前回の「グリーンプラザ箱根」の続き。
秀明館が守る姥子(うばこ)の湯は、箱根七湯には入ってないが、金太郎の目の傷を姥が治させたという伝説の湯。
大涌谷と芦ノ湖の間にありながら、箱根神社の領内ということもあり、観光開発されず秘湯的雰囲気が残った。
この秀明館、木造の古い造りの棟が並ぶ宿で、その全貌は上を行くロープウエイから眼下に望むと、森の中の和風建築がひときわ目だって、誰しもが心誘われるはず。
実はしばらく閉鎖されてたのだが、数年前に湯本の”天山”経営で再開された。
ただし休憩のみ。
ネットでは入浴のみが1800円とあったのだが、それは15時以降で、10時から15時までは部屋休憩2300円~しかない。
正直1800円でも高いと思っていたので、入る気をなくす。
でもせっかく宿に向って歩いているので、宿だけでも見に行こう。
小雨の降る中、古い造りがそのままの建物を見ていると、やはりこの中を見たくなる。
中で掃除をしていた人と目が合い、挨拶してきたので、入ることにした(このタイミングって結構効く)。
本当は仙石原のススキ野の中を歩く予定だったのだが、この雨だし、ここで時間をつぶすか。
それにグリーンプラザ箱根のカウンターの女性がせっかく印刷して持ってきてくれた情報を無にするのも心苦しい。
古い木造の秀明館(写真)は湯に入って休憩するだけなら、確かに風情があって居心地よさそう。
でも泊るとなると居住性の悪さが表面に出てきてしまう(泊るのはグリーンプラザ、昼はここっていうのが最高)。
昔は客間だった部屋に通された。
このクラスの和室って入口から窓枠まで昭和30年代の家庭風景って感じだもんな。
貧乏臭くなってしまう。
浴室の入口には、先客2人分の履物が並んでいた。
狭い浴槽で面と向かうのも気詰まりなので、部屋に戻ってしばらく待ったが、出た様子もないので、3人目として入った。
浴室は、2つ並んだ(仕切られた)浴槽の奥の正面に、しめ縄が張られた溶岩が(あたかも建物の壁を破ったかのように)せり出していて、
そこから源泉が連続してしたたり落ちている。
源泉がたまっている湯壷の上には竹の棒が横断してあり、
そこは「聖域」と表示され、湯を目につける以外は立入禁止とのこと。
”源泉かけ流し”は数多くあれど、目の前の自然湧出泉をそのままいただける風呂はいまや貴重。
手前の2つの浴槽の、一方は聖域からの熱い湯がそのまま入り、他方は温度が下げられている。
こういう風情なので、湯に入るのも神妙な気分になる。
先の2人の客も、まるで入湯が修行であるかのように黙々と出入りを繰り返す(熱いので長湯できないため)。
浴槽の外はかけ流しの湯が常にあふれ出ている(これも熱い)。
洗い場はなく、石鹸・シャンプー禁止。
観光地箱根にもこういう厳粛な本格的温泉がほしかった。
ただし泉質は単純温泉なので無色無臭。
なのでこのような”演出”がないと確かに有り難みがわかないかも。
単純温泉とは、化学成分の溶存量が1g/リットルに達しないもので、要するに、常水に近い薄い湯(といっても家庭用浴槽に”名湯”入浴剤を入れた程度では0.15g/リットルしかない)。
なのにここは眼病に効くと言われているのも面白い。
せっかくなので、聖域の湯で目を洗ってみた。
いくらなんでも近眼&老眼には無理だろうな。
それに湯はかなり熱いので、湯をつけすぎると目玉が半熟玉子になってしまいそう。
部屋には4時間も居残れるので(そう考えると2300円も高くない)、
せっかくなので、後でもう一度入ることにし、部屋に戻ってノートパソコンでこうして温泉紀行を打つ(空き電源あり)。
テレビがなく、さっぱりとした室内には、湯茶のセットがあり、ビーズクッションに身を沈めれば心地よい(ビールを含む飲物の自販機は館内にある)。
窓の外は深い森なので、雨もまた落ち着いた風情。
客はほとんどいないので、館内は静まり返っている(乳幼児連れ・団体はお断りとのこと)。
昼の4時間、昔風の和室で、縕袍(どてら)をはおって、湯茶をすすりながら、中央に置かれた小さい卓で原稿執筆する(原稿用紙と万年筆の代わりにノートパソコンだけが今風)。
そういうのにいいかも。
たしかに騒音もなく集中できる(私は喫煙者ではないが、片手に煙草を挟んで…というのも絵になるが、室内は禁煙)。
疲れたら、神聖な湯に入ればいいし。
雨もあがったので、再び湯に入り(今度は誰もいない)、休憩2時間弱で宿を後にした。
経営者は自らを支配人ではなく「湯守り」と名乗っている意気込みが頼もしい。
グリーンプラザ箱根にとっては、この貴重な湯屋が徒歩圏内にあることが自らのセールスポイントになることにも気づいてほしい。
グリーンプラザに連泊して、昼は秀明館に入るという通向けの「湯治ブラン」を設定してみてはいかが?(双方にとってメリットあるよ)。
でも姥子の湯は、湧出量が降水に依存して不安定だというから、むずかしいか。
大学の長い夏休み(夏期休業)の締めくくりとして、秋のススキ野を味わうべく、箱根に一泊した。
泊ったのは、会員として利用できる「グリーンプラザ箱根」。
1人だと広々と使えるツインの部屋(旅館の和室より居住性良し)は、有線放送が使え、好きなジャンルの音楽をかけっぱなしにできるのがいい(この宿のお気に入りポイント)。
たとえば「ヨーデル」を選んで室内に響かせると、窓から見える大涌谷にそびえる鋭峰の冠ヶ岳が緑のマッターホルンに見えてくる。
夕食は、標準よりも安いコースにしたのだが、量(皿数)的には問題なく、揚物がつかない分、カロリー的にはかえってありがたい。
田舎の旅館と違って、飯と漬物の扱いが正しいのも、この問題にうるさい私を安心させる(飯を漬物で食べるのは農民の風習であって、和食の作法ではない)。
さて、チェックアウト時のこと。
支払いを済ませた私は、応対したカウンターの女性に、近くの姥子温泉の湯宿についての情報を求めた。
彼女は、わからなかったため、奥に入ってしばらく出てこなかった。
ガイドブックで調べ、相手の宿に電話して確認をとっていたことがあとで分かった。
でもその情報は私が求めた宿ではなかった。
近くの伝統のある湯で最近営業を再開した所なので、もしかしたら割引券でもあるかなという下心で尋ねただけ。
なので、その気配がないと分かると、私は「じゃいいです」とあっさりしたもの。
さんざん情報を探し回った彼女は「お役に立てず申し訳ありません」と謝った。
カウンターを後にした私は、自分でその宿に行って見ようと、小雨の降る中、歩きはじめる。
広い敷地から道路に出ようとするところで、後ろから私を呼び止める声がした。
ビニール傘をさして駆け寄ってきたのは、さっきのカウンターの女性。
傘をリュックにしまったままの私は、一瞬ビニール傘をサービスでくれるのかと思った。
そうでははく、彼女は、私が尋ねたかった「姥子温泉秀明館」の案内のホームページを印刷して、私に手渡してくれた。
しかも相手先に電話して宿の利用方法を尋ね、ホームページと違う点をペン書で書き足し、それを説明してくれた。
姥子温泉についてはここグリーンプラザにもけっこう問合せがあるらしい(ロープウエイの姥子駅そばだから)。
それについて知らなかったので職務上調べたとも言えるが、
わざわざ印刷して、雨の中、私を追いかけてきてくれたそのサービス精神にはやはり感動する。
「お役に立てたかどうか分かりませんが」と言う彼女に、
その場では、感動を表現できず、通りいっぺんのお礼しか言えなかった。
こうして公開することで、感謝の意としたい。
泊ったのは、会員として利用できる「グリーンプラザ箱根」。
1人だと広々と使えるツインの部屋(旅館の和室より居住性良し)は、有線放送が使え、好きなジャンルの音楽をかけっぱなしにできるのがいい(この宿のお気に入りポイント)。
たとえば「ヨーデル」を選んで室内に響かせると、窓から見える大涌谷にそびえる鋭峰の冠ヶ岳が緑のマッターホルンに見えてくる。
夕食は、標準よりも安いコースにしたのだが、量(皿数)的には問題なく、揚物がつかない分、カロリー的にはかえってありがたい。
田舎の旅館と違って、飯と漬物の扱いが正しいのも、この問題にうるさい私を安心させる(飯を漬物で食べるのは農民の風習であって、和食の作法ではない)。
さて、チェックアウト時のこと。
支払いを済ませた私は、応対したカウンターの女性に、近くの姥子温泉の湯宿についての情報を求めた。
彼女は、わからなかったため、奥に入ってしばらく出てこなかった。
ガイドブックで調べ、相手の宿に電話して確認をとっていたことがあとで分かった。
でもその情報は私が求めた宿ではなかった。
近くの伝統のある湯で最近営業を再開した所なので、もしかしたら割引券でもあるかなという下心で尋ねただけ。
なので、その気配がないと分かると、私は「じゃいいです」とあっさりしたもの。
さんざん情報を探し回った彼女は「お役に立てず申し訳ありません」と謝った。
カウンターを後にした私は、自分でその宿に行って見ようと、小雨の降る中、歩きはじめる。
広い敷地から道路に出ようとするところで、後ろから私を呼び止める声がした。
ビニール傘をさして駆け寄ってきたのは、さっきのカウンターの女性。
傘をリュックにしまったままの私は、一瞬ビニール傘をサービスでくれるのかと思った。
そうでははく、彼女は、私が尋ねたかった「姥子温泉秀明館」の案内のホームページを印刷して、私に手渡してくれた。
しかも相手先に電話して宿の利用方法を尋ね、ホームページと違う点をペン書で書き足し、それを説明してくれた。
姥子温泉についてはここグリーンプラザにもけっこう問合せがあるらしい(ロープウエイの姥子駅そばだから)。
それについて知らなかったので職務上調べたとも言えるが、
わざわざ印刷して、雨の中、私を追いかけてきてくれたそのサービス精神にはやはり感動する。
「お役に立てたかどうか分かりませんが」と言う彼女に、
その場では、感動を表現できず、通りいっぺんのお礼しか言えなかった。
こうして公開することで、感謝の意としたい。
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