※ラスト1/10念の為R18(露骨な表現はありません)
受けとめて佇んで、守る
祈諾、陽溜―side story「陽はまた昇る」
時計が23:55になって、英二は発信履歴から通話にした。
コール1つで繋がって、微笑んだ。
「いま起きたとこだろ」
「…ん。仮眠とってた」
今夜の周太は当番勤務だった。
少し寝起きの声が懐かしい。たぶん黒目がちの瞳はまだ、焦点が定まりきっていない。
警察学校での警邏当番が思いだされる。
周太と宿直室で進路の話をした、その通りに英二は田舎の駐在所へと配属になった。
英二の勤務する駐在所では、常駐の岩崎がいるため、当番勤務は実質日勤になる。
けれど奥多摩の山に抱かれる青梅署では、遭難者の捜索が夜間にまで及ぶことはある。
この時間が周太の休憩時間で良かった、そして今夜は捜索も無くて良かった。
そんなことを思いながら時計を見て、英二は静かにささやいた。
「あと4分間は眠っていいから、おやすみ」
「…いや。起きていたい」
寝がえりをうつ気配が、電話越しに感じられる。
眠そうな吐息が、なんだか初々しい艶があって心配になった。
「周太、今、ひとり?」
「…ん、そうだけど」
良かったと英二はほっとした。
たぶん今、周太は無防備な顔をしている。そんな姿を他の誰かになんか、見られたくなかった。
こんなふうに、いつも独り占めしたい。
時計は23:58、少しでも眠らせてあげたくて、そっと英二は気配を消した。
「…みやた、」
「 うん、…どうした?」
「でんわ、うれしいから…」
微笑む気配が、嬉しい。こんなふうに、素直な言葉が幸せだ。
そして、見つめていた時計が0:00になった。
きれいに英二は微笑んだ。
「おはよう周太、誕生日おめでとう」
「ん、おはよう…そして、ありがとう」
すこしはっきりした気配が伝わった。たぶん周太は今、微笑んでくれている。
ささやかな事だけれど、英二には嬉しい。
「あと9時間したら、新宿へ迎えに行く」
「ん、迎えに来て」
「公園を少し歩こう。それから買物をして、川崎の家へ行こう」
「…ん。ありがとう」
今日は周太の母親と、久しぶりに英二は会う。
前に会ったのは一度だけ、警察学校時代の外泊日に遊びに行った時。
あの時は、こんなふうになれるなんて、思っていなかった。
―その隣を得難いと思うなら、そこで一瞬を大切に重ねて生きなさい
大切な一瞬を積み重ねて行ったなら、後悔しない人生になるはずだから
そんなふうに彼女は言って、自分達を受けとめてくれた。
自分の大切な隣と、よく似た黒目がちの瞳が懐かしい。
きっと今日、彼女とは秘密を分け持つ事になる。
そうしてたぶん確認をする、彼女と自分はきっと同志。彼女と自分はたぶん、同じ目的に生きている。
そっと英二は微笑んだ。
「大好きだよ周太、一番大切だよ。だからずっと隣にいさせて」
「ん。…嬉しい。ずっと隣にいて、もう手放さないで」
少しまだ寝惚けたような声が、かわいい。
こんなふうに素直にお願いされて、嬉しくないわけがない。
英二は笑った。
「絶対に離さない、だからずっと俺だけの隣でいて」
「…ん、いる」
それから周太が眠るまで電話を繋いで、穏やかな寝息を聴いてから、英二も眠った。
目覚めるとカーテンがほのかに明るい。
時計はまだ6時前だった。それでも英二は起きて、カーテンを開けた。
奥多摩の稜線が、暁の光に鮮やかに見える。
空の彩色が刻々と変わる、夜明けの時が始まっていた。
明けの明星がかがやく、美しい山の朝。
あの隣はきっと今頃、この空を思いだしているのだろう。
そっと静かに窓を開ける。さわやかな朝の風が、穏やかに部屋へ流れ込んだ。
ガラスの膜が消えて、視界の色彩が現実味をもって美しい。
英二は、掌に握ったままの携帯を、稜線の空へと向けて、シャッターを切った。
画面を確認して保存する。
それからメール添付して、送信ボタンを押した。
たぶんきっと、あの隣は市街地の真中で、交番の席から朝を眺めている。
そうしてきっと、一緒に見た奥多摩の朝を、懐かしく思っているだろう。
今日は11月3日、周太の生まれた日。
せめて、写真と想いだけでも、望む朝を贈ってやりたかった。
ふっと着信ランプが灯る。
たぶんきっと、あの隣が声を聴かせてくれる。たぶんすこし怒って、恥ずかしがって掛けてくる。
頬染めた顔を想いながら、英二はそっと携帯を開いた。
いつもより早めに食堂へ行って、軽めの丼飯でさっと朝食を済ませた。
新宿へ9時の約束だけれど、すこしでも早く、少しでも近くに行きたい。
自室へ戻って、携帯と財布と定期入れをテーラードジャケットのポケットに入れる。
少しだけ考えて、クロゼットを開いて適当に鞄に入れた。
それから、デスクのファイルから用紙を1枚取出した。
紙面にペンを走らせてチェックする。
それを持って立ち上がると、鞄と薄手のマフラーを携えて、廊下へ出た。
まだ朝7時すぎだったけれど、担当窓口は開いていた。
「明日の朝7時半には戻りだね、」
「はい、日勤があるので」
「慌ただしいな。けれど、楽しんでおいで」
そう言って、快く判を押してくれた。
岩崎には今日、川崎へ行く事を告げてある。
国村はたぶん、勘づいているから察してくれるだろう。
所属署によっては、卒配期間の外泊は厳しいとも聞く。
けれど、ここは例外のようだった。藤岡も何度か、外泊申請を出している。
そのかわり、遭難事故の発生時には、駆けつけられる場所にいる限り、非番でも召集を受ける。
山岳救助隊として当然の勤め、そして山ヤとして山ヤ仲間を助ける事は、当然の事だった。
それでもこの紅葉シーズンは、遭難とも言えないようなケースも多い。
道迷い、入山時間の遅延、そういう初歩的ミスが原因になっている。
今日明日と誰も、そういう事が無いといい。そう思いながら、英二は電車に乗り込んだ。
新宿に8時過ぎに着いて、南口に近いコーヒーショップで座った。
紙コップへと淹れてもらったコーヒーに口をつけながら、携帯を眺めてみる。
今までに山で写した、何枚かの写真。
どれもきれいだなと思う。けれど田中の写真にはまだ及ばない。
自分の背中で生涯を終えた、美しい写真を遺していった山ヤ。
彼の視点を少しでも、自分に備えていけたらいい。
そんなことを考えて、ふと英二は思いつくと立ち上がった。
歩きながらコーヒーを飲みきって、近くのコンビニへと入る。
デジカメプリンターの前に立ち、携帯のメモリーをセットした。
一枚を選んで印刷をする。それから封筒を買って、写真を納めて鞄にしまった。
待ち合わせの改札へ行く途中、英二は懐かしい姿を見つけた。
今日もきちんと、英二の贈った服を着てくれている。
ライトグレーのショールカラ―コートに、黒藍のジーンズの脚がきれいだった。
きれいに笑って、周太の前に英二は立った。
「おはよう、」
「…あ、おはよ」
すこし驚いた周太の瞳が、かわいかった。
あわく赤い首筋が、白いアーガイルニットのVネックに、すこし寒そうに見える。
英二はマフラーを外すと、周太に巻いてやった。
悪いよと目で言われて、英二は微笑んだ。
「後で周太の買ったら、返してもらうから」
「でも、」
いいからと笑って、英二は言った。
「あらためて、誕生日おめでとう」
黒目がちの瞳が、面映ゆそうに微笑む。
気恥ずかしげに頬染めて、それでも周太は口をほころばせた。
「ありがとう…うれしい」
どうしようと英二は思った。
どうしていつも、こんなに初々しいのだろう。
公衆の面前だというのに、手が出そうで、困る。
けれど途惑いは、きれいに隠して英二は微笑んだ。
いつものパン屋でクロワッサンを2個買う。
そして、いつもの公園のベンチに座って、缶コーヒーを開けた。
ベンチにふる木洩日が、陽だまりをつくって温かい。
落葉の匂いがときおり、熱いコーヒーの香と、ゆっくりとけあった。
クロワッサンが崩れる音と鳥の囀りが、木々の葉擦れの合間に聞こえる。
静かで穏やかな空気が、ほっと英二を寛がせた。
そっと周太が口を開いた。
「なんだか、不思議だな」
どうしてと、目だけで英二は訊いてみた。
黒目がちの瞳をなごませて、周太が続けた。
「昨日もここに一緒に座って、今日も一緒に座っているだろ」
「うん、」
「2日続けては、初めてだなと思って」
そういえばそうだった。
外泊日の時は、日曜は昼を一緒に食べると、そのまま寮へ戻っている。
なんだかこういうのは、幸せだなと英二は微笑んだ。
「続けて周太の顔を見られて、俺は嬉しいな」
「…ん、俺も」
短く答えた本人の、頬が赤くなっていく。
短いけれど素直な答えが、英二は嬉しかった。
公園を後にして歩く、街路樹の梢がだいぶ色づいていた。
後藤が愛する日原の秋も、もうじき訪れるだろう。
隣を振り向いて、英二は言った。
「ちょっとさ、買物つきあってくれる?」
「ん、いいけど」
目当てのアウトドア用品店の扉を開けた。
ウェアのコーナーに行くと、英二は周太の方を少し眺めて、手早く選んだ。
「これとこれ着て」
途惑っている周太をそのまま、試着室へと押しこんでカーテンを閉めた。
待っている間に、Lサイズのコーナーを眺めてみる。
深いボルドーのベースに、腕に白と黒の縦ラインが入ったデザインが目を引いた。
そろそろかなと、英二はカーテンの向こうに声をかけた。
「着れた?」
ぎこちないふうに靴を履いて、周太が見上げた。
ホリゾンブルーの登山用ジャケットと、カーキ色の登山用カーゴパンツが似合っている。
ジャケットの腕には、白と深いボルドーの縦ラインが入っていた。
登山用Tシャツとまとめて包んでもらう。
大きな紙袋を2つ、肩から提げて外へ出た。
ひとつを示して、英二は笑った。
「誕生日プレゼントだから、」
「そんなにたくさん、悪いから」
いいんだと微笑んで、英二は言った。
「雲取山に連れていく約束だろ?その為のだから」
約束の為だから、遠慮なく受取ってよ。言って英二は、周太の顔を覗きこんだ。
困ったように黒目がちの瞳が、見上げてくれる。
すこしだけ、ためらうように、周太は唇を開いた。
「近々、まとまった休暇がもらえそうなんだ」
大会前にほとんど毎日、周太は休みが無かった。
その為に、まとめて4日ほど休暇を与えられるらしい。
笑って英二は提案した。
「決まったら教えて。山荘の予約するから」
「ん、…うれしい、」
周太の笑顔が、英二は嬉しかった。
そうだと思いだして英二は、この間も入った店へと足を向ける。
扉を開けると、見慣れた店員の微笑みが迎えてくれた。
「こんにちは、マフラーは出ていますか?」
彼女は2階へと案内すると、ごゆっくりどうぞと声をかけてくれた。
さっさと選ぶと、英二は周太をつれて会計へ向かう。
タグを外してもらってから、英二は受け取った。
周太の襟元へと、新しいマフラーを巻き直してやる。
あわいブルーにボルドーと、モノトーンの濃淡。その縦ストライプだった。
裏はきれいなブルーグレーでリバーシブルに使える。
また困ったように周太が見上げた。
「…ちょっと貰いすぎだと思う、」
言われて、英二は悪戯な笑みを浮かべた。
そのまま隣を覗きこんで、楽しそうに言った。
「前も言ったこと、もう一度聴きたいわけ?」
「…でも、」
遠慮がちに見上げる瞳に、きれいに英二は笑った。
「これ着た周太を連れて歩きたい。そういう俺の我儘きいてよ」
「わがまま?」
「そう、俺の我儘」
頷いて英二が笑うと、ようやく周太は頷いてくれた。
「…ん。ありがとう、」
見上げて微笑んでくれた顔が、きれいに明るかった。
こんなふうに「わがまま」と言うと、訊いてもらいやすいようだ。
またひとつ、周太を楽にする方法をみつけられた。それが英二は嬉しい。
駅まで戻ると、小さいけれど彩り豊かな花屋で英二は立ち止った。
こんにちはと声を掛けると、売り子の女性が微笑んで迎えてくれる。
「またいらして下さって、ありがとうございます」
「この間は、ありがとう」
きれいに笑いかけると、嬉しそうに彼女も笑った。
隣を振り向いて、英二は訊いた。
「お母さんの好きな花はどれ?」
「え、」
黒目がちの瞳が大きくなる。
今日はこの顔、何回目かな。
こんなふうに、何度も見せてもらえる。それが嬉しい。
「このなかだと、白い秋明菊」
少し考えるように、周太は教えてくれる。
そうかと微笑んで、英二は売り子へと声をかけた。
「白い秋明菊がひきたつ花束、お願いできますか」
「贈りものですね、どんな方ですか?」
微笑んで英二は答えた。
「穏やかで、瞳が美しいひとです」
黒目がちの瞳が、隣から見上げてくれる。
目を見ただけで何を言いたいのか、もう解る。
けれど、きっと後で、言葉にして伝えてくれるだろう。
「秋明菊ですね、」
売り子が大切そうに取った花は、見覚えがあった。
さわやかな白い花。少し寂しげで、けれど凛とした花。
周太の父親へ手向けた花束にも、入っていた花だった。
あの時の花束にも、入れてもらえてよかった。そっと英二は感謝した。
あわい色調の花束を携えて、英二は隣を振返った。
「行こうか、」
歩きはじめてすぐ、物言いたげな唇が静かにひらいた。
「どうしていつも、」
言いかけて言葉が止まる。
隣の顔を覗きこむと、黒目がちの瞳が漲って、きれいだった。
―どうしていつも、わかる? きっとそう言いたいのだろう。
そっと英二は微笑んだ。
「言っただろ、大切な人のことは何でも知りたい。そして全部受け止めて、大切にしたいから」
「…ん、」
周太の手をとって、コンコースの片隅に立った。
覗きこんだ隣の瞳が、微笑んで見上げてくれる。
幸せに、きれいに微笑んでくれる黒目がちの瞳。あんまりきれいで、息が止まる。
人波のカーテンの影で、英二はそっと唇で唇にふれた。
「俺の大切な隣を生んで育ててくれた。大切な息子を俺に託してくれた。
尊敬する人が心から愛した、素敵な女性。そんな周太の母さんに、感謝の花束を贈らせて」
きれいに笑って、英二は言った。
黒目がちの瞳が微笑んで、見上げてくれる。
「うれしい。…ありがとう」
「おう、」
英二は嬉しかった。
こんなふうにずっと、笑ってほしかった。
この笑顔を自分に向けてくれた、そのことが本当に幸せだった。
ふるい家は、端正な静けさに佇んでいた。
年経た木肌があたたかな門を開けると、さわやかな木々の風が迎えてくれる。
頬撫でる風に、どこか惹かれる香りを、英二は感じた。
飛び石を逸れて、庭木の繁る方へと足を向ける。
香りに惹きつけられ、その木を英二は見つけた。
見上げる常緑の梢に、白い花が浮かぶように咲いている。
青空を透かすような、繊細な花弁。花芯の黄金があたたかい。
ゆるやかな秋の陽光に、白い花は眩しかった。
「山茶花だよ。これは雪山っていう名前」
隣が笑って教えてくれる。
そしてすこし恥ずかしそうに、周太は言った。
「俺の誕生花なんだ。生まれた時に両親が植えてくれた」
繊細で凛とした佇まいの白い花。
常緑の葉はきっと、冬の寒さにも夏の暑さにも輝くのだろう。
この隣と似合う木だな。そんなふうに思いながら、英二は微笑んだ。
「きれいな木だな、」
ふっと抜ける風に、白い花弁が一枚ずつ舞った。
惹かれる香が、花弁と一緒に降ってくる。
見つめる視線の真中で、黒目がちの瞳が微笑んだ。
やわらかな黒髪に、白い花弁がふれては風に舞っていく。
惹きこまれるように、長い指の掌は隣の頬にふれた。
「好きだ、」
静かに覗きこんで、くちづけた。
こんなふうにずっと、重ねていきたい。白い花の下、そっと英二は祈っていた。
昼前に、仕事から周太の母は帰って来てくれた。
渡された花束に、穏やかで幸せそうな笑顔を見せてくれる。
「秋明菊と、チョコレートコスモスが嬉しいな」
周太の父に手向けた花が、彼女の花束にも入れられていた。
あのひとチョコレートが好きだったのと、教えてくれる。
嬉しそうに見つめながら、彼女は水切りをして花瓶に生けていく。
「花言葉って、知ってるかしら?」
台所に立つ周太の、包丁の音が心地いい。
そんなふうに思いながら、英二は微笑んで答えた。
「あまり詳しくは、無いですけど」
男の子だものねと、楽しそうに周太の母が笑う。
そして微笑んで、そっと内緒話のように教えてくれた。
「チョコレートコスモスの花言葉はね、移り変わらぬ気持ち」
「おふたりに、似合います」
思ったことを英二は口にした。
ありがとうと微笑む彼女は、すこし赤らめた頬が初々しい。年を忘れたような彼女は、きれいだった。
「その白い花、秋明菊の花言葉は何ですか?」
英二の問いに、少しだけ寂しげに、黒目がちの瞳に揺れた。
それでも彼女は、静かに唇を開いた。
「忍耐、」
英二の目の底が熱くなった。
凛とした可憐な白い花は、彼女にとてもよく似合う。けれど、持たされた意味が、悲しかった。
夫を失ってからの彼女の、終わらない痛みと生き方を顕す言葉。そんなふうに思えた。
それでも、きれいに笑って、英二は思った通りに言った。
「そういう姿は、一番きれいです」
きれいな笑顔が、白い彼女の頬を明るませる。
やわらかに瞳を細め、周太の母は微笑んだ。
「ありがとう、」
良かった。英二は心から嬉しかった。
そして、活け終わった花を見ながら、英二は立ち上がって微笑んだ。
「庭の花で、教えてほしい事があるんです」
彼女の黒目がちの瞳が、かすかに頷いた。
「いろいろ、きれいだったでしょう?」
そんなふうに言いながら、周太の母も立ち上がる。
庭を見てくると周太に告げて、二人で庭へ出た。
山茶花の下に立って、見上げながら彼女が教えてくれた。
「困難に打ち勝つ。それが周太の花言葉」
周太が生まれた時に、あのひとが植えたの。
そう言って微笑んだ彼女は、端然として美しかった。
木蔭に据えられた、ふるいけれど頼もしい木のベンチに腰掛ける。
午後にさしかかる陽射が、頬にあたたかい。木漏日の中で、静かに彼女の唇がひらいた。
「これはわたしのひとりごと」
彼女は微笑んで、そっと長いまつげを伏せた。
「25年前、夫はこんな事を言ったの。『肩代わりをしてしまった、すまない』そう言って、涙をひとつ零した」
肩代わり―その言葉の重みが、英二には解る。
静かに隣に座り、彼女の独り言に寄り添った。
「私の愛する人は、秘密を抱えていた。
その任務は家族にも話してはいけない、そういう場所で彼は戦っていた。
任務の為には人の命も断つ、そういう場所に彼はいた。
その事は、あの人が亡くなって、その時初めて知らされた。
けれど本当は、私は気付いていました。彼が何をして、何に苦しんでいたのか」
穏やかな日差しの中で、白い横顔は静かだった。
ゆるやかに流れる時の底で、彼女は語っていく。
「だから思ってしまう。
優しいあの人は、一瞬のためらいに撃たれたのだと。ずっと自分が、そうしてきたように」
黒目がちの瞳が、英二を見つめた。
ここからはあなたへ話す―目だけでそう告げて、周太の母の唇がひらいた。
「息子もきっと同じ道へと引きこまれていくでしょう。
彼の軌跡をたどろうと、息子は同じ道を選んできた、だからきっと同じ任務につかされる」
彼女と英二は同じ事を考えている。
けれど彼女は女性で、警察官ではない。
そんな彼女が男で警察官の自分と、同じように考えざるを得なかった。
その苦しみが切なくて、英二には悲しかった。
「けれど息子は彼よりも、潔癖という強さがある。そして、聡明です。
だから同じ道にも何か、よりよい方法を見つける事ができるかもしれない。
そして息子には、あなたが傍にいる」
見つめる黒目がちの瞳が、そっと英二に微笑んだ。
「彼の戦う世界には、私では入りこめなくて、寄り添えなかった。
けれどあなたになら、息子と同じ男で、同じ警察官のあなたなら。
息子の世界に入って寄り添って、息子を救う事が、出来るかもしれない」
「はい、」
短く英二は答えた。
きっと彼女の願いは、自分の願いと重なる。そう思ってここに来た。
そしてこれからきっと、彼女は願いを告げてくれるだろう。
真直ぐな英二の視線の先で、周太の母が唇を開いた。
「どうかお願い、息子を信じて救って欲しい。
何があっても受けとめて、決してあの子を独りにしないで。
あの子の純粋で潔癖で、優しい繊細な心。それを見つめ続けて欲しい。
そして我儘を言わせてください、どうか息子より先に死なないで。
あの子の最期の一瞬を、あなたのきれいな笑顔で包んで、幸福なままに眠らせて。
そして最後には生まれてきて良かったと、息子が心から微笑んで、幸福な人生だと眠りにつかせてあげて欲しい」
目の前の、黒目がちの瞳がきらめいて、白い頬を涙が伝っていく。
今はただ、彼女の想いを聴いてやりたい。静かに佇んだまま、英二は彼女を見つめた。
ふるえるように彼女の唇が、そっと言葉を零していく。
「あなたにしか出来ない、心開く事が難しい周太、あなたしか、あの子の隣にはいられない。
私はもう、あなたを信じることしか、出来ません。
愛するあの人と私の、たった一つの宝物。
あの子の幸せな笑顔を、取り戻してくれたあなたにしか、あの子を託す事は出来ない」
涙が彼女をおおっていく。
ふるえる声が彼女の唇をゆらして、英二に告げた。
「とても私は身勝手だと、解っています。
あなたが本来生きるべきだった、普通の幸せを全て奪う事だと解っている。
けれど誰を泣かせても、私はあの子の幸せを願ってしまう。
そしてあなたに願ってしまう、どうか願いを叶えて欲しい。そして、そして…」
涙の中に最後の言葉がうずもれてしまう。
長い指を伸ばして、英二は彼女の涙を静かに拭って、微笑んだ。
「俺の願いも、お母さんと同じです」
短く応えて、きれいに英二は笑った。
「俺はとても直情的です、だから自分にも人にも嘘がつけない。
率直にものを言って、ありのままに生きる事しか出来ません。
だから卒業式の夜、俺はあなたの息子を離せなかった。そしてそのまま、離せません」
涙の底から、黒目がちの瞳が英二を見つめる。
木洩日が揺れる瞳を見ながら、英二は話した。
「端正で純粋で、きれいな生き方が、眩しい。
そのままにきれいな、黒目がちな瞳の繊細で強いまなざしが、好きです。
あの瞳に見つめてもらえるのなら、俺はどんな事でもするでしょう。
警察官として男として、誇りを持って生きること。
誰かの為に生きる意味、何かの為に全てを掛けても真剣に立ち向かう事。
全てを自分に教えてくれたのは、周太です。
周太と出会えなかったなら、男として警察官として今、生きる事もありませんでした」
穏やかに微笑んで、英二は周太の母に告げていく。
「生きる目的を与えてくれた人。
きれいな生き方で、どこまでも惹きつけて離さない人。
静かに受けとめる穏やかで繊細な、居心地のいい隣。
ほんとうに得難い、どこより大切な、自分だけの居場所。
それが俺にとっての周太です。
周太の隣だけが、俺の帰る場所です。もう、他のどこにも、帰るつもりはありません」
山茶花の香の風が、ゆるやかに頬を撫でる。
きもちいいなと思いながら、英二は言葉をつづけた。
「俺は身勝手です。だから絶対に周太から離れません。
他の誰にも譲らない、俺だけを見つめてほしい。
こんな独占欲は、醜いのかもしれません。けれどもう、孤独にはしません」
きれいに笑って英二は言った。
「だから許して下さい。ずっと周太の隣で、生きて笑って、見つめ続けさせて下さい」
黒目がちの瞳が泣いた。
けれど明るく瞳はかがやいて、周太の母は微笑んだ。
「私こそ許して。そして、息子をお願いさせて」
「はい、」
きれいな笑顔で英二は頷いた。
嬉しそうな頬笑みが、英二を見つめている。
自分と彼女は同志、英二はそう思う。
きっと同じ目的を抱いている、そう思っていた。
そして今お互いに、告げあって許しあえている。
彼女が尋ねた。
「宮田くんの誕生日はいつ?」
「9月16日です、」
そう、と頷いた彼女の顔が、ふっと明るく輝いて見えた。
「ベロニカ、瑠璃虎の尾の、花の日ね」
青紫色のきれいな花よ。
そう教えてくれてから、きれいに彼女は笑った。
「常に微笑みを持って。そういう言葉の花」
私が好きな花なのと、周太の母が微笑んだ。
それから静かに英二を見つめて、そっと笑いかけてくれた。
「あなたに相応しい、そう思う」
常に微笑みを持って―そうありたい、心から願う。
この先に、何があっても自分は受けとめたい。
どんな辛い事も全て、必ず笑顔に変えていきたい。
「ありがとうございます」
きれいに笑って、英二は応えた。
周太の手料理は温かくて、英二は一番好きだった。
自分の誕生日に、母へと手料理を作る。
そういう周太が、好きだ。
食事が済んで、周太の母が選んできたケーキでお茶をする。
オレンジの香りがいい、あっさりした甘さがおいしかった。
周太はいつも、甘いものはオレンジの香りをよく選ぶ。
周太の母も選んだと言う事は、よっぽど周太の好みなのだろう。
そのうち何かで、こういうものが贈れたらいいな。そんなことを英二は考えていた。
食器を洗う周太を手伝っていると、周太の母が声をかけた。
「じゃ、お母さん出かけるね」
「え、」
黒目がちの瞳が驚いて、楽しげに笑う黒目がちの瞳を見つめている。
そっくりな瞳が違う表情で見つめ合う。それがなんだか、英二は楽しかった。
「職場のお友達とね、温泉に行く約束なのよ」
なんでもないふうに彼女が笑う。
でもと言いかけた周太に、彼女は微笑んだ。
「ずっとこの家で、私は毎晩を過ごしてきたもの。
お父さんの気配も、周太の事も、一人にしたくなかったから。
でも、今日は大丈夫だろうから、他の場所の夜を見に行こうと思って」
これも彼女の本音だろう。
夫の殉職からずっと、遺された夫の気配と共に夜を過ごして、彼女は生きてきた。
けれど今日、ようやく少しだけ、彼女も外へ出る。
今まで通りに穏やかだけれど、庭から戻った彼女は明るい。
きれいに笑って、英二は言った。
「明日は仕事です。だから、夜明けまでなら留守番ひきうけます」
「うれしいわ、お願いね」
彼女の荷物を持って、門まで英二は見送った。
荷物を受け取りながら、悪戯っぽく彼女は微笑んだ。
「周太を幸せな夜へ浚っておいて」
さすがに驚いて、英二は彼女の瞳を見た。
黒目がちの瞳は穏やかで、温かい。彼女は微笑んで、そっと口を開いた。
「あの子の幸せな笑顔を見たい。そんな私の我儘を叶えて」
内緒話のようにささやいて、軽やかに出かけて行ってしまった。
ほんとうにこのひとは、油断がならない。英二は可笑しかった。
きっと彼女自身が、夫とそういう夜を幸せに過ごしたのだろう。
それがなんだか、英二には嬉しかった。
「急にどうしたのかな、お母さん」
驚いた瞳のままで、周太は首かしげて見送っている。
この隣にはきっと、母親の行動の真意は気づけないだろう。
そんなところもまた、英二は好きだった。
周太の父の書斎へ、久しぶりに訪れた。
開いた窓から、山茶花の香がふきこんで流れる。
重厚でかすかに甘い、懐かしい香りと重なっていく。
頑丈なオークの書斎机にも、山茶花が清らかに活けられていた。
花の陰から、誠実な笑顔が英二を見つめて微笑みかける。
お久しぶりですと、心から懐かしく英二は笑いかけた。
封筒に納めた写真を、英二は取出した。
青空を梢で抱いた、ブナの巨樹。
携帯で撮ったけれど、思ったよりきれいにプリントが出来ている。
少し眺めてから、そっと白い花の陰へと供えた。
「話してくれたブナの木?」
「ああ、」
覗きこんだ隣に、英二は笑いかけた。
周太にはあえて、メールでは写真をおくっていない。
実際に見せてあげたい、そう思っている。
けれど周太の父には、写真でも見せたい。そう思って今朝プリントをしてきた。
「きれいだね、」
写真を見つめて、そっと周太が微笑んだ。
きっと田中なら、もっと美しい写真で見せてくれただろう。
それでも今の英二の、精一杯の視点から写した。
降りかかる水の全てを抱いて、清水へ生まれ変わらせる、ブナの巨樹。
周太に出会って変わった、自分の生き方。そうして出会えた大切な場所。
それを、周太の父にも見てほしかった。
辛い任務と秘密を負っていても、いつも家族に微笑んでいた男。
尊敬するこの男に、認めてもらえる自分になりたい。そんなふうに英二は思う。
久しぶりの周太の部屋は、相変わらず簡素で清々しかった。
木枠にはめこまれた、昔のガラス窓からの光はやわらかい。
明るい陽射がふるベッドで、ふたり並んで座る。
お互いに持っていた本を読み始めて、ふっと周太は気がついた。
「宮田の本、題名なに?」
訊かれて表紙を見せると、周太が笑った。
「俺のと同じ」
周太は原文だけれど、同じ著者の同じ本だった。
それからお互いの感想を少し話した。
英二がまだ読んでいないところまで、周太が言いかける。
その先はまだ言うなよと、笑った英二に周太は意地悪をした。
「それで登山家はね、チベットの国境で」
構わずに話そうとする、すこし悪戯っぽい瞳が明るい。
その明るさが嬉しくて、英二は隣を抱きしめた。
開いたままのカーテンから、上弦の月が輝く。
上弦の月は「生」を司る。そんなふうに何かで読んだ。
そんなことを想いながら、やわらかな髪越しの月を英二は眺めていた。
抱きしめた腕の中は、穏やかに熱い。
自分の肩へ額をつけて眠る、この隣の顔は穏やかで、きれいだ。
夕方のまだ明るい時間に抱きしめて、そうして今、こんなふうに眠っている。
自分でも、そんなつもりはなかったのに。
けれど黒目がちの瞳の明るさは、あんまりきれいで、惹きこまれた。
そうして、気がついた時にはもう、なめらかな素肌を抱いていた。
いったい今は何時なのだろう。
月の位置は地平線からまだ高い、今日の月の入りは確か23:50頃。
19時半位かなと目だけ動かして、壁の時計を見ると当たっている。
山岳での生活の中、天体の動きにも英二は敏感になった。
かすかな月の明るさに、隣の顔を覗きこむ。
幼げに見える寝顔の、頬には涙の痕がのこされていた。
夜闇に透ける肌には、赤い翳が散らされている。
きれいな頬にそえられた右腕には、赤く花のような痣がうかんでいた。
あの卒業式の夜から、会うたびに唇をよせてきた痣。
さっきもまた、くちづけが強すぎて、痛かったかもしれない。
長い指でそっとふれると、まだ熱が残されていた。
どうしていつもこんなふうに、強く掴んでしまうのだろう。
きれいだと見つめて、惹かれて離せなくなって、気づけばもう抱いている。
自分の腕は強く掴まえて、胸と腕で閉じこめてしまう。
こんなふうに特別な関係を結ぶことは、周太には自分が初めてだった。
自分が初めてで良かったと、心から英二は思う。
こんなふうに自分は独占欲が強い。もしこの隣が、他の誰かに触れられていたら、もっと自分は歯止めが利かない。
他の誰かの痕を消したくて、その名残が消えるまで、ずっと離せなくなるだろう。
穏やかに眠る顔には、初々しい艶がけぶっている。それも全て自分が刻んだ、その全てが英二の喜びだった。
卒業式の夜と今日と。隣にいるのは同じ、けれど、今日はただ幸せが温かい。
これで4度目、まだそれだけ。
それなのに自分はこんなにも、この隣を自分に刻み込んでいる。
そして隣もきっと、自分を刻みこまれている。
この先に何があっても、刻まれたものはもう消えない。そんな確信がもう座っている。
見つめる視界の真中で、長い睫がゆれて、ゆっくり瞠かれた。
焦点がすこし揺れる瞳が、いとおしい。
きれいに笑って、英二は微笑んだ。
「大好きだ、」
ぼんやりと、けれど恥ずかしそうに、隣は微笑んだ。
「…ん、うれしい。お…」
言いかけてまた言いよどむ。
けれどなんて言いたいのか、英二はもう知っている。
言いたい事がもう解る、そういうのは幸せだと思う。
微笑んで英二は言った。
「知ってる、」
明日は5時にはここを発つ。
そうして自分のするべき事を、成し遂げる。
すこしだけ距離は離れる、けれどいつも自分はこの隣にいる。
絶対にもう離れない。
ゆるやかに長い腕に力をこめて、英二は隣を抱きしめた。
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宮田の思いと湯原のお母さんの思いにおもわず泣けちゃいました。
二人の思いの強さにすごいなと思いました。
本当に宮田がいれば湯原にこの先辛いことが待ち受けていたとしても、宮田がきっと笑顔に変えてくれるだろうと思いました。
宮田の笑顔って最強ですね。宮田にとっては湯原の笑顔が最強なんだろうけど。
泣いてくださったのですね、良かった、嬉しいです。
宮田と湯原母、この関係も強い絆の「運命の二人」
“笑顔”は最強です。
いつもコメント、本当に感謝です。とても参考&励みにさせて頂いています。
智
リクしておきながら、up作品を読み込む時間が無く大変失礼しました。
そして最新まで読み通して、自分のリクがいかに「浅かったか」を思い知らされましたよ(笑
戦友、バディ、仲間、同志、男の群像モノなど、個人的に好んで鑑賞してきました。
それゆえ宮田と湯原が絆を深めていく過程もすんなり入ってきたのですが、
関係を突き詰める=性的一線を超える、というくだりが、どうしても「?」でありました……。
男子というのはリアルでも、恋人子供家庭より、男の関係を優先する傾向が強いです。
超えずとも、強く固く結びついてしまうのが男の性かと。
なので「一線を超えてしまう感情回路」を、智さんの筆を通して読み解いてみたいなと過ぎり、リクした次第でした。
湯原視点で、宮田は男とか女とかを問う次元ではもうないのだな、と読み取りました。
そして、その後の二人の関係性を追っていくと、
もはや「なぜ一線を超えてまで?」に疑問を抱くことすら、愚問というか(笑)。
一線どうこうなんて、彼らにとっては、境界線でも三途の川でもなく、
一応頭の片隅で世間的な理解として、男と男とで生きていく道はイバラと分かっているだけで、
イバラといっても、躊躇や回避なんてのは毛頭無い、という領域にいるのですね。
彼らは。
論ずるに値しない。
それが彼らにとっての、一線に対する感じ方なんだなあ、と感想を持ちました。
すでにラストの構想は練り上がっておられるようですが、少しでも長く、できればもっともっと(笑)
宮田と湯原のストーリーを読ませてくださいませ。
追記
掲載ページが異なりますが、藤岡に「匂い」を指摘された辺りはツボでした。ああいうイジり方、お上手ですね。
ドラマとは別感覚で智さんの作品を読むようにしているのですが、
胴着に関しては、あの宮田と湯原(特に湯原は体格的にハマりすぎ)の凛々しい姿と重なってしまい胸キュン倍増です。
ぜひお話伺いたかったので嬉しいです、ありがとうございます。
>境界線でも三途の川でもなく
うーん、なるほど。そう考えられることが現代日本では、普通でしょうね。
私事ですが。自分は幼い頃から歴史書を読む機会が多くありました、代々そんな家なので。そんなわけで得た視点をちょっと書かせて頂きます。ご興味無かったらすみません…
日本で男同士の恋愛が禁忌になったのは、この100年が初めてです。
平たく言えば、少なくとも明治時代まで、男同士のそうした関係は常識でした。
戦国時代までは、男同士の関係を持てない方が、異常・不具者と考えることが普通。江戸時代には男娼遊郭も公然設置されています。
それくらい尊ばれる関係性として公認されていた、そういう風土が日本には有ります。
女性との繋がりは子孫繁栄に必須な本能的衝動。
けれど男性同士の紐帯は、そうした本能に支配されない精神性が高い「美徳」と考えられていたようです。
男性同士の恋愛をしている友人も、同じような事を言っていました。
ですが男同士では子孫を残せません。その為に、どんなに望んでも男を正妻にする事は禁止でした。
女性との婚姻をせずに男同士の関係だけを貫くなら。完全に秘密を守るor心中するのいずれかでした。片方の婚儀の席でもう一方が殺害しそのまま自身も死を選ぶ。そういう心中例もありました。
そういう歴史的背景もあって、現代日本でも同性婚は認められ難いという事情があります。
>超えずとも、強く固く結びついてしまうのが男の性
深春さんの言うとおり、男同士の紐帯は固いです。でもごめんなさい体の関係を求める欲も男は強いです(朝からこんなこと申し訳ありません!!)
自分は異性にしか興味無いですが、友人が話してくれる気持も解るなあと思います。
書かせて頂いている宮田と湯原のように「その隣だけに帰りたい」そこまで想う相手だったら、たぶん全部を求めてしまうかなと。男は独占欲強いですからね。って、なんかすみません。。
友人の話を聴いていると、現代日本ではリスクが高い分、余計に純粋になれるのかもしれない。そんなふうに思います。
ながーく語ってすみませんでした。
この物語もたぶん長くなります。そういう二人の生き方も自分は好きなので、全部描き切りたいと思っています。
どうぞまた深春さんのお話も、訊かせて下さい。
>ああいうイジり方、お上手ですね
よくSだと言われます。笑
たくさん胸キュンして頂けるような、あたたかい文章を書けたらいいな。そんなふうに書いています。
どうぞ今後ともよろしくお願い致します。
では仕事始めないとです。笑
智
宮田と湯原母の再会をそんなふうに言って頂けて嬉しいです。
描いていく宮田のかっこよさに悔しがって頂けて嬉しいです。
宮田は公式設定と進路選択から、こんなふうにキャラクターが育っています。描いていて彼が大好きです。
そして、この3人の物語はきっともっと濾過されていきます。
コメント嬉しかったのでレスさせて頂きました。ご迷惑だったらすみません!
どうぞまたお話訊かせて下さい。
智
山岳救助隊、検死、射撃などなど、あれだけご自身のコトバに変換してすらすら書けるには、専門資料に対する「読み込みと慣れ」がないと厳しいでしょうから。
智さんの場合、幼少から鍛えられているんだなあ、と分かりスッキリしました。
>日本で男同士の恋愛が禁忌になったのは、この100年が初めてです。
>平たく言えば、少なくとも明治時代まで、男同士のそうした関係は常識でした。
勉強になりました。目からウロコがぼろぼろ(笑
けど同時に、怖いな、と思いました。
たった100年ぽっちでまるきり逆転する常識があるとは。
BLは言い換えれば「原点回帰」なんでしょうかね…?
そういえば最近、女子高校生と話す機会があったのですが、
彼女たちは「一部だけど」と前置きしつつも、ゲームやアニメ、小説の好きなジャンルに「BL系」と、
ごくごく普通に挙げるものですから、へえええ~!オープンになったもんだと驚きました。
昔は、ごつくてマッチョな男性同士みたいに聞かされましたが、現在は、線が細くてキレイめな男子同士のイメージが先行しますものね。
確かに、イマドキ女子に響くのは分からなくもないです。
自分はどうも歴史に苦手意識がありましたが、
「遡って知ること」は、今、目の前で起きている出来事を広い視野で見渡すことにも繋がるんですね。
歴史アレルギー、少しずつでも解消していきたいです。
作品を通してまた、何か教えがあれば是非♪
>幼い頃から歴史書に触れられる環境って、なんだかスバラシイ
うわ照れます…でもきっと他所の大人から見たら生意気なガキだったろうなと思います。
おかげで読み慣れは出来ているかもしれないです。兄達や父・祖父達に感謝ですね。
>100年ぽっちでまるきり逆転する常識
明治維新の影響です。西欧文化に追いつく=野蛮だと卑下されないために、悪く言えば何でも「モノマネ」を当時はしました。
西欧で主流のキリスト教では男性同士のそうした行為を全否定する部分もあります。その影響が大きかったようです。
けれど西欧の方が現在、そうした同性婚を認可しています。
全否定したけれど、先祖思想がないキリスト教
では家の継続より、個人主義が先行する為のようです。
男性同士を美徳としつつも、家制度の継続の為には男性同士の婚姻を否定した日本とは、正反対。
どっちかというと真面目に考えていた、日本の方が公認され難いという現実があります。なんだか切ない話だなあと思ってしまいます。
原点回帰も良い事かもしれないですね。
どんな立場・思想・感情であれ、否定されるのは哀しいものなので。
>「遡って知ること」は、今、目の前で起きている出来事を広い視野で見渡すことにも繋がるんですね。
本当にその通りだと思います。
自分はそうした環境で育ちましたが、フラットな視点を持ちやすいかなと思います。そのおかげで、色んな世界の友人知人に恵まれたなと。
この物語でも、宮田はフラットな視点の持ち主として描かれています。だから成立する物語です。
深春さんは宮田視点がお好きとの事、最近の彼は鋭利な男性的表情を見せていますが、いかがですか?
お話また聞かせてくださると嬉しいです。
智