やっと晴れた。今日は我が家にポストが付いた。ポストなんて実家を出てから付けたのは初めてだ。ガラガラと開く玄関のガラス戸は隙間から雨が入る。ポストがガラス戸に付いていたので、郵便が投げ込まれると、床に落ちて濡れてしまった。ホームセンターは歩いて20分くらい。自転車のない身には、ポストが持ち帰れるかが問題だった。
歩くことが日常生活に不可欠だ。荷物を運ぶので、力もついてくる感じだ。長浜の生活は、毎日幸せを感じながら過ぎている。『どうせ、寒くて、不便で帰ってくるから』と言われた。そういうことで帰ることはないだろう。それでも、草津や名古屋に出ると、自分のなかの都会育ちの部分が出てくる。デパ地下の買い物や可愛い小物などを売っているショップは懐かしい。5時過ぎると暗くなる長浜は風情はあるが、やはりネオンが恋しい。都会の街の匂いが恋しい日もある。
都会で生活していたのは、30年以上。意識しなくてもどこかに都会生活が染み付いているようだ。生まれ育った文京区は木のぬくもりがある生活だった。その雰囲気が好きで、京都の町の路地裏に入るとほっとしていた。その両方が私の中に生きているのを長浜に来て感じた。だれにもそういうことがあるのではないだろうか。生まれ育ったところで、その一生を過ごせる人は少ないだろう。ふと何かの瞬間に甦る郷愁の想い。それをそっと秘密の小箱に入れておくのもいいような気がする。思い出と一緒に。