9月11日、カテゴリー4の巨大ハリケーン・イルマが、キューバを破壊しフロリダを水没させた。
カリブ海のハリケーンも、インド洋のサイクロンも、そして太平洋の台風も、加速する温暖化でスーパー化の一途を辿っている。
フロリダ……昔、アトランタで仕事していた次女の招待で訪ねたことがあった。有名なセブンマイル・ブリッジを経て、フロリダキーズ(オーバーシーズ・ハイウェイ)を走り抜けて、アメリカ本土最南端・国道US1号線の起点キーウェストに残るアーネスト・ヘミングウェイの家を訪れたり、カリブ海クルーズを楽しんだりした想い出の地だが、もう遥か遠い異国の記憶になってしまった。
そんなハリケーンのひとつが、メキシコ・バハカリフォルニア半島最南端のカボ・サン・ルーカスにまで影響を及ぼしているとは思いもしなかった。ロサンゼルスから空路2時間余り、度々訪れた懐かしい地である。ダイビングや、荒野を疾駆するサンドバギーなどを楽しみ、日の出と日没をビーチから眺め、鯨のブリーチングを間近に見て感動し、プールサイドではバナナ・マルガリータに心地よく酔った。いつもダイビングの面倒を見てくれたのが、ダイビングショップ「Deep Blue」のオスカルさんと幸子さんご夫妻だった。
安否を心配して打った娘のメールに、幸子さんから返事が来た。
「マサさん、トモコさん、こんにちは。ご無沙汰していますが、お元気ですか?
ご心配いただいてありがとうございます。トロピカルストームだったんですが、ほぼカボ直撃でした。
風よりも雨がすごくて、家の中にもたくさん入ってきましたが、我が家は、その他は大丈夫でした。
停電も今日の午後には復旧したので、家は普通通りです。
町は、道路の復旧作業で大忙しです。場所によっては、被害の大きいところもあるようですが、今日は、お 店をチェックしに行っただけなので、どんな被害が出ているのかは、Facebook情報でしかわかっいません。
応援部隊も来ているようなので、大丈夫だと思います。どうもありがとうございました」
滅多に雨が降らない乾燥地帯である。そこに大雨が降った。信じられない異常気象だった。
その娘婿のマサ君は、アメリカでダイビングとゴルフのインストラクターをやっている。そのマサ君が9月2日の新聞のスポーツ欄に突然登場して驚いた。畑岡奈紗と拳タッチをしているツーショットである。共同通信社の配信だから、おそらく全国の新聞紙面を飾ったことだろう。今年春から、彼は畑岡奈紗の総合マネージャー兼キャディーを務めている。
昨年10月の日本女子オープンで初優勝を飾り、史上初のアマチュア優勝、17歳で宮里藍の最年少優勝記録(20歳)を大幅に更新し、日本女子プロゴルファー公式戦最年少記録まで更新してプロに転向、日本人選手史上最年少の17歳で、2017年度米国女子ツアー(LPGA)出場権を獲得してアメリカに渡った。
LPGAで序盤苦戦が続き予選落ちを重ねたが、引退宣言をした宮里藍のアメリカ本土最終戦オレゴン州でのキャンビア ポートランドクラシックで通算10アンダーの15位となり、5位タイで終えた宮里藍に花を添えた。この試合からキャディーのマサ君が度々テレビ中継に登場する。
翌週のインディアナ州インディ女子インテックでは、残念ながらイーブンパーの69位タイで終わり、来年度の再起を期することになった。
LPGAは時差との闘いでもある。ポートランドでの最終日が終わって、シャワー浴びてそのままRed Eyeでインディアナポリス向かって、着いてそのまま36ホール周って練習したという。
寝不足で赤い目をしたまま行動することを、アメリカではRed Eyeという。
遠い異国が、思いがけない出来事で身近に還ってくる。ツアーでは決して味わえない滞在型の思い出をいっぱいもらったアメリカとメキシコ……もう訪れることも叶わない遠い遠い異国である。
(2017年9月:写真:カボ・ランズエンドの夕映え)