最初に書き始めた『YAMATO』では、産みの苦しみを味わった。
絞り出した言葉が、大学ノート1冊分に及ぶのは常だが、
いつもの「言葉が降りてくる」瞬間がない。
「10代の少年兵たちは、つかの間の自由の中で、満天の星空を眺めたり、
仲間と一晩中、語り明かしたりしていたんじゃないか」
無垢な気持ちを想像した瞬間、
「キラキラ光る、流星の群れ」
という言葉が舞い降り、一気に書き上げた。
「『長渕が、俺達の気持ちを歌ってくれる』
と、少年兵達が後押ししてくれた気がする。
天から言霊が降りてきた。
鳥肌が立ち、涙が止まらなかったのは、初めて」
誕生した2つのバラード。
『CLOSE YOUR EYES』の出だし、
「それでも、この国を たまらなく 愛しているから」を
角川・氏に電話で伝えると、受話器の向こうから、涙声が聞こえたという。
「時代は変われど、愛を貫き通す大切さは普遍。
究極の愛の歌になった」
と手応えも感じている。
歌詞カードは、英語、韓国語、北京語の訳を付けた。
日本の歌手は、愛に対してこう歌っているよ、という長渕なりの表明。
ビジュアル写真に配したのは、日の丸。
「日の丸は、母親、家族、友達といった自分の原風景。
自分自身の足元を愛せない人が、他国の人のことを、どうこう言えないから」
昨年、人生を懸けた桜島オールナイト・ライブを成功させた。
十月からは、『YAMATO』と題した全国ツアーをスタートさせる。
「今回『YAMATO』に関わったことで、これまでの曲を、
違う歌として歌える」
確かな自信か、目に宿っていた。
映画『男たちの大和 YAMATO』は、戦艦大和の乗組員達の壮絶な生き様を描いたノンフィクション大作。
原作は、辺見じゅんさんの『男たちの大和』。
俳優の中村獅童(32歳)、反町隆史(31歳)が主演するほか、
渡哲也(63歳)や鈴木京香(37歳)等が出演。
以上、スポーツ報知の新聞記事の全文である。
私の手元に1冊の本がある。
『長渕剛 詩集』である。
1988年に発売され、デビューから『NEVER CHANGE』までの作詞を全て網羅した作品集である。
私が購入した理由は、多分、この直前に、彼のCDを聴いて、感心を持った為と思われる。
横浜アリーナのライブ・コンサートを収めた『長渕剛 LIVE’89』の二枚組みであった。
特にこの中で『昭和』は、この時期、昭和時代を切り取った名曲である。
私はこの名曲を少なくとも百回以上聴いている。
それだけ、色々な意味でこの曲から、私は影響を受けた。
『昭和』
詩・曲 長渕 剛
♪傷つけば傷つくほど優しくなれた
貧しさは大きな力になり
意気地のなさは勇気に変わり
ひねた瞳は真実を欲しがる
真実はとてつもなく激しかった
愛せば愛するほど苦しくなる
はかなさが美しいから
死にたくてもまた歩いた
俺はいま真夜中の湾岸をとばしている
カーラジオ消して受話器を耳にかたむける
進路は東へとお前の声を聞きながら走る
とうとう昭和の歴史が終わった
悲しめば悲しむほど想いやれた
悔しさは大きな力になり
力はいつしか詩になる
許せないのは自分となる
俺はいま受話器を静かに置いた
ああ吹きすさぶ強く冷たい風に抱かれたい
夜明け前の街が確かに動き始めてる
とうとう昭和の歴史は終わった
夜明け前の街が確かに動き始めてる
とうとう昭和の歴史が終わった
私はその後、色々と音楽を聴いたりしているが、
やはりこの曲は、私のこれまでのベスト3に入っている。