やっと取材から家に戻れた。新幹線が名古屋を過ぎると、あと少しだ と思う。やがて田園風景が広がり、家も木の家が増えてくる。長浜の町は6時になると商店街も人が歩いていない。だから、普段気がつかない家の造りが見える。この静かな夕方は大好きだ。だいぶ関西人になった。
今朝は早く目が覚めた。NHKで「風に舞う 花びらのように 奈良 命の映像詩」を見ることができた。大腸がんで仕事を辞めざるをえなかった55歳の男性のお話だった。彼はテレビカメラマンとして様々な番組の制作に携わってきた。病気と仕事を失った絶望の中、彼は自然のなかの美しいものを撮影し始めた。いのちと向き合いながらカメラを回し続けている。『あきらめたあとに、最も美しいものが現れる』と話す。奈良、吉野の寺の住職の息子さんで18歳で亡くなった人の書を見て生きる勇気をもらい、そこで撮影した散る桜は本当にうつくしかった。彼は『散るは再生の始まり』と言う。
考えていた写真集があった。世に出すものでもなく、ただ最期までできることとして大事にしていきたかった。カメラは素人だし、いい写真が撮れるかどうかわからないが、納得のいく写真集にしたいと思った。番組を見て力づけられた。「あい」をこめて写真を撮っていこう と思う。最後の「あい」の証として。