☆「年のせい」にすると手遅れになる

認知症の人の数がますます増えている。
厚生労働省の研究班の試算では、2025年には730万人に達する。
急増の理由は、高齢者が多くなったからだけではない。

認知症になる人の割合が増えているのだ。
65歳以上の5人に1人がなってしまう。

「放っておくと、2060年には1000万人を突破します。
自分自身だけでなく、奥さんや両方の親を含めると6人になりますから、
そのうちの誰が認知症になってもおかしくありません。

いや、むしろなると覚悟したほうがいいでしょう」

そう話すのは、NHKのチーフ・ディレクターとして、医療の最前線を取材する青柳由則氏。
この6年あまり、認知症をテーマに世界中の研究者や医師を訪ね、「NHKスペシャル」などで取り上げてきた。

番組制作を通して、驚くべきことがわかった。
根本的な治療法はないとされている認知症も、
予防と早期発見で従来の生活を維持できるという事実だ。

ポイントはMCI(軽度認知障害)と名づけられた認知症の一歩手前の段階である。
ここで気がつき、適切に対処できれば進行を抑え、場合によっては正常レベルに回復するという。

「私が使わないようにしている言葉があります。
それは『年のせい』です。

もの忘れが、ひどくなったとか、動きが緩慢になったと感じたら、
年齢を理由に『仕方ない』とあきらめるのではなく、MCI(軽度認知障害)を疑ってください。
そうでないと、取り返しのつかないことになってしまいます」(青柳氏)