今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

東急池上線途中下車の旅

2014年02月23日 | 東京周辺

東京での日曜、カメラを携えてどこか出かけたいが、遠出は面倒。
なので、行きそびれていた都内に絞る。
そこで浮かんだのが大田区の「洗足池」。
別に池には興味はないが、池畔にある勝海舟の墓が気になる。
幕末史の関心ついで、いやなにより江戸を戦火から救い、
首都東京の繁栄の元を勝ち取った、いわば東京の恩人の墓。
詣でないわけにはいかない。

洗足池に行くには、東急池上線に乗り、その名も「洗足池」で降りる。
池上線に乗るなら、ついでに沿線第一の名所であり日蓮宗の本山・本門寺にも行こう。
というわけで、山手線の五反田から、東急池上線の途中下車の旅となった。

東急車両は”玉電”以来個性的で、乗った車両も、首都圏では珍しく端にボックス席があり、しかも2対1の三人掛け。
おかげでボックス席から車窓を眺めることができ、”旅”の気分が高まる。
テレビの「途中下車の旅」なら、まずは「戸越銀座」に降りないわけないだろうが、私は素通りし、「洗足池」で降りる。

駅を降りたら「途中下車の旅」らしく、地元の個性ある食事の店を探す。
駅前に豚骨専門の「道楽」というラーメン屋があったので(他は見当たらず)、そこに入る。
ネギラーメン(800円)を注文すると、出されたどんぶりには細長く切ったネギが山盛りで下の麺が見えないくらい。
少食を旨とする私は、山盛り系のラーメンは遠慮したいのだが、
頼んだ以上食べるしかない。
メンとネギを半々の比率で口に入れ、名実ともに”ネギラーメン”を味わう。
幸い大盛だったのはネギだけなので、カロリー的にも栄養的にも問題なし。
スープも(塩分制限のためほとんど残したものの)おいしかった。

腹を満たしたところで、真向かいの洗足池を一周する。
都内しかも都心部に近い所でこれだけの大きさの池は珍しい
(上野の不忍の池に次ぐ大きさ)。

池には、鴨が遊び、鯉が泳ぎ、
手漕ぎ、足漕ぎ(白鳥型)のボートも漂う(写真)。
池畔の千束八幡神社(頼朝挙兵に由来)で梅の花を撮る。

池の中をよくみると、鯉の口先に大きな蛙がくっついて鯉の頭部を抱えている(写真)。
鯉が冬眠中の蛙にちょっかいでも出したのだろう※。
蛙は身を挺して鯉の口を塞いでいるが、へたに動くと鯉の餌食になる。
それをわかっているのか膠着状態のまま。
見ていても埒が明かない。

※後日知ったことには、これは冬眠明けのねぼけ♂蛙がそこらにいた鯉の頭部を♀蛙だと勘違いして懸命にへばりついてる姿だそうだ。鯉がいい迷惑。

池の最奥部にある勝海舟夫妻の墓はりっぱな2基の五輪塔(写真)。
海舟は池の風景を好み、この地に別邸を設けた。
墓の入口には紅梅が咲き、手向ける花の代わりになってくれる。

さらに池畔を巡ると妙福寺という竹林を備えた日蓮宗寺院がある。
本堂の向拝に彫られた彫刻がすばらしい。
ここには日蓮袈裟掛けの松(今は3代目)があり、
日蓮が足を洗ったという池のほとりに立つ(それ以来、千束池が洗足池に変更)。
本日の日蓮遺跡巡りが、すでにここから始まっていた。

再び池上線に乗って、本門寺のある池上へ向う。
途中、「おんたけさん」という駅があったので、急きょ途中下車。
この思いつきの下車がこの旅の真骨頂。
行き先まで買う切符でなく、フェリカ(Suicaなど)での乗車だからできるワザだ。
なんで降りたかというと、東海道新幹線でこの「おんたけさん」駅脇を毎回通過していたから。
もちろん木曽の御嶽信仰の神社があるはず。

駅前は、いかにも私鉄沿線らしい雑然と賑わう商店街。
「途中下車の旅」なら、あちこちの店をひやかすべきなのだが、ここも素通りする。
その奥に、りっぱな「御嶽神社」の石碑があった。
この神社、御嶽信仰にはめずらしく、教派神道ではなく、神社本庁系に属し、
東京での御嶽信仰の中核でありながら、地元の鎮守も兼ねている。
もともと御嶽信仰は神仏習合と独自神との混合が激しく、それが明治政府の宗教政策によって、
本来の信仰形態が解体され、天孫系の国家神道と独自神の教派神道と天台修験道系に分離させられた。
この神社も江戸時代は仏教寺院であったという。

地元の鎮守でもあるせいか、三々五々参詣する人が絶えない。
ここも本殿の側面の彫刻がすばらしい(文化財申請中だとか)。
ただ、境内の最奥に、一種異様な霊神碑(写真)が並んでいるのは御嶽信仰の特徴(都内ではここだけらしい)。一般参詣者もここまでは足を伸ばさない。
御嶽信仰は、超能力開発の修行とかあって個人的に興味がある。
雰囲気は特異だが、閉鎖的ではなく、周囲との軋轢はない。
だから一般的な鎮守も兼任できるわけだ。

三たび池上線に乗って、池上駅で降りる(運賃は120円と安い)。
池上はさすがに路線名を冠すだけあって、私鉄沿線的商店街よりは規模が大きい。
本門寺の門前町だから歴史が古い。
本門寺は、昔一度来たことあるが、その時は五重の塔(重要文化財)しか興味なかったので、他の記憶がない。
今回は、加藤清正が寄進したという長い石段を登り、高台にある本門寺の世界に入る。
そう、階段の上は日蓮宗の一種独特な雰囲気に満ちている別世界。
ちょっとおおげさに譬えると、ローマ市内にあるバチカン市国のような感じ。
東京でも、増上寺、寛永寺、浅草寺など広い敷地の寺はある。
だがここだけは広い寺域全てが”日蓮大聖人”への崇敬に満ちている。

大坊本行寺(写真)にある日蓮臨終の間に上がった(日蓮が使ったという肘掛けも触った)。
遺体を荼毘にした多宝塔、そして廟所を巡り、
宝物殿(霊宝殿)で、日蓮直筆のヒゲ曼荼羅も見た。

敷地内の両万塚という家康の孫娘の墓に行ったら、
そこには6世紀の古墳と、弥生時代の遺跡もあった。
そもそも本門寺の前身である日蓮最後の地・大坊が地元の豪族池上氏の居館だった。
ここは江戸開府以前から、すでに地域の中心部だったろう。
東京といえども、メジャーな宗派の本山級の寺院はここ本門寺しかない。

門前町で名物という葛餅を家のみやげに買い、
池上駅から、近くの蒲田ではなく遠くの五反田に引き返した
(JRより東急に乗った方が帰途の運賃が安いから)。
カメラの接写の練習もできた。