さて、全寮制の高等学校である。
学年別の風呂がある訳がない。
まして修学旅行のように、入浴の時間帯が分かれている訳でもない。
風呂に入るのは3年生が先なのは当たり前である。
その次に2年生。
そしてシンガリは1年生である。
つまり自分たちが入る時には先輩方はすでに入っていらっしゃるのである。
部活を終えて、風呂に向かうゆきたんくである。
脱衣場に入ると、風呂場の方が賑やかだ。
「さとう さとう (仮名)」の大合唱である。
ジャポーン!
大きな音がする。る
バシャ、バシャ、バシャ、バシャ・・・
泳いでいるような音がする。
「まさかな・・・」
音がやんだ。
そのタイミングで浴場に入って行ったゆきたんくである。
高校の湯船は、銭湯の湯船の4倍の大きさがあった。
その湯船の周りを先輩が取り囲んでいるように座っている。
そばにぐったりとした同級生が座っている。
先輩方の目が自分の方に集まった。
ゆきたんくはその時悟ったのだが、時すでに遅しだった。
先輩の声が風呂場に響く。
「第一のコース、1棟16室〇〇〇君!」
とゆきたんくの名前が呼ばれたのである。
男子水泳個人メドレーの選手に抜擢された瞬間であった。
モントリオール・オリンピック(1976年)の年の話である。
次回も風呂ネタ。「きれない泡」