雲ひとつない青空に長浜の町はもう連休が来たようににぎわっている。連休はどうなることやら。せめて連休に、ちょっと一息温泉にでも と思ったが宿はもう取れない。静かに身辺整理に徹することにした。今日は、井上靖の「星と祭」の復刊プロジェクト、医王寺(木之本)の木造11面観音立像の解説、拝顔のイベントに参加してきた。「星と祭」に登場する観音様を、その小説部分の朗読と講演し、そして拝顔する企画だ。長浜の広報に出ていたのだが、なぜか急に気になって出かけた。だれに聞いたのか定かではないが、井上靖の「星とまつり」は湖北を訪れるきっかけになった本だ。
「逆縁」で琵琶湖で娘を亡くした父親が、滋賀県各地の十一面観音を巡り、次第に心の平安を取り戻していくという物語だ。今回の医王寺は北陸本線木之本駅から車で15分くらい。大出という小さな山里にある。この里人達が、観音さまを守っている。この日も、里の方がご説明くださった。藤原時代に作られたであろうという一本彫りの観音さまだ。この観音さまは、明治時代に医王寺の僧が長浜の美術所の店頭から買い受けて寺に持ち帰ったという。だから、それ以前のことは全くわからないという。
お顔は少女のようにやさしい。なんとも愛くるしい口元をされている。この日は、講演後特別にお近くで拝顔することができた。それもゆっくりと。目頭が熱くなった。そのやさしいまなざしのせいだろうか。湖北の観音さまはそのお姿ゆえに胸に迫るものがある。ここに安置されるまでにどこにおられたのだろうか・・・。
「星と祭」の父親たちが(琵琶湖で亡くなった娘と一緒にボート乗ったいた男の人の父親)、二人で観音めぐりをすることで、「運命」(ある意味のあきらめ)と「祈り」(鎮静と希望)を感じていくのではないだろうか。娘に限らず、大切な人を亡くした人がこのお姿を見れば、必ず心の平安を取り戻していく気がする。私が湖北の観音さまに惹かれるのは、その色あせ傷ついたお姿ゆえのように思う。