太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

プロと趣味

2021-03-12 07:56:47 | 日記
仕上げた作品を、キャンバスに印刷してもらったり、スキャンしてもらうのは、コリンのところ。
コリンは日系人で、年齢不詳。
ウクレレ奏者のジェイク・シマブクロに瓜二つ。
いつも穏やかに話し、けして御愛想とかお世辞を言わず、
怒るとか、声を荒げるとかいったことが想像つかない、不思議な人だ。
彼の周囲だけ、なにか違った空気が流れている。

コリンには、なぜかいつもペラペラといろんなことを話してしまう。
私の作品をいつも褒めてくれるので、私が調子に乗るのだと思う。

最近は何をやっているの、と聞かれたので、
ラティーシャのギャラリーで、あるお客さまが、私のある作品を気に入ってくれたのだけれど、
それよりももう少し明るさを落とした作品が欲しい、と言っているという話をした。

「そんなの、気にしなくていいよ」

すかさず、いつになく、コリンが強い感じで言った。

「自分が作りたいと思うものを作るんでなきゃ、いいものなんかできっこないんだよ。忘れちゃいな、そんなの」

私もまったく同感だったので、嬉しくなった。

美大時代の友達で、夫婦で陶芸家をやっている人がいる。
個展があれば行き、少しずつ彼らの作品を買い集めていた。
その友人があるとき、こぼした。
「陶芸は好きだけど、生活を考えると、やりたくない仕事もやらなきゃならないのが苦痛だよ」
そのときは、紅茶の会社から受けた仕事で、点数を集めるともらえるプレゼントを作っていた。

私はそのことをずっと覚えていて、
だから絵は仕事にはしないで、趣味にとどめておこうと決めていたのだった。
それが、まるきりひょんなことからプロになってしまった。


ラティーシャには、もしインスピレーションがあったら作るかもしれない、と答えておいたけど、たぶん私は作らないと思う。
これが、2年前のようなコミッション(個人から特別にオーダーを受けて創作すること)だったら、金額の桁も違うし、
私はやらねばならないだろうが、そうではないのだ。
それに、ありがたいことには絵で生活を立てなければならないわけでもない。

「そうだよね、私はやらなくていいよね」

「いいに決まってんじゃん。その陶芸家の友達は、きっと割り切って、情熱を使い分けているんじゃないかな」




作りたいものを作っていたのが、売るようになれば自然に、売れるものを作る 方向に行ってしまいがち。
当然、私の中にもそういう部分があって、そのバランスが保てなくなったら
そのときには潔く、趣味に戻ろうと決めている。