北海道は人口密度の非常に低い所である。
昭和の時代、鉄道はその存続が難しくなり、沢山の路線が廃止になった。
なのでそんな廃線跡に類する遺構が結構ある。
国道273号沿いの音更川に掛けられた士幌線のアーチ橋が沢山残っているとのことで、廃墟萌えすべく幾つか見学した。
<第三音更川橋梁>
橋は国道横にあるものがほとんどだが、一番の見所であるタウシュベツ川橋梁はちょいと離れており、近くで見るにはゲートが閉じられている林道の通行許可を役所で得るか、現地のガイドセンターの見学ツアー(有料)に参加するか、大まかにはその二つしかない。
国道沿いに展望台があって遠くからなら見れるようだが、せっかくの機会なので間近まで行くことにした。
よりめんどくさくない後者の方法を選択。
以下はツアーの説明、または事前に得た情報から。
<タウシュベツ川橋梁>
タウシュベツ川橋梁は糠平湖というダム湖の湖底にある。
なので水底に沈んだり現れたりする。
一年で橋の周りの状況が劇的に変わり、いろんな表情を見ることができる。
ネット上にはそんな写真が沢山アップされていて、かっちょいい。
その大きさに意識は向いていなかった筈だが、実物を見た第一印象は「小さいな」だった。
単線で汽車が走れる幅があるだけの細長い通路だ。
ローマなんかにある古代の石造りの橋のようなので、勝手に大きな橋だと受け止めていたようだ。
小さく見えたのは今はほとんどが水に沈んでいるためでもあるらしい。
橋脚の長さは10mほどあるので、水が無い時は湖底から見上げられ、大きく見えるらしい。
<歳月>
士幌線の他のアーチ橋と構造は基本同じで掛けられた年代も同じ筈だが、タウシュベツ川橋梁だけ表面がいい感じでボロボロである。
なぜそんな差があるのかツアーの説明を聞いて合点した。
湖は水力発電用の人造湖で、春から秋にかけて水を貯め、電力消費量が大きくなる寒い冬に放出して発電する。
なので春は水が枯れ橋の全体が現れ、秋に向けて水中に没して行く。
北海道なんで冬はとても寒く湖の表面は氷結。
その状態で氷の下の水を抜くので、水面(氷面)が下がり氷が橋を削ることになる。
これが毎年繰り返されてきた訳だ。
水も固体となると短時間でコンクリートを破壊できるようだ。
<橋梁へと向かう廃線跡>
北海道は20年弱?くらいの周期でまずまず大きな地震に襲われるそうで、13年前の十勝沖地震で橋の一部が崩落したそうである。
それも水中に没していたのに壊れたらしく、それだけ腐蝕が進んでいるということで、次に大きな地震が来たら全てのアーチが繋がった今の状態は崩れ去るのではと不安視されている。
<幌加駅>
遺構はアーチ橋だけでなく駅もある。
駅舎はなく、ホームとレールが残っている。
レールがあるとより廃線跡らしい。
駅名の表示板は復刻したもの。
辺りはフキとルピナスに覆われ、すっかり林に飲み込まれている。
当時の街の名残はコンクリートの建物の土台くらい。
駅前にはロータリーがあり商店も営業していたという。
すごい変わりようだ。
里山なんかに高速道路を建設するなんて工事が始まると、なにやらさみしくその光景を眺めるのだが、過去にあった人の営みの跡が自然に還って行くのを見るのもなにやらさみしい。
変化というのは何かしらの感慨を人に与えるものらしい。
<第二音更川陸橋>
ガイドツアーなんて参加するのは初めてだった。
説明を聞いて廻るなんて観光施設の無料ガイドツアーくらいだ。
時間は自由にはならないが、見学対象そのものの説明はもちろん、その周辺の話題も聞けるのでなかなか面白いものだった。
機会があればまた参加を積極的に検討してもよいな。