子は朗らかに笑った。

「コレくらいじゃ息切れしてらんないよ、おまえは一週間のブランクちっとありそうだね?」
「はい、すこしは、」

認めて肯いた視界、すっと断崖に惹きこまれる。
登りだした青い一点、そのスピードに声がでた。

「速い、」

大柄、けれど敏捷リズミカルに登ってくる。
すぐ辿りついてしまうだろう、その登攀技術に隣が笑った。

「アレが佐伯啓次郎だよ、さすが芦峅寺だね?」

テノールが笑う、でも笑えない。

―あれが佐伯か、

速い、たぶん今日の自分よりずっと速い。

「佐伯さん速いですね、俺より30秒は縮めてきます、」

微笑んで見つめて、けれど鼓動の底ゆすられる。
あんな男とザイルを組む、それは自分に何もたらす?

「かもね、だから後藤さんオマエと組ませるんじゃない?」

ほら見透かしてくれる、こんな上司かつザイルパートナーに微笑んだ。

「俺に慢心するなって戒めですか?」
「たゆまぬ努力は大事だろ?」

テノール笑って懸崖を見る。
登ってくる青いヘルメット迫る、その肩が妬けるほど広い。

「ほら、ソンナ嫉妬まるだしの眼で見てんじゃないよ?」

とん、軽やかに腕を敲いてくれる。
ほっと息つけて英二は少し笑った。

「ごめん、俺そんなにすごい貌してました?」
「キレイな笑顔のクセ眼だけ笑ってなかったよ、おっかないねえ?」

からり底抜けに明るい眼が笑う。
もう青い広い肩は腕が見える、近づいてくる山男に上司は笑った。

「あとで紹介するからね、ちゃんと貌もどしときな?」

ぽん、

背中ノックして笑ってくれる。
残雪さくり踏んで歩きだす、その背こそ広やかで遠い。

―ほんとに辞めるのか、光一が?

あの背中が現場から消える。
それは明日から現実で、けれどまだ頷けない。
それでも遠く見える。

『山の医者としてオマエのサポートしてやるよ、だから最高の山ヤの警察官になりな?』

長野から戻る車中、あのとき笑った瞳は明るかった。
そのままに今も背中は広く明るくて、もうあの男は未練かけらも無い。


(to be continued)

【引用詩文:John Donne「HOLY SONNETS:DIVINE MEDITATIONS」/William Wordsworth「Lines Compose a Few Miles above Tintern Abbey」】

残雪を登る英二に↓
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日常雑談:都心地下から

2016-07-14 18:34:50 | 雑談
移動中のメトロ車内、いろんな事に遭う。

たとえば今日の午後、
隣の大学生は船を漕ぎ、大波カナリ揺られて難破気味。

あー疲れているんだろな、私大は前期試験って夏休み前だもんな?

と生暖かく見守りながらもデモごめん、
整髪料×汗なキミの頭がジャケット的に大ピンチだ、

だからゴメン、
申し訳ないけど頭傾いてくるたび座り直しちゃうし、
でもクリーニング代を請求されちゃうよりキミも楽だろう?

一睡の安眠→プライス一万円

なんてドッカフウゾクみたいだし、
ソンナ不本意お互い嫌だよね?

なんてカンジの午後@東京メトロ、
たまーに居眠り頭アタックかわす座席の端っこ、
今度は髪の毛アタックが乗って来た。

対面式座席の端=扉際に立つ人がよりかかる、

ってよくあるんだけど※髪長い人は要注意、

あなたの髪ぶつかってますよ、座ってるひとに?

で本日は暑い都心、
彼女は一束ねたらした腰にとどくロングヘアー(黒髪)、
たぶんショットバーの照明なんか艶々さぞ映えるだろう、

でも今は・その毛先こっちはたきそうで夏不快指数UPは困る、
どうせなら髪アップうなじ涼しげだったらイイ、安全かつナニヨリきれいだ。

なんてメトロ車内の移動中その結末は、
某駅で大学生→はね起き飛び降り無事降車、
その空いた席に髪長い女の子が座り、
それから間もなく自分が降りる駅に着いた。

ソンナこんなで仮眠できなかった午後の今日、
睡眠やや足りない帰宅の列車、あたりまえに帰宅ラッシュで混雑立ちっぱなし、

あーこれなんか気をまぎらわさないと?
って思うんだけど文庫本なぜかカバンに入っていない、
あー家の机に置いてきたんだな?

で、こんな雑談を書いていたら今さっき座れました、笑

今回は座席センター付近なんだけど、
体デカイひと×態度デカイひと、に挟まれて率直にせまい。笑

太りぎみな方ちょっと気づかいを・または乗車料金1.5倍でいかがでしょう?
ソレカラおっさん、腕組み足ぐみ邪魔ですコンナトコで威張るやつほど器ちっさいですよ?

なんてアレコレ帰宅の車窓、今ありえんほどのゲリラ豪雨です。

第155回 1年以上前に書いたブログブログトーナメント
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