秋、熱風の行方
第67話 陽照act.3-side story「陽はまた昇る」
過去から離れるなんざ、無理だね。
そうテノールが告げたことは現実通りだろう、けれど苦しい。
過去は現実に起きたこと、それを無かった事に出来ないのは当然かもしれない。
だからこそ逃げられなくて傷みごと呑みこんだ背中を、ぽんと軽くひとつ叩かれた。
「英二、おまえってイイ背中だね。だけど、周太もイイ背中になったって気づいてる?」
言われた言葉に瞳ひとつ瞬いて英二はザイルパートナーを見た。
同じ高さの透明な瞳は底抜けに明るいまま、穏やかに笑ってくれた。
「この一ヶ月、俺は周太の顔を毎日見てたよ。一緒に飯食って夜はサシで喋ってきたけどね、周太カッコよくなったよ?
祖父さんの本を貰った時も、オヤジさんの本を借りて来た夜も落着いてた、たった一ヶ月だけど周太はデカくなってるね、」
この一ヶ月、いちばん近くで周太と向き合ってきたのは自分じゃなく光一。
それが現実だと解っている、だから灼かれる焦燥に英二は微笑んだ。
「毎晩、いつも話してたんだ?」
「話したかったからね、」
短く答えて底抜けに明るい目が笑ってくれる。
ただ正直に行動する率直は眩しくて、羨ましい本音が声になった。
「ごめん、自分勝手だけど俺、すごい嫉妬してる。この一ヶ月って本当は焦ってたから、」
八月、光一と周太が第七機動隊に異動した日から一ヶ月。
自分が居ない時間に光一と周太は一緒に過ごした、その時間にパートナーは笑ってくれた。
「ま、それもイイ経験じゃない?」
さらっと言ってくれる瞳は悪戯っ子に笑いながら大らかに優しい。
その明るさに嫉妬すら可笑しくなって英二は笑った。
「俺って元から嫉妬深いのに、今回の嫉妬も良い経験なんだ?」
「ほんとに独り仲間はずれって気分はお初だろ、そういうの少しは経験しないと周太コト、本当のトコで解んないんじゃない?」
テノールが微笑んだ言葉に、鼓動ひとつ心を敲く。
とくん、ひとつ撃たれる想いに透明な声は続けてくれた。
「周太はね、仲間はずれって気分をずっと抱えてるよ?俺と初めて会ったガキの時もさ、自分は普通と違うって悩んでた。
だからオヤジさんや祖父さんのコト知りたいんだよ、自分に繋がる人を知って大切にしてさ、自分が何者なのか自信を持ちたいワケ。
で、知るほど周太はカッコよくなってきたよ、そういう周太なら祖父さん達のコト全部も受けとめられる男だって思う、過去もナンでもね、」
話してくれるテノールは明るく落着いて、一ヶ月の時間そのまま信頼に篤い。
光一と周大、ふたり向き合ってきた時間は自分の知らない温度がある。
そう解る分だけ反論も出来ない溜息に英二は微笑んだ。
「光一も一ヶ月で変わったな、」
「ま、ソレなりにね、」
飄々と笑ってくれる瞳は明るいまま、けれど深い。
その雰囲気は懐かしい人と少し似て、思い出すまま英二は口を開いた。
「夏富士で後藤さんにも同じこと言われたんだよな、俺…周太を一人の男として認めろって、」
認めて信じろ。
そう言ってくれた後藤の声は深く強かった。
あのとき最高峰に祈った想いに英二は微笑んだ。
「心配過剰だな、俺は。いつも心配する口実を探してる、周太に必要とされたくて、」
あのひとに必要とされたい、そして愛されたい。
そんな願いが援助の手を出したがる、愛される理由探しをしてしまう。
この身勝手が寂しく笑った隣、光一も笑ってくれた。
「必要とされたいっての解るよ、」
必要とされたい、
そう言った雪白の貌は明るく笑ってくれる。
澄んだ瞳も底抜けに明るくて温かい、その温もりこそ経験に生まれている。
それが解かるから嫉妬深いはずの自分が光一は憎めない、そんな想いにテノールの声が笑った。
「おまえさ、鉄塔やコンクリの壁は味気ないって貌してたね?」
「うん、光一もしてたな、」
同じ目線で笑い返した隣、無垢の瞳が愉しげに笑ってくれる。
その眼差し明るいまま空を見上げてアンザイレンパートナーは笑った。
「山ヤだったら当然だね、だから本チャン訓練を近々入れるよ?だから晩飯は会議でヨロシクね、」
からり笑ってくれる言葉には信頼と責務が温かい。
そんな上司に頷いて見上げた先、鉄塔に正午の光きらめいて太陽は雲間にも眩しい。
(to be continued)
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第67話 陽照act.3-side story「陽はまた昇る」
過去から離れるなんざ、無理だね。
そうテノールが告げたことは現実通りだろう、けれど苦しい。
過去は現実に起きたこと、それを無かった事に出来ないのは当然かもしれない。
だからこそ逃げられなくて傷みごと呑みこんだ背中を、ぽんと軽くひとつ叩かれた。
「英二、おまえってイイ背中だね。だけど、周太もイイ背中になったって気づいてる?」
言われた言葉に瞳ひとつ瞬いて英二はザイルパートナーを見た。
同じ高さの透明な瞳は底抜けに明るいまま、穏やかに笑ってくれた。
「この一ヶ月、俺は周太の顔を毎日見てたよ。一緒に飯食って夜はサシで喋ってきたけどね、周太カッコよくなったよ?
祖父さんの本を貰った時も、オヤジさんの本を借りて来た夜も落着いてた、たった一ヶ月だけど周太はデカくなってるね、」
この一ヶ月、いちばん近くで周太と向き合ってきたのは自分じゃなく光一。
それが現実だと解っている、だから灼かれる焦燥に英二は微笑んだ。
「毎晩、いつも話してたんだ?」
「話したかったからね、」
短く答えて底抜けに明るい目が笑ってくれる。
ただ正直に行動する率直は眩しくて、羨ましい本音が声になった。
「ごめん、自分勝手だけど俺、すごい嫉妬してる。この一ヶ月って本当は焦ってたから、」
八月、光一と周太が第七機動隊に異動した日から一ヶ月。
自分が居ない時間に光一と周太は一緒に過ごした、その時間にパートナーは笑ってくれた。
「ま、それもイイ経験じゃない?」
さらっと言ってくれる瞳は悪戯っ子に笑いながら大らかに優しい。
その明るさに嫉妬すら可笑しくなって英二は笑った。
「俺って元から嫉妬深いのに、今回の嫉妬も良い経験なんだ?」
「ほんとに独り仲間はずれって気分はお初だろ、そういうの少しは経験しないと周太コト、本当のトコで解んないんじゃない?」
テノールが微笑んだ言葉に、鼓動ひとつ心を敲く。
とくん、ひとつ撃たれる想いに透明な声は続けてくれた。
「周太はね、仲間はずれって気分をずっと抱えてるよ?俺と初めて会ったガキの時もさ、自分は普通と違うって悩んでた。
だからオヤジさんや祖父さんのコト知りたいんだよ、自分に繋がる人を知って大切にしてさ、自分が何者なのか自信を持ちたいワケ。
で、知るほど周太はカッコよくなってきたよ、そういう周太なら祖父さん達のコト全部も受けとめられる男だって思う、過去もナンでもね、」
話してくれるテノールは明るく落着いて、一ヶ月の時間そのまま信頼に篤い。
光一と周大、ふたり向き合ってきた時間は自分の知らない温度がある。
そう解る分だけ反論も出来ない溜息に英二は微笑んだ。
「光一も一ヶ月で変わったな、」
「ま、ソレなりにね、」
飄々と笑ってくれる瞳は明るいまま、けれど深い。
その雰囲気は懐かしい人と少し似て、思い出すまま英二は口を開いた。
「夏富士で後藤さんにも同じこと言われたんだよな、俺…周太を一人の男として認めろって、」
認めて信じろ。
そう言ってくれた後藤の声は深く強かった。
あのとき最高峰に祈った想いに英二は微笑んだ。
「心配過剰だな、俺は。いつも心配する口実を探してる、周太に必要とされたくて、」
あのひとに必要とされたい、そして愛されたい。
そんな願いが援助の手を出したがる、愛される理由探しをしてしまう。
この身勝手が寂しく笑った隣、光一も笑ってくれた。
「必要とされたいっての解るよ、」
必要とされたい、
そう言った雪白の貌は明るく笑ってくれる。
澄んだ瞳も底抜けに明るくて温かい、その温もりこそ経験に生まれている。
それが解かるから嫉妬深いはずの自分が光一は憎めない、そんな想いにテノールの声が笑った。
「おまえさ、鉄塔やコンクリの壁は味気ないって貌してたね?」
「うん、光一もしてたな、」
同じ目線で笑い返した隣、無垢の瞳が愉しげに笑ってくれる。
その眼差し明るいまま空を見上げてアンザイレンパートナーは笑った。
「山ヤだったら当然だね、だから本チャン訓練を近々入れるよ?だから晩飯は会議でヨロシクね、」
からり笑ってくれる言葉には信頼と責務が温かい。
そんな上司に頷いて見上げた先、鉄塔に正午の光きらめいて太陽は雲間にも眩しい。
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