昨年7月の東京都知事選での候補者桜井誠氏が選挙中に東京都港区の在日本大韓民国民団中央本部前で「さっさと日本から出て行け」などと演説した事に対して、民団側が昨年9月に法務局に「ヘイトスピーチなどにあたる」として人権救済を求めていた事に対して、法務局は昨年12月末、「人権侵犯の事実があったとまでは判断できない」との決定を下した。
「決定」は要するに「人権侵犯とは判断できない」という事を回りくどくあいまいに表現し、法務局の職務である判断を避け、責任を回避しようとしたとしか考えられない。
「ヘイトスピーチ対策法」に定義している、「日本以外の国・地域の出身者と子孫で適法に住む人に対し、差別意識を助長・誘発する目的で、命や体に危害を加えるように告げるか、著しく侮蔑し、地域社会からの排除をあおる行動」としている言動そのものであり、それも、桜井氏は丁寧な事に、わざわざ「ヘイトスピーチ」を行うために「民団中央本部」前までやって来ての言動(ターゲットを明確に定めて)であり、それは桜井氏が民団側に脅迫行為を行い、不安や恐怖を与え生活を破壊する効果を生む事を意図し、実際に民団側がそのように受け止めた事を考えれば、常識的判断では、明白な「人権侵犯」そのものであると「決定」する事が当然であるとしか思えないにもかかわらずである。
法務局はまた、桜井氏側の救済申し立て、つまり、民団機関紙に掲載された記事が「人格権や選挙権の侵害に当たる」として求めていた救済についても民団側に対する「決定」と同様「侵犯事実不明確」と「決定」した。
「喧嘩両成敗」のような「決定」をしているが、「人権侵犯」に関して、「喧嘩両成敗」でお茶を濁す「決定」はあってはならない。それは、被害者の不安や恐怖を解消する事にはならず、「ヘイトスピーチ」を容認し、拡散させる事につながるからである。それはつまり、「ヘイトスピーチ」に対して政府が「お墨付き」を与えた事になるからである。
学校において、「いじめ」は人権侵害で、「犯罪」でもあると見做されており、政府は法的に厳しく対処する姿勢を進めてきた。
「ヘイトスピーチ」も同種の問題であるから、法の趣旨を尊重し厳格に適用すべきである。
今回の決定は、安倍政権の意向を忖度したもので、偏向した「決定」と考えるのは私だけであろうか。