大谷選手の通訳・水原一平氏がギャンブルにハマって、負けが6億8千万円に達していた。
ギャンブルで負けが続くと、その負けを一挙に回収しようと、より大胆(ハイリスク・ハイリターン)な賭けに手を出す(その結果、負けの桁数が雪だるま式に増える)ことが行動経済学(人の経済行動を心理学的手法で実験する分野)でも実証されている。
彼の行動は行動経済学の説明通りだ。
ギャンブル依存症は、ギャンブルにおけるリターンしか目に入らない。
言い換えればリスク(損失の可能性)、さらにすでに確定した損失の総計も鈍感になっている。
そして金額の桁が大きくなるほど、金の出入り自体に鈍感になるのも行動経済学で確認されている。
通常では、人は損失の方に敏感になっている(行動経済学で「損失回避」という)。
すなわち、1万円得た時より、1万円失った時の方が心に響く(喜びの度合い<ショックの度合い)。
ギャングブルは客観的・積算的には、胴元が得をし、参加者は損をする仕組みだから、
たいていの人は、興味本位に手を出しても、まず損を経験するから、損失回避の心理によって早々に手を引く。
私もその1人で、結局は、宝くじを含めて、ギャンブルに手を出すこと自体が損だと認識している※。
実際、ギャンブル好きに金持ちはいないし、現実の金持ちはギャンブルに手を出さない。
なので、本気で裕福になりたい・資産を形成したい人は、ギャンブルに手を出さないし、
逆にギャンブルにハマっている人は、資産形成が目的ではない。
別の理由だ。
残念ながら、損失回避と矛盾する心理も人に存在する。
宝くじを買った場合に誰もが経験する、結果が出るまでのワクワク感だ。
ほとんどあり得ないリターンの可能性が有る(未決定)状態に固有に感じるあれ。
この固有のワクワク感が、ギャンブルでしか得られないなら、
損を承知でそれにハマっていく(=リターンしか目に入らない)。
同様な現象が、アルコール・万引き・痴漢等の行為にも存在しうる(薬物は少し別)。
すなわち心理的快感の誘惑。
これにハマると、損失回避が二の次になり、上述した一挙の損失回復をすればいいという心理になる。
これを防止するには、損失回避のメンタリティが有効な段階で手を引くのが一番だ。
その段階で下手に儲かったりすると、逆にハマってしまうから要注意。
そのためには、家計(出入り)を細かく認識しているとよい(小さな損に敏感な段階で実行しやすい)。
あるいは行動経済学を勉強するのも、”平気で損する人生”から脱却できるだろう。
※:宝くじを1枚(300円)だけ買うと、たいてい(9/10の確率で)300円丸々損する。10枚(3000円)セットで買うと、損は2700円となる。すなわち損の比率が減った(期待値は同じ)。すると、宝くじをたくさん買うほど、当たる確率は増えるので、損する割合は減っていく※※。この理由で宝くじをたくさん買う人が出てくる。損する金額の桁自体は増えているのに。
※※:この記述について疑義のコメントをいただいたので、この記述が宝くじのコンピュータシミュレーションに基づいていることを右のリンクに示す→年末ジャンボ宝くじの神聖シミュレーション結果
宝くじを100枚買と、1枚買うより当たる確率は確かに100倍になる※※※。
だがこの100倍は、10の-10乗が、10の-8乗になったに過ぎない(小数点以下の微細な変動)。
※※※:この表現は確率論として正しくなかった。サイコロを6回振れば1が出る確率は1/6の6倍=1にならない。1-(当たらない確率**100) という式になる :**は累乗