著者 藤原正彦
出版 新潮新書
定価 740円
198頁
10年前の『国家の品格』以来の著者の本。素晴らしい。国の成り立ちには然るべき(その国の民の)教養が有らねばならない。自らのその強い思いを、古今の国々の歴史を辿りながら判り易く説く。本業は数学者のはずだが、余程の識見と豊富な知識がなければ、ここまでの叙述はできまい。ひょっとしたら独断なのかもしれない。しかし、それを見破るのは至難である。スッと納得できる構成であり、何より著者の書きようが自信に溢れているから。
文章がいい。数学者は名文家が多い。かつて岡潔と森毅がそうだった。手元に置いて、時々は自身の教養の深化を顧みるには恰好なテキストになる。少なくとも私には。
つい最近、朝日新聞《折々のことば》で鷲田清一が福田恆存 を引用していた。『日常的でないものにぶつかった時、即座に応用がきくということ、それが教養というものです』と。これは難しい。凡夫はオロオロするだけで終わってしまう。
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