今回の新幹線内での殺傷事件以降、私の過去の記事「刃物を持っていそうな者と対峙したら」のアクセスが増えているが、今回の事例はその記事内容では対応不能である。
なぜなら持っている刃物が刃渡り30cmの鉈(ナタ)であるため、
八寸(25cm程度)の鉄扇程度では対応できないから。
なので改めてシミュレーションする必要がある。
(私も中学生の時、登山用に携行していた)鉈は、木の枝を削ぎ落とすために、
上から降り下ろして使うもので、刃渡りがこれだけあると薪割りにも使えそう。
すなわち人間の脳天を一撃で砕く破壊力がある。
今回の事件で、座席のシートを楯代わりにできることを知ったが、
降り下ろされる鉈には抵抗できまい。
実際、素手で一人で対抗できるものでないことが示されてしまった。
鉈の弱点を考えてみよう。
鉈は上から降り下ろすだけで、突き刺す・投げ刺すという攻撃はできない。
なので持ち手との間合いを充分にとっていれば大丈夫だし、
振りかぶる動作が常に先行し(予測可能)、降り下ろした時に必ず隙(スキ)が発生する。
このような鉈の攻撃を防ぐには、動線を遮ることのできる長く硬い金属棒が有効であるが、
新幹線乗客の身の回りには存在しないだろう(傘、杖はもちろん伸縮警棒でもダメ)。
考えられるとすれば、車両ごとに設置してある消火器だ
(ただし実際に設置してあるモノは未確認なので、普通の小型消火器を前提にする)。
→※最下段に追加
まず消火器を相手の顔めがけて噴霧し、目くらましに使い、呼吸困難にする(新幹線内でのガソリン放火事件でもこの消火器1つで消火できるだけの噴霧量がある)。
あるいは持ち手を狙えば鉈が落ちるか、手が濡れて鉈を握れなくなるし、足を狙って突進を抑え、滑らせることも可。
消火液を出しきったら、空の消火器を縦に掴んで防御に使う。
消火器は高圧の内部に耐えられる頑丈な外身で、重いのが欠点だが、
中身がない分少しは軽くなっている。
(お勧めしないが、もし反撃を試みるなら、鉈を降り下ろした直後のその手を上から狙う)。
できれば、噴霧中に同じ車両から乗客をすべて逃がし、
乗務員によって前後から車両に閉じこめる(自動ドアのロック)。
鉈でドアのガラスを破壊することも可能かもしれないが(昔の映画『シャイニング』を思い出す)、手間がかかるので、最寄駅に緊急停車するまでの時間をかせげる。
くれぐれも捕獲は試みず、それは訓練された警察にまかせる。
確信犯的に刃物を振りかざす者は、必ず予備の刃物を隠し持っているので、
制圧したと思っても安心してはならない(むやみな反撃をお勧めしない理由の1つ)。
以上のシミュレーションを頭の片隅に入れておくだけでも、現実対応が異なると思う。
※新幹線に乗って確認したところ、
各車両のデッキに設置してある消火器は住宅用より大きい中型だった。
簡単には振り回せないが、防御には心強く、また噴霧の勢いが強く、時間も長い。
相手への噴霧が終ったら(できたら消火器を取り換えて連続噴霧、
あるいは座席に沿って横に展開して、多方面から一斉噴霧)、本体のグリップを握って、
筒下を他の手で支え、相手に底面を向けて構える(軽々しく突進しない)。
ちなみに、留め具で固定されているので外す作業を忘れずに。
車両の連結部に六角レンチで外れる金属ポールもあるが、
レンチを携帯しないし、外す手間がかかる。
やはり消火器しかない。