(承前)
今期のドラマの中で,目下の所,断トツの視聴率を上げているのがフジ「BOSS」だ。第5回までの平均で16.5%というのは,20%越えが条件とされていた一昔前のヒット作に比べるとやや物足りないが,近年のドラマの中では「さすがは天海祐希」と呼べるだけの成績だ。
米国帰りのキャリア捜査官が,落ちこぼれのスタッフを率い,「ティームとして(ドラマの中で天海がこう連呼する)」凶悪犯罪に挑むという,警察ドラマとしてはありがちな展開だが,ここまでの高い数字は「天海=BOSS」という手堅い発想が視聴者に安心を提供したことによるもの,と考えるのが妥当だろう。
だがここまで扱ってきた犯罪は,山田孝之が犯人役を演じた2話連続の殺人事件に代表されるとおり,想像以上にハードな色合いが強い。
更に天海祐希のずっこけキャラが封印されていることも影響して,キャストから想像された「ティーム」の雰囲気と犯罪捜査ドラマのギャップが目立ち,残念ながら期待通りの仕上がりとは言えない。特に,暗く我が侭なオタクキャラをあてがわれた戸田恵梨香の埋没は痛い。
天海の過去が明らかにされるであろう後半に向かって,徐々にペースを上げていくことが期待されるが,鍵はこれまた暗い過去を仄めかされている玉山鉄二の扱いかもしれない。
もう1本の警察ものは,堅物のキャリア警察官を主人公に据え,大捕物も銃撃戦もないのに手に汗握らせ,かつ泣かせるという画期的な警察小説「隠蔽捜査」シリーズで見事に私をノックアウトした今野敏の小説「神南署安積班」をドラマ化した,TBS「ハンチョウ」だ。
こちらも「BOSS」同様に,優秀なリーダーを中心としたチーム(佐々木蔵之介は決して「ティーム」とは呼ばない)による集団捜査劇だが,「隠蔽捜査」が持っていた緻密さや人間ドラマの熱量に比べると,数段のレベルダウンは否めない。
陽光が差し込む取調室や,主役陣しか写らない執務室の単調な描写に代表されるように,はなからリアリティというものには興味がないような制作姿勢には首を傾げるざるを得ない。
そんな穴だらけで安易な作りにも拘わらず,ここまでチェックし続けている理由は,昨今数少なくなってしまった「人情もの」であるという一点だ。
もはや死語と化してしまったのかもしれないが,かつて「ホームドラマ」と呼ばれた番組に欠かせない存在だった,優しく全てを見守るウェットな父親を,犯罪捜査のキャップというキャラクターで甦らせるという試みと捉えると,この低予算の警察ドラマも違った顔を見せるのだ。
今,幸せ薄い優しい母を演じさせたら,確実に7本の指に入ると思われる奥貫薫の着物姿も艶やかだが,(Wikipediaによると)好きなサッカー選手がレドンドというのは渋すぎ。でも共演が中村俊介だから,それもありか?
(この項続く)
今期のドラマの中で,目下の所,断トツの視聴率を上げているのがフジ「BOSS」だ。第5回までの平均で16.5%というのは,20%越えが条件とされていた一昔前のヒット作に比べるとやや物足りないが,近年のドラマの中では「さすがは天海祐希」と呼べるだけの成績だ。
米国帰りのキャリア捜査官が,落ちこぼれのスタッフを率い,「ティームとして(ドラマの中で天海がこう連呼する)」凶悪犯罪に挑むという,警察ドラマとしてはありがちな展開だが,ここまでの高い数字は「天海=BOSS」という手堅い発想が視聴者に安心を提供したことによるもの,と考えるのが妥当だろう。
だがここまで扱ってきた犯罪は,山田孝之が犯人役を演じた2話連続の殺人事件に代表されるとおり,想像以上にハードな色合いが強い。
更に天海祐希のずっこけキャラが封印されていることも影響して,キャストから想像された「ティーム」の雰囲気と犯罪捜査ドラマのギャップが目立ち,残念ながら期待通りの仕上がりとは言えない。特に,暗く我が侭なオタクキャラをあてがわれた戸田恵梨香の埋没は痛い。
天海の過去が明らかにされるであろう後半に向かって,徐々にペースを上げていくことが期待されるが,鍵はこれまた暗い過去を仄めかされている玉山鉄二の扱いかもしれない。
もう1本の警察ものは,堅物のキャリア警察官を主人公に据え,大捕物も銃撃戦もないのに手に汗握らせ,かつ泣かせるという画期的な警察小説「隠蔽捜査」シリーズで見事に私をノックアウトした今野敏の小説「神南署安積班」をドラマ化した,TBS「ハンチョウ」だ。
こちらも「BOSS」同様に,優秀なリーダーを中心としたチーム(佐々木蔵之介は決して「ティーム」とは呼ばない)による集団捜査劇だが,「隠蔽捜査」が持っていた緻密さや人間ドラマの熱量に比べると,数段のレベルダウンは否めない。
陽光が差し込む取調室や,主役陣しか写らない執務室の単調な描写に代表されるように,はなからリアリティというものには興味がないような制作姿勢には首を傾げるざるを得ない。
そんな穴だらけで安易な作りにも拘わらず,ここまでチェックし続けている理由は,昨今数少なくなってしまった「人情もの」であるという一点だ。
もはや死語と化してしまったのかもしれないが,かつて「ホームドラマ」と呼ばれた番組に欠かせない存在だった,優しく全てを見守るウェットな父親を,犯罪捜査のキャップというキャラクターで甦らせるという試みと捉えると,この低予算の警察ドラマも違った顔を見せるのだ。
今,幸せ薄い優しい母を演じさせたら,確実に7本の指に入ると思われる奥貫薫の着物姿も艶やかだが,(Wikipediaによると)好きなサッカー選手がレドンドというのは渋すぎ。でも共演が中村俊介だから,それもありか?
(この項続く)