イカナゴ(玉筋魚)・コウナゴ(小女子)
【語源】
何の子供(稚魚)であるか解らないので「いかなる魚の子なりや」
と言われたところからきたという説が有力です。
漢字では「玉筋魚(イカナゴ)」と書きます。
これは群れている様が「玉」で、姿が「筋」、群れをなす細い魚を
表しています。中国でも同じ表記。
イカナゴの一夜干し
別名、小女子(こうなご)、加末須古(かますご)などと呼ばれ、
『和漢三才図会』(江戸時代)には「背が青く、形がカマスに似て
いると説明され『玉筋魚』と書いて俗に「以加奈古」あるいは
「加末須古」(かますご)と呼んでいる」と記されています。
成魚では女郎人(めろうど)、古背(ふるせ)、大女子(おおなご)
などと呼ぶ地方もあります。
英名は「SandLance」~「砂槍」です。
【旬】
晩秋から冬にかけて生まれた3~4ヶ月の稚魚を新子(しんこ)と
呼び、瀬戸内海では2月末から5月頃までの、体長3cm前後が
最もうまいと言われています。
この頃獲れた鮮度のよい物を、瀬戸内の家々では「くぎ煮」と言う
佃煮にするのが、春の風物詩となっています。
北海道では3ヶ月遅れが旬ですが、イカナゴの旬は文句なく春と
いえるでしょう。
マグロ君の母も毎年、くぎ煮~作ってますよ~。
干したイカナゴ
【うんちく】
イカナゴはスズキ目イカナゴ科に分類され、世界に約20種、日本
近海には2種が分布しています。
北海道から瀬戸内海にかけての内湾の砂泥底が住みかです。
特に多いのは播磨灘(兵庫県)、大阪湾、三陸、青森です。
体長が約3cmになるまでは、細くて透明なシラス型で浮遊生活を
送り、7~8cmになると、内湾や沿岸の砂底で底生生活に入ります。
塩分濃度や水温などの違う、二つの海水が接する潮目に群れを作り
ます。
寿命は瀬戸内海では2~3年、北海道では6年以上で、瀬戸内では
14㌢程度まで成長し、北海道では25㌢にまで成長します。
北海道の魚売場で、稀にこの大きくなったコウナゴの干物を目に
する事もありますよ~
【イカナゴ漁】
イカナゴ漁は資源保護のため、特有の規制があります。
成魚漁は産卵を終えたことを確認して1月下旬に解禁されます。
主役の当年生まれの新子(幼魚)漁は、成育状況や分布状況が調査
された上で3月頃から解禁されます。
もちろん漁獲量は厳しく制限されていますし漁期はきわめて短期間。
また、魚獲されたイカナゴを全速力で港まで運搬します。
イカナゴ漁は、時間との勝負なのです。
新子はまだ体力が備わっていないため、鮮度落ちが非常に速い魚。
釘煮を美味しく炊くための必須条件は鮮度なのです。
それも死後3時間以内に釜に入れなければ、特上の釘煮ができないと
言われるので、目の色を変えて時間と戦うのです。
干し小女子(コウナゴ)
【ブランド・産地】
ブランド化はされていません。しかし、地域限定で春の風物詩と
されているこの魚は、ある意味ブランドと言っても良いのかも?
全国で約10万㌧の水揚があり、マグロ君の故郷、兵庫がその3割を
占めダントツの日本一です。ついで、香川、大阪、岡山と続きます。
これら、瀬戸内地域で水揚されたイカナゴの大半は「くぎ煮」で
食されます。
一方、三陸地方では、瀬戸内海の1ヶ月遅れに漁が始まり、
「女郎人(めろうど)」と呼ばれる成魚が、すくい網漁という独特の
漁法で漁獲され、刺身や干物としても食されます。
次いで4~5月にはコウナゴと呼ばれる幼魚漁が行われます。
イカナゴは、三陸に置いても春告げ魚なのですよ~。
いかなごの吸い物
【産地ならではの漁師料理】
イカナゴの代表的料理はなんと言っても「くぎ煮」です。
瀬戸内では、各家庭特有の味付けがあり、春先、大量に作り、
親類縁者におすそ分けする風習があります。
生姜や山椒などを使い、砂糖、醤油、味醂、ザラメ等で甘辛く
煮ていきます。
もう一つは釜揚げ。獲れたてのイカナゴをたっぷりのお湯で煮上げ、
食します。ご飯にもピッタリ~。しかし、足が速いため、流通時は
これを乾燥させ、ちりめんにします。この商品はイカナゴではなく、
「小女子(コウナゴ)」の名のほうが通っているようですね。
釜揚げは、まさに産地の特権なのです。
かき揚げ、吸い物などでも美味しいですよ~
イカナゴの釘煮(くぎに)
【くぎ煮の歴史】
昭和25年頃、兵庫県明石市の県立水産試験場で佃煮を作っていま
した。
砂糖と醤油だけの従来の製法に水飴を加え、甘味のある独自の味を
開発し、その色艶から「紅梅煮」と呼んでいました。
噂を聞きつけた近所の主婦達がそれを買いにきましたが、役所は融通
が利かず、たとえ少量でも分けるとなると、住所氏名を明らかにして
、受領の認印が必要だったそうで、苦情が殺到したそうです。
それなら、調理法を伝授して各家庭で作ってもらえば文句は出ない
だろうということになり、早速講習会を開いたそうです。
その時の指導で「手順を間違えると折れ曲がって『くぎ煮』になり
ますよ」と注意を与えたのが『くぎ煮』という名の由来です。
役所生まれの『くぎ煮』は家庭の味として広まり、現在では瀬戸内の
家々の秘伝の味となり、早春にはなくてはならない風物詩となって
います。
イカナゴの釜茹で
【栄養と効果・健康】
極めて栄養化の高い魚です。
たんぱく質の量は豚肉に等しいですが、脂肪は少ないと言う優れ
もの。
ビタミン・ミネラルも豊富で、カルシウム・リン・鉄分を多く
含んでいます。
また、ビタミンではDが豊富。
骨を強くするカルシウム・リン・ビタミンDを兼ね備えていますので
骨粗鬆症の方、育ち盛りのお子様には最適な食材です。
その他、目に良いビタミンA、DHAやEPAも豊富に含んでいます。
但し、ナトリウムも多いので高血圧の方は注意が必要。
内臓もすべて食すので、ややコレステロールも多目です。
痛風の方は注意が必要でしょう。
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