太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

シェリル

2011-11-17 12:40:41 | 人生で出会った人々
夫が職場で、シェリルという盲目の女性のスピーチを聞いた話をしてくれた。


シェリルは40代後半で、シアトルに生まれた。彼女は生まれた時から目が見えなかった。

両親もきょうだいも、つらく当たることはなかったが、シェリルを世間から隠そうとした。「あなたは普通じゃないから」といつも言われて育った。

高校を出て、シェリルは生まれ故郷を離れるため、わざと遠い場所にある大学を選んだ。

家族は皆、「目が見えないあなたが、いったいどうやって生きていくっていうんだ?」と半ばあきれて反対したが、彼女の決意は固く、本当に一人で飛行機に乗り、シアトルを離れた。



大学の寮に入り、初めて家族から離れたシェリルは、人生で感じたことのない開放感に満たされた。

初めて、自分は目が見えないだけで、何でもできると思えた。実際、彼女は車の運転以外、何でも自分でできた。



或る時、ルームメイトが気を利かせて、シェリルのベッドカバーを変えてくれたことがあった。その晩、ベッドに入ったシェリルは、シーツの色が変わったことに気づき、

「赤いシーツに変えてくれた?」と聞いてルームメイトを驚かせた。

生まれつき盲目の場合、色というものがあるという概念だけ理解できると思ったら大間違いだ。

色にはエネルギーがあり、シェリルはそれを感じ取ることができる。

グリーンは見たことがないが、グリーンの持つエネルギーはわかる。



シェリルはスピーチしながら、ホワイトボードに文字まで書く。

赤や黒や青のマーカーを、触り、色を感じて使い分けてゆく。



故郷を離れて以来、あまりそこには戻っていないという。

「家族のことは愛しているけど、家族は私と話す時に、私を見下げている感じがするから・・」

今、彼女は自分の会社をもち、いくつかの社会組織に籍をおく多忙な身だ。



「目が見えないから何もできないと言った家族に感謝しているわ。私はそれを信じられなかったし、ほんとうにそうかどうか確かめなくちゃならなかったんだもの」



スピーチの最後に、シェリルはいたずらっぽく笑ってこう言った。

「もしあなたがたが失うものを選べるとしたら、どれを選ぶか想像してみて。視力か、聴力か、言葉か、手足の自由か」



本当に、自分で人生の設計をしてから生まれてくるとしたなら、何かを持たずに生まれてくるということは、すごく高度な挑戦だと思う。

自分が持っていないものにフォーカスするか、あるものにフォーカスするかで、全く違う人生模様になる。

それはすべてを持っている人にも言えることだろう。



もしシェリルの家族が、彼女を「普通じゃない子」として隠さなかったら、あるいはべったり甘やかしていたら、彼女はここまで来れただろうか。

「五体不満足」の著者は、両親にまったく普通の子として育てられることで、強さと聡明さを身に着けたように思う。

人が、すべてを設計して生まれてくることが真実かわからないけど、私はそれを信じたい。

私はこうしてああなるから、そのときにはこんなふうにしてね、と家族や友人になる存在に頼んで来るのだと、そうであったらいいと思う。






こころもち

2011-11-17 09:34:26 | 日記
自分の心が喜ぶことを、世界で一番知っているのが自分なら、

自分の心がつまづくことを、世界で一番知っているのも自分。

いつもなぜだか同じ場所でつまづいて、ああまたコレかぁと思う。



今までいろんなことがあって、数え切れないほど「困った!」と思い、何度も「もうこのまま幸せになれないのか」と思い、暗闇を半泣きで歩いていたような時期もあった。

最悪、と思える出来事も、あとになれば、最高に続く大事なイベントだったと気づく。

それなのに、懲りずに困り、最悪だと思い、不安にかられてしまう。

いつだって何とかなってきたというのに。



指の逆むけが気になっているときに、親知らずが痛み出せば、逆むけなど何でもなかったと思う。

パートナーの何かが不満な時に、誰かのパートナーが病と戦っているのを知れば、不満など消え、元気でいてくれることに感謝さえする。



ということは、その「不満」や「心配」や「最悪」って、自分の心もち次第で、どんなふうにも変わってしまうもの。



状況を変えようとするから、つまり、状況によって幸せになろうとするから苦しいんだ。

自分以外は変えられないから当然だなぁ・・・



私の中のどこかでは、そのことを知っていて、経験から、それが真実だとわかってる。

知っているのに、まるで初めて悩む人のように新鮮に悩み、懲りずに状況を変えたくなって、また同じ場所でつまづいていると気づく。

こんな時、いつか妹が言ったことを思い出す。



「シロちゃんにはいつもびっくりさせられるけど、いつも何とかなってきたよねぇー」



離婚するときか、再婚するときか忘れたけど、妹はそう言って笑った。

そのとおりなんだ。いつも何とかなってきたんだよなあ。

心配して解決することなど何もない。不安になって不安が消えることもないじゃないか。

私が心配になる気持ちもわかるけど、だったら心配をやめて、不安になるのも終わりにしようと自分に言ってみる。



前向きって、いつも明るく笑っていられることだと思ってた。

そうじゃないんだと今は思う。

どんなダメな自分も受け入れて、そんな自分と、自分が問題だと認識した出来事を笑ってしまえることだと思う。

そして明るく考えられなくてもいいや、と思えることでもあって、

ただ、むやみと不安になったり心配したりするのをやめようと決められることでもあると思う。



それなら、私にもできるかも。

同じ場所でいつもつまづく私を許してあげよう。