高滝駅にて

2016-04-14 23:53:39 | その他旅行き
先週はずっと、街を離れ人のいない開けた空間で、身体の力を抜いて静かに過ごす時間に憧れ、日々を過ごした。
週末のお天気は幸いにして行楽日和。
遊び先として人口密度の低い所を検討。
西の山の方に行けば比較的近く田舎はあったのだろうけど、標高を上げると折角の暖かい日に寒さを感じてしまう。
服装軽く心も軽く過ごしたい。
次に近い所でそんな条件を満たしてくれる所はやっぱり房総か。
昔見た房総半島を走るローカル線の写真を思い出した。
無人駅のベンチでたまに通過する年代物の気動車を眺めるのがいいかも。



てことで、小湊鉄道を訪れる事にした。
JR内房線で小湊鉄道の連絡駅である五井駅へと向かいつつ、どの無人駅で過ごすか検討。
ネットで小湊鉄道各駅の最寄りの見所なんかを調べて、高滝駅に決定。
往復乗車券で割引対象の駅だったのも理由のひとつ。
片道920円が往復1400円だ。



五井駅に到着し乗換えの改札に行くと、なんと切符を買う行列ができていた。
うわあ、大人気じゃないすか。
改札前でお弁当など売ってるお母さんからおはぎを買いつつ並ぶことしばし、ようやく順番が来て往復切符を購入。
ホームに降りると、肌色と橙色ツートンの気動車がカラカラとエンジン音を響かせ待っていた。
おー、よろしいなあ。
車内は座席が埋まり、吊革につかまり立っている人もその半数くらい。
小湊鉄道さん、なかなか頑張ってます。



時刻が来て出発。
記憶にある気動車のより軽やかに走りだした。
いつも思うけど、ローカル線の古い車両がレールを叩く音は、なんでか都会を走る電車の音とは違う。
枕木が木製かコンクリート製かの違いだろうか。
あるいは車体の成分の違いなのか。
昔懐かしい音である。



キュウキュウと車体の軋む音をBGMに、大きく揺れる足元を踏みしめ、車窓の景色を眺めた。
五井の市街地はすぐに抜け、田んぼが広がるのどかな田園地帯を列車は行く。
空は春霞。
田んぼは田植えの準備に水が張られ、葉っぱの出だした桜がそこここで花びらを舞わせていた。
思い描いた春の日である。



目的地の高滝駅まで約40分。
列車を降りると、駅の選択を誤った事を知った。
撮り鉄する人多数。
一般観光客の方もいる。
駅前の小さな広場には車が数台止めてあり、出迎え以外に鉄道利用せず駅に寄る人もいたようだ。
理由はホームの対岸に咲く桜が目当てみたい。
昔使われていたらしいホーム?の上は草が覆い、桜が何本も連なって植わっていた。
桜を見に来た家族、桜と鉄道を合わせて撮ろうと企むアマチュアカメラマンが、ホームや駅周辺からなかなか去らなかった。



残念ながら静かに過ごすこと能わず。
それでも思わぬ花見をすることができた。
ホームのベンチに座り、桜の花を目の前に、昼食に買ってきたおはぎを食べた。
舞い散る桜花が白かった。
駅周辺には桜だけでなく、菜の花もたくさん植わり、黄色い花を風に揺らしていた。
菜の花ももう終わりかけ。
花の密度は低く、種を仕込んだ鞘が目立ちつつあった。



時刻表を調べると、そろそろトロッコ列車が通過する時刻のようだ。
それもあって人が多いのか。
折角だから私も撮影してやろうとベンチを立って駅周辺の撮影ポイントを探した。
トロッコ列車は汽車の形を模したディーゼル機関車が、4両のオープンエアの客車を引く編成だった。
なかなか雰囲気だしててよろしいな。
踏切横で、座席から身を乗り出し手を振る子供たちに手を振りかえし、後ろ姿を見送った。
もうしばし駅の周りを撮影し、駅のホームのベンチへ戻った。



しばらく列車到着の間隔が空いた時間帯、ようやくホーム上から人がいなくなった。
桜並木の向こうの田んぼからカエルの声が聞こえる。
鳥のさえずりが折り重なって耳に届く。
モンシロチョウが菜の花を渡り舞う。
のどかだなあ。
後ろの壁にもたれ、少し眠った。



ローカル線を訪れたら、駅間を歩き、適当なポイントで撮影しては移動して、といつもなら忙しく歩き回るのだが、今回は第一目的が違うので、高滝駅から遠く離れることなく時を使った。
近くの公園を訪れるつもりだったがそれもやめた。
まずまず目的を果たせたかな。
日が暮れて寒くなる前に、早めに帰ることにした。
今度同じ目的で来る時は別の駅を選択しよう。

…今回の写真は、全て高滝駅を飾る周辺構成物。