野菜を採りに外へ出たら、柿畑の方からヤギの鳴き声が聞こえてきました。
あ、ヤギが来てる。
こんにちは、久し振りだね。
おお、こっちに向かってくる。 またまた大きくなったようです。 頭の毛が、人間の髪の毛みたいにふさふさです。 角も前より長くなりました。 わたしが頭をなでてやると、ぐいぐいと頭を押しつけてきます。 かなり力強いです。
どうです、たくましくなったでしょう。 もう「三びきのやぎのがらがらどん」(北欧民話 福音館書店)の2番目に大きいやぎぐらいかな? メスは、兄妹なんだそうですがまだまだ小さくて、体格にずいぶん差がついてきました。 そして背中の毛がたてがみのように立ってきました。
そこへ車が停まったとおもったら、ヤギが一声
めええ~
下りてきたのは飼い主さんでした。
飼い主のYさんのことは実はよく知りません。 わたしが仕事を辞めて家にいるようになってから、畑で仕事をしているのを見かけるようになったのですが、柿だけでなくいろいろな作物を作っているようです。 私が見ただけでも、ぶどう、キーウィ、桃、ハウスで新しい柑橘、夏には大量に梅干しを干しているしー。 ひげをはやしたおじいさんで、ときどき腰の曲がったおばあさんと一緒に作業をしています。 年をとっても、とても働き者で意欲のあるご夫婦だなあと、いつも感心していました。
甘えています。
ヤギが頭を押しつけてくるのはじゃれているんだそうです。 連れて歩いていても、突然振り向いて押してくるんだとか。 おかげでYさんの足は青あざがいっぱいなんだそうです。
「目がかわいいでしょ? つっかかってこられてこいつ!と叩いてやろう思ってもこの目を見たら腹立たんようになる。」
あっ、こら。 わたしもズボンをかじられました。
いたずら者のオスはピッコロといいます。
「ピッコロいうのはイタリア語で小さいという意味でしょ。 ヤギのオスは大人になったら子牛ぐらい大きくなって扱いにくいんじゃと。 あんまり大きゅうなるなよという願いを込めてピッコロとつけたんよ。」
ふう~ん、「大きくなるなよ」君というわけですね。
ひたすら草を食べているメスはステラという名前だそうです。 こちらは「星」ちゃん。
「メスは、オスが悪さしよってもしれっとしとるねえ。 人間の子どもみたいじゃわい。 ほら、小学生頃の男の子がしょうもないことしよっても、女の子は、『何しよるん』くらいで相手にせんじゃろ。」
「はじめはメスだけもらおうおもたんじゃけど、1匹じゃさみしいけん。 普通オスは用がないけん生まれたらすぐ処分されるらしいですよ。 まあ、草を食べてくれるけんええけどね。」
草だけじゃなく、柿の葉も食べてますよね。
「柿の葉だけじゃない、実も食べるんよ。」
ほんと! 低いところの柿にはくっきりとヤギの歯形がありました。
ところで、結婚してここに住んで約30年、Yさんとお話ししたのは今日が初めてです
なかなか気さくな人でした。 そして・・・・ 思っていたよりもずっと若そうなのです。
昼ご飯の時夫に聞きましたら、私と同じくらいかもう少し下だと言います。
し、失礼しましたっ。
腰の曲がったおばあさんは、奥さんではなくお母さんでした。