その日暮らし

田舎に暮らすこの虫は「カネ、カネ、カネ」と鳴くという。

雲と自由が棲むという里で百姓に成りきれるかな?

青いりんご

2009-08-28 12:43:21 | 暮らし
『青いりんご』というフレーズから「野口五郎さん」を思い浮かべる人は、それなりに歳を重ねられた方でありましょう。「青い」「蒼い」「碧い」という言葉を並べてみますが、『あおいりんご』にぴったり当てはまる「あおい」という漢字(感じ)は無いような気がします。この場合の「青い」は、未熟なという意味合いで使われる「青」でしょうし、甘酸っぱい『青リンゴ』は、どこかに置き忘れてきた『初恋』などという想い出につながるような気もします。
我が家の庭には昔、「夏りんご」「秋りんご」の2本の木が植えてありました。「夏りんご」は、おそらく『祝』という品種であろうと思われるのですが定かではありません。7月の下旬には、薄緑色の実の硬い青いりんごと、少々縞模様の赤の入った赤いりんごが同時に実を着けました。赤いりんごは、甘いのですが、実がスカスカで子ども心にも美味しいとは思わず、青いりんごを選んで食べていました。夏休みの暑い午後には、とっておきの「おやつ」だった記憶があります。もう市場に出回る事もなく、郷愁の一部でもあります。
           
田舎暮らしをしていても、次第に失われて行くものはあります。我が家の畑からも、時代とともに色々なものが消えていきました。「毛糸」や「乳」を提供してくれる羊と山羊が消え、りんごやさくらんぼの木は老木となり切り倒されました。「赤すもも」や和梨の木が無くなり、ほうずきや夏グミ、スグリも畑から消えました。時代の変化と食味の向上…もう一度食べてみたいなどと思っても、それはノスタルジーであって、実際に食べてみても、さほど美味しく感じない。思い出とはその程度のものかもしれません。いつの間にか、味覚や視覚の一部だけが、極端に増幅されて美化されたまま記憶のポケットに仕舞い込まれているだけかもしれません。
『青いリンゴを抱きしめても 思い出さえ帰らない♪ 涙なみだの海にいま ぼくは深く沈もう♪』
え~い…勝手に沈んでな。
あれっ、そう言えば「野口五郎さん」って、どこまで沈んでしまったのでしょうか?
コメント
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