猪木武徳 新潮選書2021
経済学者が、趣味のクラシックについて、自身の研究アプローチも利用しながら論じた書。クラシックについての知識は、趣味を遥かに超えた広大なものである。雑誌の連載をまとめた書籍なので、本としては読みにくいところがある。
歴史的な時系列と、分析の視角が行ったり来たりの面があり、そこが読みにくい。エピソードは非常に面白いし、バッハの報酬等の価値の算定などは経済学者の面目躍如といったところである。デモクラシーという軸で、クラシックだけを語るのは結構無理があるように思う。ジャズやロックが登場しないと、難しいように思う。教会との関係、ナショナリズム、ソ連という体制、技術進歩、それぞれは面白いのだが、全体として読むとなかなか読みにくい。試みとしては面白いと思う。