太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

怒涛の運転免許 ~路上試験5~

2011-11-13 16:51:30 | 車の免許話
怒涛の運転免許 ~仮免編~
怒涛の運転免許 ~路上試験1~
怒涛の運転免許 ~路上試験2~

怒涛の運転免許 ~路上試験3~
怒涛の運転免許 ~路上試験4~



約束の時間にリックは、Tシャツ+短パン+ビーチサンダルというハワイのお決まりのいでたちで、白いピックアップトラックから颯爽と現れた。

おなかが出っ張ったイイ体格で、金のネックレス、指輪、真っ黒いサングラスの、六十代後半のロコボーイ。



「ハウゼッッ、ブラッ」

満面の笑みで夫に握手を求めたリックは、外見から想像はできたけど、思いっきり ピジンイングリッシュ だった。

ちなみに、ハウゼ とは、「ハウ アー ユー」みたいなノリで、 

ブラッ とは、ブラザーという意味で、「よお、兄弟」という感じ。


ピジンとは、さまざまな言語の人達が集まっている地域で、自然といろんな言語がミックスしてできた地域語で、

ハワイの場合、ベースは英語だが、発音も言い回しも独特で、ピジンで話されるともう全くわからないこともしばしばある。

生まれも育ちもハワイのロコは、ピジンを話す人が多くて、私は英語とピジンと両方慣れないといけない・・

夫は生まれも育ちもハワイだけれど、両親が本土出身なのと、ずっと私立学校に行っていたために普通の英語を話せる。


「オゥ、シロ!  ナイス チゥー ミーチュー!」

ぐぐっと近づいたリックの顔に、私は釘付けになった。

両方の鼻の穴から、盛大に漫画みたいな鼻毛がワンサカ伸びていた。


鼻毛ってここまで公衆にさらしていいんだろうか?

家族は何も言わないんだろうか?  リックは何か願掛けをして、鼻毛を伸ばしているのか??





さて、鼻毛リックは、まず最初に「エドケーション」から始めるといって、路上試験で何が何点減点になるかとか、コピーしてきた書類で丁寧に説明してくれた。

おおよそはわかるのだが、

夫が横から「質問しているんだよ」と言ってくれないと、質問されているかもわからないこともあった。



「エドケーション」が終わり、車に乗り込んで路上教習が始まる。


走行中、いきなり、

「シロ。ワン、ツー、スリー! ロッケナッッ!」

と言いつつ、指で3つ数え、こぶしをグッと握って見せた。


なっ、何て言ってるのかわかんないんですけどッ!!!


思わず鼻毛リックの顔を見ると、再びこぶしをグッと握って、 「シロ、 ロッケナ!」と繰り返した。

後部座席にいる夫が「止まれという意味だよ」と助け船を出す。


あとでわかったことだが、LOCK IT UP と言っていて、ネイティブは普通それを止まるという意味では使わない。


それはカッコイイ言い方なのだろう。

鼻毛リックは、そんな終始ロックンロールな、矢沢の永ちゃん的なノリだった。

なんでもない道を走っているときも

「シロ、ビューーティフル(走り方が)、ビューーティフル、オッケイ、オッケイ」

車線変更の時には

「シロ!へッチャッ!(ヘッド チェック=首をまわして安全確認)イエーーィ! ビューーーティフル!」

縦列駐車では

「ダウン ダ ミラー、 ウェイト ウェイト アンティル 45ディグリー、なうッッッ ロッケナッ!」



「エドケーション」を含め2時間たっぷりこんな調子だった。



鼻毛リックの奥さんは日本人で(ハワイ生まれ)、二人の子供の写真も見せてくれた。

正月には、奥さんのおじいさんが日本から持ってきた臼と杵で餅つきをすると嬉しそうに話してくれ、わからないことがあったらいつでも電話してねと言って、自分の車に乗り込んだ。

少し進んで止まり、こちらを向いて、指でワンツースリーと数え、こぶしをグッと握って「ロッケナ!」と言って笑って去っていった。



思いもよらないルールなどがわかったし、役に立ったといえばそうなのだが、私はどっぷり疲れてしまった。

なんかもう、それほど焦って免許取らなくてもいいような気さえしてきた。

ということで、3回目の路上試験はいつになるか、まだ定かではない。