太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

怒涛の運転免許 ~路上試験 4~

2011-11-10 15:44:29 | 車の免許話
怒涛の運転免許 ~仮免編~
怒涛の運転免許 ~路上試験1~
怒涛の運転免許 ~路上試験2~

怒涛の運転免許 ~路上試験3~

「残念だったねえ。でもボクの気持ちがわかったでしょ?」

夫がそう言った。そうだった。夫も、日本で車の免許を取る為に試験を受けた時、2回落ちたんだった。




日本でアメリカ人が受ける試験は、仮免はなく、筆記(英語)と、免許センター内のコースを走る路上テストに合格すれば日本人と同じ運転免許が取れる。

1回目に落ちたのは、一旦停止で3秒止まらなかったとかで、2回目の時には、よく理由がわからなかったと言った。

なぜなら、2回目に落ちた時には怒り心頭しており、教官が何を言ったかなど理解しようがなかったからだ。

「フィリピン人のオンナは、S字カーブで2回も脱輪したくせに合格したんだ!僕は完璧だったのに落ちたなんて納得がいかない!」と帰りの車の中で大騒ぎして、そりゃ大変だった。

あの時は、私が忘れてしまった日本独特のルールがあるんだろうと思い、最寄の自動車学校に問い合わせて、コースを1時間走って教えてくれるように頼んだのだった。

私が通訳として後ろに乗るというのが条件で、「もう免許なんかいらない、日本なんか嫌いだー」と愚図る夫をなだめすかして教習を受け、めでたく合格した。



ということは、やっぱアレか?


ハワイには教習所がないと前述したが、時折、車の屋根に「STUDENT DRIVER」と書いたサインを乗せて走っている車を見かける。

個人でそういうビジネスをしている人がいるようだ。家族の誰も、私の何が悪いのかがわからないのだし、

餅は餅屋。

やっぱ、アレしかないか・・・・



夫が電話帳で調べて、家から一番近そうな局番の人に連絡をとってくれた。

その人はリックといい、かれこれ10年もこの仕事をしているらしい。

私が2回試験を落ちたと言うと、受けた場所を聞いて、

「ああ、そこは島内で一番厳しくて有名なんだよねー。みんなバンバン落ちるんだよねー」

なにィっ!!

ホノルルが一番難しいっていうのはガセネタかッ?

私が受けるところは田舎だし、楽勝だと思っていたのは恐ろしい勘違いだったわけか。



それでも、2回とも試験のあとで「来週いらっしゃい」と言われたというのは、ごく軽微なペナルティなのだそうだ。

深刻なペナルティの人は、1ヵ月後にいらっしゃいだの、2週間後に来なさいだのと言われる。


試験の前に書類にサインをするのだが、その書類には試験でどこを重点的にみるかがたくさん書かれているらしい。

「読んでみた?」と聞く夫に、即座に「読むハズがない」と答えた。

だって、ぎっしり細かい字で書かれた英文がこれでもかと並んでいて、それを私がサインするのを待っている教官の前でじっくり読めるかっつーのだ。

日本語で書いてあったって、そのシチュエーションじゃ読みにくいに決まっている。



夫によると、リックはなかなか感じがよくて、信頼できそうだという。

1時間60ドルの教習を予約して、あとはリックに神頼みあるのみなのだ。






怒涛の運転免許 ~路上試験 3~

2011-11-10 10:02:21 | 車の免許話
怒涛の運転免許 ~仮免編~
怒涛の運転免許 ~路上試験1~
怒涛の運転免許 ~路上試験2~


試験時刻3分前に受理された書類を持って、外のベンチに座ろうとしたら、ふと自分の車が目に入った。

あわてて車を停めたせいか、白線の上を踏んでいる。

車に乗り込む際に、これをチェックされやしないかと不安になり、時間が気にはなるものの、この1点のために今回も落ちたらかなわんと思い、走って車に行き、駐車し直し、また走って戻る途中で、試験官らしき人が歩いて来た。

「ああ、ここにいたのね、探していたのよ」

白人の、細身で穏やかそうな女性が、少しハスキーな声でそう言った。



車に乗り、慎重に走り出す。

先週とは違うルートだったが、指摘されたところは注意深くこなした。縦列駐車も完璧で、前回忘れたハンドブレーキもかけ、タイヤも縁石に向かって切って停めた。

ルートのほとんどは、信号のない住宅地の中の道路で、減点される場所などないように思えた。

試験が終わり、言われた場所にうまく車を停めることもできた。今日こそ免許をもらって帰ろう。

ところが、ハスキー氏は残念そうに言った。

「うーん・・ペナルティが多すぎるの。」

はぁ??? 今なんておっしゃいました?


ポカーンとした私に、ハスキー氏は絵を描いて、丁寧に何が悪かったかを説明してくれた。

前回、右折の際にハンドルを切りすぎて、後ろのタイヤが路上の斜め線を踏んだと指摘されたのと同じ交差点が、今回は弧が大きすぎて、反対車線に 入りそうにみえた 、という。

入ってないんですよね?入りそうに見えただけ、だよね?ええ? と言えるはずもなく。

注意不足と言われたから、しっかり注意したのに、今度は 注意深く見すぎて 危険。


「また1週間後に来てね。何か質問はある?」

質問だらけだ。なぜ何十年も日本で無事故運転してきた私がダメなのか、なぜトムが電話に出ないのか、なぜ私は危険を犯して一人で運転して家まで行く羽目になったのか、なぜまた来週の早朝に並ばなくてはならないのか・・・

たかが運転免許で、人格まで全否定されたような気分だった。

こんなときは、状況の中にあるラッキーを探すに限る。

先週のフィリピン系のおばちゃんは、こんな丁寧に説明してくれなかったからラッキーか・・・・

ああよかった、ラッキーじゃん私・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・って全然ラッキーじゃなーーーーーいッ!



夫の父が、試験が終わったら必ず電話してと言っていたので電話した。

「ハーイ!ハウ アー ユー?」

夫の父のやけに明るい声が、私のすさんだ心を逆撫で、私の中の「ブラック」な私が這い出てくる。

「元気なんかじゃない。また落ちた!トムは電話に出なかった!私は法を犯して一人で家に戻ってパスポート取りに行ったッ!」

箇条書きのようにまくしたてた。夫の父に罪はない。ただ私は誰かを責めて、感情のバランスを取りたかった。

「オゥ ノー。それは残念だったなぁ・・・・・」



しばらくして、母を乗せた父の車が駐車場に入ってきた。

「同伴者が免許を提示することになってたんだよ。だから誰か呼んでいいか聞いたら、違法だって言われたんだよ」

私はまだ言い足りなくて、再び文句を言った。すると夫の父は笑って

「あっはー、ダメだよーぅ。そんなこと聞いちゃぁー(欽ちゃんみたいな言い方だった)」

ぷっちーーーーーーーん なんか頭の中で切れた。

「もうやめたッ!!免許なんかいらない!一生誰かに乗せてもらって暮らすんだ。死ぬまでバスに乗ってやる!」



隣りで見ていた夫の母が、「まぁまぁとにかく家に帰りましょ」

ぶちきれた私と、それを見て怯む父の背中を押した。



その夜、食事をしているときに、夫の父が自分が免許を取った時の、世にも恐ろしい話をした。

故郷のインディアナ州にいたときに免許を取ったが、結婚とほぼ同時にハワイに移住してきて、忙しさにかまけて更新するのを忘れてしまい、結局ハワイで取り直すことになったという。

「最初の路上試験の時に、路上に出る前の車のチェックで後方のウィンカーが片方つかなくて試験を受けられなかったんだよ。でも家に戻ったら、ちゃんとついたんだよね」

「次の時は、路上試験の前に試験官が、今日はどうやってここまで来たかと聞くから、運転してきたと言ったら、一人で運転しちゃいけないからダメだろう。とまた試験を受けられなかったわけさ」

そんなこんなの、あいた口がふさがらない話が続き、結果、

「5回目でやっと免許がもらえたんだよ。まだ2回目なんだから落ち込まなくてもいいよ」


・・・・・おとーさん、5回って多すぎだろう・・・・・・・・・・・・・・

言っちゃいけないことを言ってるのは自分も同じじゃないか。



私を慰めようとしてくれたのだと思うが、私は余計に気分が滅入ってしまった。