夫の料理好きな叔母が、味噌を買おうと日本食スーパーに行ったが
あまりに種類が多すぎて、結局買わずに帰ってきたことがあった。
私は、売り場の膨大な種類のチーズを前にすると、そのときの叔母の気持ちがよくわかる。
私が子供の頃は、チーズといえばプロセスチーズ。
銀色の紙に包まれたチーズは、給食にも出てきた。
これは何回か記事にしているが、私が初めて「とろけるチーズ」を食べたのは
幼稚園のときだ。
母と通っていた英語教室の先生がピザをふるまってくれた。
生まれて初めてピザという食べ物を知り、その上に乗っている熱いチーズの旨さに打ちのめされた。
それは母も同じだったと思う。
我が家は祖父母もいたし、家でチーズが出てくることはそのあともなかったように思う。
しばらくして、スライスチーズが出てきた。
1枚ずつ包装されたチーズは食べやすく、海苔と合わせて、父のお酒のアテにもなった。
そして、とろけるタイプが出てくると、パンに乗せて焼いて食べた。
高校生の頃、通学路に「ジロー」というレストランがあって、夏休みの部活のあとに時々行った。
そのジローで、私は初めてチーズとご飯の組み合わせを知り、そのうまさに再び打ちのめされた。
行くたびに、ドリアを食べた。
チーズにいろいろ種類があることを知るのは、まだまだ後のことだ。
バブルの時、イタリアン(イタ飯、と呼んでいた)が流行り、モツァレラチーズという名前を知った。
「ニョッキはやっぱりゴルゴンゾーラでしょ」
「サラダにはパルミジャーノじゃなきゃ」
肩パッドの入ったワンピースの肩を怒らせて、みんなおしゃれなOLを気取っていた。
ティラミスが流行り、リコッタチーズという名前も覚えた。
チーズといえばプロセスもドリアもみんな同じと思っていた世界から、
ヨーロッパ人の名前みたいな名前がついたチーズが巷に溢れ、一気にチーズの世界は華やかになった。
今日のランチ
トーストしたエゼキエルブレッドにカッテージチーズをのせ、ピーカンナッツを振りかけたもの。
私は猫にチーズケーキという名前をつけるほど、チーズが好きだ。
ブルーなどの臭いチーズも平気。
1番好きなのは、ゴートチーズで、そのまま食べたり加熱するならペッパージャックといわれる、刻んだチリペッパーが練りこまれているのがいい。
黄色味の強いチェダーも、ほかのチーズと混ぜて使うと引き立つし、
モツァレラはトマトとバルサミコ酢の相性が抜群だ。
うちの冷蔵庫にチーズを切らしたことはなく、毎日のようにチーズを食べているが、
幼稚園の英語教室で食べた、ひときれのピザの溶けたチーズの美味しさを超えるものは、この先もないだろうと思うのである。