日本人が歴史的に構築した究極的な人間モデルの1つである「武士(サムライ)」。
明治以降、日本社会自体が、その実現を不可能にしたものの、すなわち社会階級としての武士は歴史的に絶滅したものの、いまだに時空を超えた人間モデルに値することが証明された。
その証明に尽力したのが真田広之である。
「たそがれ清兵衛」、「ラストサムライ」などで武士を演じてきた彼は、かつての三船敏郎を継いで、現代世界で武士を表現してきた。
その努力が実ったことを心から慶びたい。
彼のおかげで武士の心を世界で共有できるから。
ちなみに、小笠原流礼法という武家礼法を嗜んでいる私は、刀を持たず(人を斬らず、切腹をせず)とも、日常の起居進退において武士であることを実現できると思っている。
むしろそれこそが、廃刀令以降の日本人が現実に実現できる武士の在り方だと思っている。
階級や職能、あるいは身なり(ファッション)としての武士は過去の遺物だが、人間モデルとしての武士を、リアルに生きることは可能だ。
ただ、武士は特定他者(主君)との関係性を前提とする相対的存在である点で、究極の存在ではない。
すなわち、私が日常でそれ的に生きても、それが生きる目標であるわけではない。
話が逸れてしまった。
改めて、『SHOGUN』のエミー賞受賞を心から慶ぶ。
おめでとう。そして、ありがとう。