2016年に横浜美術館で開催された「村上隆のスーパーフラット・コレクション」に展示されていた作品を見て、ずっと気になっていた作家がマルセル・ザマである。作風は、一見コミカルでポップな感じがするのだが、よく見ると不気味さがあり、シュールレアリズムのポップ的展開と言ったらなんとなくわかっていただけるだろうか。不気味さはあるが、あくまでドライで、陰鬱な感じがしないところが絶妙である。
「村上隆のスーパーフラット・コレクション」で展示されていた「First Born (第一子、2007)」。本書にも掲載されている作品。
本書は2009年に出版された洋書で、DVD付きである。Amazonに掲載されていた英文の紹介文を下記の通り和訳してみた。
『マルセル・ザマの新たな作品を展示する、デヴィッド・ツヴィルナーでの彼の5回目の個展「even the ghost of the past(過去の幽霊でさえも)」のときに本書は出版された。ザマはアート、文学、インディーミュージック・シーンでの人気作家であり、マニラ紙に書いたペンと水彩による比喩的な構成でよく知られている。抑えた茶色、灰色、緑、黄色、赤からなる特徴的なパレットから生み出されたザマのドローイングには、ヒト、動物、そして雑種からなる様々な出演者たちが住んでいる。近年ザマは、様々なメディアを使った作品を制作するようになった。彼のいちばん新しい展覧会は、ギャラリーをドローイング、衣装、立体模型、映画からなるイマジネーションの劇場へと変換した。このカタログには、映画製作者のスパイク・ジョーンズによるインタビューも含まれている。コレクターズ・アイテムとすることを目的に、Even the Ghost of the Pastは二つの巻を一冊にまとめたユニークな形式になっている。本書はこの作家との共同作業によってデザインされ、表紙画として特別にドローイングが制作され、オリジナルの短編映画のDVDが付録された。マルセル・ザマは1974年にカナダ・ウィニペグで生まれ、現在はニューヨークに在住して制作を行っている。1996年以降、彼は広く北アメリカやヨーロッパで出展してきた。多くの個展、グループ展に加え、彼はニューヨークタイムズ誌、インタビュー誌、モノポール誌、アートレビュー誌への掲載に寄与してきた。』
また、この本に収録されたインタビューや解説を読んでみると、失読症だった子供時代に絵を描くことは自らの治療になったこと、政治的な動機で作品が作られていることもあること、それぞれのキャラクター(登場人物や動物)にはなんらかの意味があることなどが書かれている。そして、ザマは20世紀初頭のダダイズム、とくにマルセル・デュシャンやフランシス・ピカビアの影響を受けているということだ。
ザマ作品を元に作られたN.A.S.A.というアーチストのミュージック・ビデオ。
N.A.S.A. "The People Tree" (feat. David Byrne, Chali 2na, Gift Of Gab, & Z-Trip)
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