大串章選
桜咲く生徒不在の校庭に 川崎市 大井光隆
感染の連鎖や野火の走り行く 川越市 与川やよい
大漁旗掲げ黙禱震災忌 小田原市 牧野甫
この時期の新型コロナウイルスによる社会の状況を、俳句にするのは当然だと思います。私は今を詠むことが大切だと思っていますし、今回の選も、稲畑汀子さん以外は、コロナ関連と思われる句を選んでいます。
一句目、卒業式も入学式もできなかった学校が数多くあります。いつものように学校の桜は満開になるけれど、生徒がいないという情景、私も読みたかったのでした。二句目も、コロナのことです。連鎖と野火の様子を重ね合わせたのですね。三句目は、東日本大震災の日のこと。あの時のことは、記憶に新しいです。しばらくは自粛ムードがただよい、首都圏も計画停電があり、テレビのCMは、広告機構のものが多かった(自粛でスポンサーが撤退)。それと同じことが起きようとしています。あの時以上に、経済的なダメージが大きいのですから、大企業と言えども本当に厳しいと思います。この経済的な打撃は世界大恐慌並、いやそれ以上という話もあります。教科書でしか知らない世界大恐慌ですよ、恐ろしい!
高山れおな選
日常を覆へる黄砂カミュを読む 東村山市 新保方樹
春闘の静かなること絵の如し 川越市 渡邊隆
一句目、昨日テレビでカミュのペストを見た(100分で名著)ので、この句を取りました。二句目は、春闘どころではない現状、経営者も労働者もびくびくの状況ですもの。でも、どんな絵なのかなあ?
長谷川櫂選
一メートル離れて歌ふ卒業歌 新居浜市 山口保人
怖ろしきものが朧の彼方より 尼崎市 田中節夫
マスクして眼玉だらけの街を行く 西海市 前田一草
一句目、3つの密を避けるためのやむを得ない立ち位置での卒業式。でも、卒業式を行なえただけでもよかったと思います。二句目、本当にそう思います。先が見えないから、明日はどうなるか、東京の感染者数の推移を見守り、自分が感染しないか気をつけ、出口が見えない恐怖は、母が東京にいて経験した空襲みたいなものなのかもしれません。どこに落ちるかわからないから。このコロナ騒動は、人類の終わりの始まりだと私は思っています。そして、三句目、マスクの効果はどうあれ、飛沫を人に飛ばさない工夫のマスクは、やはり必要ですから。終に私も手作りしました。
とにかく皆さん、免疫力を高めて、家にいてしっかり楽しく過ごしましょう。笑う門には福来る。めげないことです。特に猫を飼っている人は、気をつけてください。猫はこのコロナウイルスに感染しやすいそうですから。