あるパーティに呼ばれて出かけた。
初めてお邪魔する、そのお宅の主は、写真家でもあり、ライターでもあり、世界中を旅している人で、
家の中には、マサイ族の盾とか、ナントカ族の槍とか、珍しいものがたくさん飾られていた。
「これが一番気に入っているんだよ」
と言って見せてくれたのは、家の中の一番目立つ壁に堂々と掛けられた、日本の古い屏風であった。
横が2メートルないぐらいだから、屏風というより衝立に近いかも。
遠くに山が見え、奥から手前に向かって川が流れていて、その川に太鼓橋みたいな橋がかかっている。
川の両岸に、大きな桜の木があって、川面にゆったりせりだしている。
満開の桜の下で、人が集まって飲み食いしているような絵が描いてある。
衝立の右上に、数行の漢字が羅列していた。
如月
一樽
酒
薫風
□□
書
□□の部分は、字が崩しすぎてあって解読不能。
薫風も、風だけは読めるが、薫かどうかは疑わしい。
私がうっかり「如月って書いてある」と言ってしまったものだから、
「え、わかるの?ねえねえ、なんて書いてあるの?シロが読めるんだって!」
と人が集まって来てしまった。
日本人は私だけ。
「エート、如月というのは今の暦でいうと3月から4月ってことで・・・」
「ああ、だから桜が満開なんだね」
「日本人は桜の下で宴会をするのが大好きでして・・」
「なるほどー!この人たちは桜の下でパーティしているのか」
「日本はアメリカと違って、公共の場でお酒が飲めるので、みんなお酒を持ち寄ってですね・・・」
「桜を見ながらお酒ねえー、いいねえー」
「で、二番目のこれは、お酒の入った器のことで・・・」
「お酒のビン?」
「いや、木でできた、ワインみたいな、あの、なんていうんだっけなあ」
「ああ、バレルのこと?」
「そうそう、バレル、日本語で樽なんだけどね、樽に入った酒がありますよ、と・・・・」
「ゴージャスに楽しんでるってわけか」
「で、そこに気持ちのいい風が吹いてきましたよ、と・・・」
「ほうほう」
「5番目のこれは、私には読めないからパスね。で、最後はカリグラフィーね」
「カリグラフィー?」
「ブラックインクで字を書くのよ」
「パーティしながら?」
「うーん、たぶん、そこで歌を詠んでいるということじゃないかと思われ・・・・」
「歌?」
「今の気持ちをポエムにするわけね。それで、お互いに返事のポエムを作ったりするのよ」
「へえー!すごい!今日はすごい日だ。これは何代か前から受け継いできた物だけど、この意味がわかったのが僕の代だなんて感激だ!」
ひえーッ!
どどど、どうしよーーーーッ!
これがそんなたいそうなものだったとは・・・・・・
引っ込みがつかないあまり、ニセ鑑定団気取りしたばっかりに大ピンチ。
私はあわてて
「わかんない、わかんないよ、たぶんそうじゃないかなーっていうだけで、本当にそうかわからないんだからねッ!信用しないほうがいいよ」
と必死に弁解したが、
「いやいや、言われれば確かにそんなふうに見えるもの」
「そうだよ、きっとそうだ、正しいと思うよ。日本人がそう言うんだし」
と口々に言う。
なんか、責任重大なんですけど・・・・・
「いやぁ、今日はいい日だ、いい日だ、うんうん」
彼に感謝されればされるほど、なんだか居心地がわるーくなってくるのであった。
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初めてお邪魔する、そのお宅の主は、写真家でもあり、ライターでもあり、世界中を旅している人で、
家の中には、マサイ族の盾とか、ナントカ族の槍とか、珍しいものがたくさん飾られていた。
「これが一番気に入っているんだよ」
と言って見せてくれたのは、家の中の一番目立つ壁に堂々と掛けられた、日本の古い屏風であった。
横が2メートルないぐらいだから、屏風というより衝立に近いかも。
遠くに山が見え、奥から手前に向かって川が流れていて、その川に太鼓橋みたいな橋がかかっている。
川の両岸に、大きな桜の木があって、川面にゆったりせりだしている。
満開の桜の下で、人が集まって飲み食いしているような絵が描いてある。
衝立の右上に、数行の漢字が羅列していた。
如月
一樽
酒
薫風
□□
書
□□の部分は、字が崩しすぎてあって解読不能。
薫風も、風だけは読めるが、薫かどうかは疑わしい。
私がうっかり「如月って書いてある」と言ってしまったものだから、
「え、わかるの?ねえねえ、なんて書いてあるの?シロが読めるんだって!」
と人が集まって来てしまった。
日本人は私だけ。
「エート、如月というのは今の暦でいうと3月から4月ってことで・・・」
「ああ、だから桜が満開なんだね」
「日本人は桜の下で宴会をするのが大好きでして・・」
「なるほどー!この人たちは桜の下でパーティしているのか」
「日本はアメリカと違って、公共の場でお酒が飲めるので、みんなお酒を持ち寄ってですね・・・」
「桜を見ながらお酒ねえー、いいねえー」
「で、二番目のこれは、お酒の入った器のことで・・・」
「お酒のビン?」
「いや、木でできた、ワインみたいな、あの、なんていうんだっけなあ」
「ああ、バレルのこと?」
「そうそう、バレル、日本語で樽なんだけどね、樽に入った酒がありますよ、と・・・・」
「ゴージャスに楽しんでるってわけか」
「で、そこに気持ちのいい風が吹いてきましたよ、と・・・」
「ほうほう」
「5番目のこれは、私には読めないからパスね。で、最後はカリグラフィーね」
「カリグラフィー?」
「ブラックインクで字を書くのよ」
「パーティしながら?」
「うーん、たぶん、そこで歌を詠んでいるということじゃないかと思われ・・・・」
「歌?」
「今の気持ちをポエムにするわけね。それで、お互いに返事のポエムを作ったりするのよ」
「へえー!すごい!今日はすごい日だ。これは何代か前から受け継いできた物だけど、この意味がわかったのが僕の代だなんて感激だ!」
ひえーッ!
どどど、どうしよーーーーッ!
これがそんなたいそうなものだったとは・・・・・・
引っ込みがつかないあまり、ニセ鑑定団気取りしたばっかりに大ピンチ。
私はあわてて
「わかんない、わかんないよ、たぶんそうじゃないかなーっていうだけで、本当にそうかわからないんだからねッ!信用しないほうがいいよ」
と必死に弁解したが、
「いやいや、言われれば確かにそんなふうに見えるもの」
「そうだよ、きっとそうだ、正しいと思うよ。日本人がそう言うんだし」
と口々に言う。
なんか、責任重大なんですけど・・・・・
「いやぁ、今日はいい日だ、いい日だ、うんうん」
彼に感謝されればされるほど、なんだか居心地がわるーくなってくるのであった。
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