僕が参考にした登山データは単独の方のものではなく、3名の方々のグループ登山でした。
年齢は僕よりちょっと若め。
単独だとどうしても行動が速くなってしまいます。
個人差が大きいので、速い人もゆっくりめの人もいる3~4名のグループ登山のコースタイムが参考になるような気がします。
要所要所のコースタイムをこの方々の記録をそのままコピーし、自分の行動目標としました。
登りの時点で若干の遅れを出してしまいました。
『だめだ… まったく調子が出ない。このままだと日帰りは困難だな』
まあ連休は始まったばかり、この先のことは特に考えず、自分が一番安全で満足出来るようにしようと思いました。
急峻な登山道を4時間登って、やっと早月小屋に到着しました。
計画よりずいぶん遅れてしまったような気がしていました。
この時点で女房に連絡して登山計画を変更するかもしれないことを伝えました。
つまり、山頂を往復した時点でタイムオーバーだと判断した場合は、早月小屋に宿泊することになるだろうと。
まわりの登山者の余裕綽々なお顔が自分の気持ちを切なくさせます。
疲れてぐったりしているのは自分だけに思えました。
一人の若者が後ろからやってきました。
やはり余裕顔です。
のんびりと写真を撮っていました。
よっぽど自信あるんだな…。いいなぁ…。
そして彼は僕を追い越してどんどん先へといってしまいました。
さらに大きなザックを背負った男女のペアがさらに僕をパスしていきます。
その荷物でそのスピード、とくに男性に普通についていく女性の脚力はすごかったです。
いい筋肉してました。
さらにさらに、同年代の男性にもパスされて気分は灰色になりました。
この先はお決まりの『カニのハサミ』と呼ばれる核心部になります。
カニのハサミだけではなく、随所に危険箇所は存在しています。
特に気にしたのが落石です。
他人の落とす石もさることながら、自分も落とさないようにしなければなりません。
思ったより時間がかかりました。
休日だったらもっと混んでいて、通過にはもっと時間がかかるんだと思いました。
早月小屋からさらに登ること4時間、死にそうな思いで剱岳山頂に立ちました。
そこには余裕綽々で写真を撮っていた彼もました。
『あーお疲れさまでしたー』
時折雲が山頂を覆っていたので心配でしたが、登ってみるとまだまだ綺麗に見えていました。
この日はお昼を境に下り坂だという予報だったので、焦りもありました。
よかったー。
カメラを出して先ほどの若者にお願いしました。
『何枚か撮っていただけますか?』
百名山完登の文字を印刷したものを出すと、一斉に周りがどよめき沸き上がりました。
拍手の嵐。
いい筋肉した男女の登山者に話しかけられました。
いろいろ聞かれていろいろ話しました。
関西の方でご夫婦でした。
『ご夫婦で登れるっていいですね、うちはちょっと難しいなぁ~』
『いやいや、喧嘩もしますしお互い言いたいこと言い合いますし』
『奥さんはなんも言わないですか?』
『うちはありがたいことにダメと言われたことはありませんよ。でも心配ばかりかけてます』
それを聞いていた若者がニヤニヤしていました。
ま、オフレコでそのほかの話もポンポン出てましたけどね。
あの時山頂にいた方々、ありがとうごさいました。
さて、ここで時計を見てみます。
えっ?
予定通りの時間だ。
なんと、このままいけば日帰りの射程圏内です。
でもまあ焦ることも無く、落石に気をつけながら下山します。
ご婦人の方々もこの早月尾根を登ることが多いように感じました。
僕なりの解釈ですが、別山尾根よりも渋滞させる箇所が少ないのとガイドさんが連れて行きやすいからなのかなって思います。
早月小屋泊で3日間の行程ですね。
早月小屋に到着しました。
バッチは残念ながら売り切れでした。
百名山100座目にしてバッチ無し。
またこっち方面に来たときに買うことにします。
手ぬぐいは1本1000円しましたが、応援して下さった方々へのおみやげで、10本買いました。
ここに来ないと買えない、僕がこの脚で運んだものです。
ところが、外へ出て荷物を片付けていると雨が降ってきました。
おお、降るとまでは思っていなかったけど、高いところにいるうちはレインスーツの上だけ着て、ゲイター付けるぐらいにしておきました。
暑くて中が群れてびしょびしょになるぐらいなら、雨に濡れた方が気持ちよいです。
高度が下がってきて気温が高くなり始めたところでレインスーツを脱ぎます。
雨は降ったりやんだりですが、さほど気になりませんでした。
5時間半かけて馬場島に戻ってきました。結局日帰りしました。
『試練と憧れ』の石碑が僕をむかえてくれました。
正面に立ち、一礼しました。
疲労感はあったものの、コースタイムは予定ぴったりでした。
ちょっと前までは休憩も少なめだったけど、今は倍ぐらい休んでます。
それも歳のせいにしておきます。
帰り支度をしているうちに薄暗くなってきました。
まず、風呂に入りたい。
検索してみると、山を下ったところに日帰り温泉があるようです。
電話してみると、やってます。
行ってみるとテニスコートがあって日帰り温泉があるというところでした。
440円でなかなかよろしかったですよ。
その後、達成感と満足感のなか、車を長野県飯山地区へと走らせました。
身体はクタクタ、筋肉はボロボロ、それでも天気予報はこの先3日間晴れなので、こんな恵まれた連休は滅多にない… いや、一生無いかもしれないと思うと自然に気持ちは『信越トレイル』へと向かっていました。
歩行距離 17.6km
累計標高差 2586m
所要時間 14時間45分
37500歩
「剱岳早月尾根」のお話はおしまい。
そして「信越トレイル編」へ続きます。