昨日、テレビのお天気番組で、キャスターが「明日は紫外線が強いです」と言った。
気温や(相対)湿度、雨量も風速も具体的な数値で表現しているのに、なんで紫外線は強い/弱いという言語表現なの?
そもそも紫外線が強いってどの程度の現象なの?
実は、風速も雨量も「強い」は定量的に定義されている。
こういう説明が一切ないため、視聴者は紫外線を必要以上に警戒してしまうのではないか。
紫外線は広義には”放射線”の一種(いわゆる放射線とされるX線と可視光線の間の周波数帯の電磁波)なので、人体にもそれなりの影響がある。
日焼け(シミ、シワ)の直接原因だし、白内障の原因の1つともされる。
ただし悪影響だけではなく、皮膚の殺菌作用やビタミンD合成作用もある。
特に後者は貴重で、紫外線が不足だと、免疫力が弱まり、また骨形成に障害(くる病など)をもらたす。
要するに、ここにも「過ぎたるは及ばざるが如し」の法則が該当し、紫外線過敏症でない普通の人が紫外線を完全防御していると、骨粗鬆症になりやすくなる(可視光の防御は睡眠障害・うつ病も招く)。
ということは、防御が必要なのか、そうでないかの判断基準が必要で、そのためには紫外線量は定量的に表現すべき。
残念ながら、お天気キャスターは紫外線の定量的情報をもっていないのだ。
わが「私設:日進気象台」では、愛知県日進市にある大学キャンパスの”有害紫外線量”(UVIndex)を常時観測してネット配信しているので、勤務先のキャンパスでの紫外線量はリアルタイムで把握している。→日進気象台
気温は、春でも30℃を超える場合があるが、地上に届く最大紫外線量は、太陽高度角で決るので、その時の太陽高度角以上の紫外線量には絶対にならず、異常に強くなることは無い(逆に雲などの大気状態で本来の最大値にならないことはよくある)。
すなわちその時期の最大紫外線量は予測可能で、その値に対応すればいいだけ。
4月の時期の紫外線量は、冬至の頃の年間最小値と、夏至の頃の理論的には年間最大値※の中間くらいの値。
※:太陽高度角は夏至の頃が一番高いが、日本の地上での紫外線量は8月が最大になる。上空のオゾン層が薄くなるためである。
さらに太陽高度角は、一日の内でも時間変化するので、毎日の南中時刻付近(約11時半)で日の最大値となる。
紫外線防御の観点では、最大値を気にすればいい。
日最大値は、UVIndexでいうと、冬至の頃は値が2程度で、夏は8程度。
4月の今は5〜6前後になっている(次第に強くなっていく最中)。
観測器販売元のDavis社の解釈指標によると、5〜6は「中程度」。
なので、せめて「明日の紫外線の強さは”中程度”です」というべき(上の理由で晴天日の最大紫外線量の予報は簡単)。
そのくらいの正確さは堅持してほしい。
ちなみに、今の時期でも快晴で気温が高いと、日差しを”強く”感じる。
この”強い日差し感”は、高い気温に付加される太陽の赤外線放射による皮膚の昇温によるもので、紫外線の強さを意味しない(赤外線は見ることはできないが熱として感じることはできる)。
なぜなら紫外線は他の放射線と同じく、その強弱を人はまったく感じることができないから(放射線の恐ろしさは、この点にある)。
だからなおさら、測定値に基づく正しい情報を提供すべきである。
福島原発事故当時と同様、愚かしい過剰反応(曇天での完全防御など)を抑制させたい。