原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

年々低くなり続ける日本の科学技術力指針

2022年08月21日 | 時事論評
 (冒頭写真は、2022.08.20付 朝日新聞「書評」ページより、千葉大学教授・粒子天文学者 石原安野氏が選んだ書籍 共同通信社「日本の知、どこへ」取材班著の「日本の知、どこへ どうすれば大学と科学研究の凋落を止められるか? 」を転載したもの。


 早速、冒頭の著書に対する石原安野氏による「書評・多角的な分析と長期的な検証を」を以下に要約引用しよう。

 基礎研究の重要性と日本におけるその危機的状況について語られることが増えている。 日本の科学技術力指標は年々低くなり続けており、日本人が最も科学者に注目する機会であるノーベル賞受賞者の会見は、受賞対象となった研究成果を生み出してた時代に比べて近年の研究環境が劣化していることへの危機感表明の場となっている。
 一方で、日本では基礎科学の大切さに対する理解や、科学を純粋に楽しむ心があるとも感じている。 いつどのように役に立つか分からない多様な研究が、将来の成果につながる種となる。 その重要性の認識は日本社会の成熟度を示す指標といえるのではないだろうか。 しかし、現状では実際の研究活動に反映されているとは言えない。 それどころか、「面白さ」に突き動かされるような研究は縮小を続けている。 (中略)
 大学の役割を端的に表せば研究と教育だろうが、そのありようは幅広い。 本書から見えてくるのは、一面的な指摘を用いた評価の不十分さ、そして、多角的な現状分析と施策の長期的な検証の必要性だ。
 現状打破のために新たな施策を行うことが悪いわけではない。 それがどのようなデータに基づいたものか、大学の多様性に対応できるのか、後日の第三者による検証が可能かを明らかにしておく必要がある。(中略)
 日本の科学技術力の基盤であり続けるために、社会の一部として発展を続けるために、大学はどうあるべきか。ひとりひとりが身近な問題として考えるきっかけになり得る一冊だ。

 (以上、朝日新聞「書評」ページより一部を要約引用したもの。)



 この書評を読んで私がいの一番に思い出したのは、2014年春に起きた小保方晴子氏らによる「STAP細胞事件」である。

 何故これを思い出したのかと言えば、この原左都子が国立大学医学部出身であり、私の専門分野が医学実験をこなすことを主眼とした分野だった故だ。

 ただし小保方氏と私の年齢差がおそらく30歳程あり、当然ながら小保方氏の方が真新しい実験に取り組んだであろうと当初想像した。
 参考だが小保方氏は医学部出身ではなく、私立W大学理工学部及び大学院(後に修了認定取り下げ)ご出身のようで、特段「医学」に特化した教育指導を受けられたのではなさそうだ。

 その後すぐに「STAP細胞」研究のいい加減さが国内で吊るし上げられ、その記者会見をテレビ放映にて大々的に執り行った事実をご記憶の国民の皆様も多いことであろう。

 あの記者会見を、医学関係者であり特に医学実験を多数実施してきたこの私が見ないわけも無かった。
 一番驚いたのは、あの記者会見会場に小保方氏が「実験ノート」の一冊も持参せずに訪れたことだ。
 手には白いハンカチが一枚だけ。 そして会場から実験のいい加減さ等々を吊るしあげられる都度、そのハンカチで目頭を押さえる…

 小保方弁護団の会場映写によれば、小保方氏直筆のたった一枚の(何だか可愛い)「マウスの絵」とカタカナで書かれた「テラトーマ」…  あの光景は今尚我が脳裏に鮮明な記憶があるが…
 この人、ホントに自身でネイチャー論文(これも後に取り下げ)を書いたの? W大学博士課程修了のようだが、その立場で「テラトーマ」がカタカナ???

 様々な疑惑を抱えつつ、事の成り行きを観察し続けた結果。
 小保方氏の直属上司、ES細胞の創始者である笹井氏が理研の階段にて自殺、小保方氏の博士論文やネイチャー論文は上述の如くすべて取り下げられ。
 (この辺の小保方氏事件に関しましては、「原左都子エッセイ集」2014.4 ~2015春頃までのバックナンバーに於きまして十数本に渡り詳述しておりますので、ご参照下されば幸いです。)

 その後年数が経過した後に、小保方氏は何と! 都内の著名銘菓店舗にてパティシュエとして勤務しているとの報道。(現在の氏の現況は全く把握していないが。)

 当初の報道では、この小保方氏は私が歩んだ医学分野の実験研究者と同等かと把握したため興味を持ったのたが。(結果としてはまったく異質で、何らの医学研究のバックグラウンドも無い人物だったようだが…)
 その後、氏が如何に身を振られているのかに関しては私の知ったことではないし、一切の興味も無い。


 寄り道が長過ぎたが。
 今回のテーマである「年々低くなり続ける日本科学技術力指針」に話題を戻そう。

 確かに、近年日本人の理化学・医学分野でのノーベル賞受賞者が激減している感がある。 ただ…
 
 現役期間を修了して既に相当の年月が経過している我が身にして、この問題に対し何らかの論評が可能な訳もないが。

 
 少なくとも「STAP細胞事件」のごとく明らかに誤った失態を繰り返すことなく、現在の現役科学者たちが自らの専門に集中する環境を周囲が提供することが叶うならば。

 この国の科学技術力は今後共発展を続けられるであろうと、私は信じる!!