”共生”を旨とするわが身ながら、どうしても同じ天の下を共有できない、「不倶戴天」の相手がいる。
その天は天井のことで、ひとつ屋根の下に共に居ることはどうしても容認できない。
その相手とは、
ゴキブリ。
昨晩、眠くなったので、いざ眠ろうとしたら、部屋の片隅にゴキブリが這っているのを見てしまった。
見た以上、平常心ではいられない。
全身の血が逆流する。
眠気はいっきょに消えて、戦闘モードに入った。
すでにゴキブリは視界から消えたが、殺虫スプレーを取り出し、居た付近に噴霧する。
幸い、ゴキブリは奥には入らず、手前に出てきた。
そこで箒をとり出し、ゴキブリを箒の先で打ち据えて、裏返しにし、
仰向けになって逃げられない体勢にしたところで、箒で玄関に掃き出し、
さらに玄関を開けて、深夜の戸外に追い出した。
ゴキブリとの同居は断固拒否するが、屋外で勝手に生きる分にはかまわないので、
殺すことはせず、こうして追い出して終りとしている。
翌朝、玄関の外を見たら、いなかったので、どこかに去ったのだろう(もう来るなよ)。
しかし、なんでゴキブリに対して、これほどまでに強い拒否感を覚え、攻撃的に出るのだろう。
思うに、あの卑屈なまでのせせこましい動きが、かえって人間の狩猟本能・攻撃心を解発※してしまうのではないか。 ※:releaseの動物行動学用語としての和訳
ネズミを見つけたネコの状態に。
もしカブトムシのように悠然と動いているなら、こうまで攻撃的にならないのでは…
そういえば、この仮説を支持する経験があった。
以前やはり室内でゴキブリを見つけた。
だが、そのゴキブリ、丸々と太っていて、そのせいか動作が鈍く、障害物を乗り越えるにも苦労している様子。
私が接近しても、せせこましく逃げる様子がない。
私を怖がることもせず、悠然と歩いている。
こうなると、こっちも攻撃心が解発されず、嫌悪感も抱かなくなり、ついにはペットのような親近感すら覚えてしまった。
なので、同居を容認した。
後にも先にもこの1回だけ。
ただ、餌には乏しい環境なので、飼うことはせず、後日室外に解放した。
わが名古屋の孤寓は3階にあるのだが、その程度の高さなら、蚊はもちろん、ゴキブリも侵入可能。
家にいる時、室内に風を通すために、ベランダ側の窓と玄関を開けっ放しにしているのがいけないようだ。
玄関から堂々と入ってくるところを東京の実家でも目撃した。
コイツとは棲み分けがお互いのためだ。