数か月前から、車の給油口の蓋が開かなくなった。
運転席シートの下方のレバーを引くと、パカっと開くはずの蓋があかないのだ。
2012年に新車で買って、9年目。
車自体の調子はよく、走行距離も5万マイル以下。
でも、屋根の塗装もべらべら剝がれてくるし、走行に関係ないところで、いよいよガタがきているのだと思った。
給油するときは、手動で蓋の片側を押し、鍵の先で反対側をこじあけるようにして開けていたが、
今日、どうしても開かなくなった。
せっかくホノルルまで来たから、安いスタンドで給油したかったのに。
今、ハワイのガソリンはすごく高くなっていて、1ガロンが4ドル超え。
(1ガロン=3.785リットル)
どう苦戦しても開かないので、給油を諦め、帰り道にTOYOTAに寄ることにした。
安いガソリンを給油できなかった無念さと、9年目でガタがきている腹立たしさを抱え、TOYOTAに乗り込んだ。
TOYOTAは5人のサービス担当者それぞれにガラス張りのオフィスがあり、
中に人がいるのを確認してから、ノックした。
「お忙しいところすみませんが、給油口の蓋があかなくて困ってるんです、なんとかなりませんか」
予約がないとサービスは受けられないのは知っているけど、給油口が開かないなんてこと、ありえないでしょう?ええ?
という意味をこめて、言った。
三十代とおぼしき青年は、コンピューターを操作しながら私を見て、
「いいですよ、車をここまでつけてくれたら、数分でお手伝いしますよ」
と気持ちよく言った。
数分後、彼が出てきた。
「給油口の蓋をあけるレバーを押してみてくれます?」
「もちろん押してるんだけど、押しても開かないから手動なんです。でも今日、その手動でも開かな・・・・・」
パッカン
あっけなく蓋が開いた。
「ど、どうやった???」
「蓋のこっちを押してみたら開いたけど・・・あれ、これは何?」
開いた蓋の中の一部に、マスキングテープが巻かれている。
「ああ、それは屋根を塗装し直したときに、塗装屋がマスキングしたやつで」
「このテープが、蓋を押し開けるボッチを抑えていたんですよ。取っちゃいましょ」
(なんでこんなものをいつまでも貼ったままにしとくかなァ)
とても感じの良い青年で、にこやかにテープをはがして捨ててくれたが、
青年の顔にはそう書いてあった。
確かにそうだ。
塗装したのは昨年の12月。
7か月も、マスキングテープがあるのを知りつつ、そのままにしておいた私が悪い。
なんとなくバツが悪くなり、そろそろ5000マイルごとの点検時期が近くなっていたことだし、
点検の予約を入れてお茶を濁してきた。
私は、いつもそうだ。
勝手に思い込むと、その先入観でしか物事を見ない。
いろんな可能性を探求しようとせず、さらーっと表面だけで判断する。
それがわかるのは、いつだって「シマッタ!」と思ったあとだ。
だから、何度でも繰り返す。
だから、これは私が死ぬまで抱えてゆかねばならぬ。