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書評「サピエンス全史」(2) 現代の平和   文科系

2017年05月03日 09時19分02秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 「サピエンス全史 下巻」が見つかったので、予告した要約をする。


『暴力の減少は主に、国家の台頭のおかげだ。いつの時代も、暴力の大部分は家族やコミュニティ間の限られた範囲で起こる不和の結果だった。すでに見たとおり、地域コミュニティ以上に大きな政治組織を知らない初期の農民たちは、横行する暴力に苦しんだ。権力が分散していた中世ヨーロッパの王国では、人口10万人当たり、毎年20~40人が殺害されていた。王国や帝国は力を増すにつれて、コミュニティに対する統制を強めたため、暴力の水準は低下した。そして、国家と市場が全権を握り、コミュニティが消滅したこの数十年に、暴力の発生率は一段と下落している』

『これらの諸帝国の後を受けた独立国家は、戦争には驚くほど無関心だった。ごく少数の例外を除けば、世界の国々は1945年以降、征服・併合を目的として他国へ侵攻することはなくなった。こうした征服劇は、はるか昔から、政治史においては日常茶飯事だった』

『1945年以降、国家内部の暴力が減少しているのか増加しているのかについては、見解が分かれるかもしれない。だが、国家間の武力紛争がかってないほどまで減少していることは、誰も否定できない』

 最後に、こういう現代の現象を学者達はうんざりするほど多くの論文で説明してきたとして、4つの原因を挙げている。
①核兵器によって超大国間の戦争が無くなったこと。
②人的資源とか技術的ノウハウとか銀行とか、現代の富が複雑化して、戦争で得られる利益が減少したこと。
③戦争は採算が合わなくなった一方で、平和が他国からの経済的利益を生むようになったこと。
④そして最後が、グローバルな政治文化が生まれたこと。以上である。

 今回の最後に、こんな文章も上げておく意味は大きいだろう。
『2000年には、戦争で31万人が亡くなり、暴力犯罪によって52万人が命を落とした。犠牲者が1人出るたびに、一つの世界が破壊され、家庭が台無しになり、友人や親族が一生消えない傷を負う。とはいえ、巨視的な視点に立てば、この83万人という犠牲者は、2000年に死亡した5600万人のわずか1・48%を占めるにすぎない。その年に自動車事故で126万人が亡くなり、81万5000人が自殺した』

もう一つ、こんな文章もいろいろ考えさせられて、興味深いかも知れない。
『(これこれの部族は)アマゾンの密林の奥地に暮らす先住民で、軍隊も警察も監獄も持たない。人類学の研究によれば、これらの部族では男性の4分の1から半分が、財産や女性や名誉をめぐる暴力的ないさかいによって、早晩命を落とすという』

 なお、もちろん、以上これら全ての文章に、学者は学者らしく出典文献が掲げてあることは言うまでもない。
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「民主主義」や国連は、馬鹿には出来ない   文科系

2017年05月03日 06時56分39秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
「サピエンス全史」下巻をどさくさ紛れにどこかに置き忘れてきたらしい。二人目、2歳の孫が体調を崩して、助っ人を頼まれたジジババ二人であちこちドタバタしてきたが、結局、肺炎で拠点病院に緊急入院。そのどさくさ紛れのこと。さて、日本人の国際政治論、平和論向けに続きを書いてみたい。まずは、このコメント再掲。

『 国連を無知と、無理解 (文科系)2017-04-30 14:01:58
 日本の右の方々には、国連についてトンデモナイ無知と無理解があると、ここでよーく分かった思いをしてきた。
 無知とは、エントリー表題の、 このこと。
「国連は反戦組織です」
 この事を表現した前文も第一条も、全く御存知ないし、調べてみようとも思わないのである。
 次に、無理解とは、このこと。「反戦平和組織」という国連憲章最大文言を、単なる文言としてだけ扱っている。日本流に言うと嘘としての「大義名分」とだけ。日本って、世界一集団主義、会社主義の国だから表裏、羊頭狗肉が激しくって、国連も国連憲章もそういう「表」の実のない「羊頭」としてだけ扱っているということなのだ。

 対するに、事は、20世紀に人類史上初めてできた世界政治・経済・民生組織、その目的に関わるものなのである。これには、近代民主主義の誕生と発展、「人種差別は悪だ」「植民地も悪だ」も連なり、流れ込んでいる重いものだということも確かなのに、どうやらそれを考えたこともない、と。
 アメリカがいくら国連を無視していても、完全無視など到底出来ないのである。現に抜け出られないのだし、アメリカのどの為政者もここから来る大義名分には決定的には背けないのである。北やシリアに対しても、今や安保理のお墨付きを求めているのがその証拠。イラク戦争の大惨状の後では、単独で出来ることはもう「内戦工作とブラフ」ぐらいしかなくなっているということだろう。

 この30年近く、冷戦が終わって絶対的な1強になったように思い上がって来ただけの事。その結果が65兆ドルの国家累積赤字と、家計など全米至る所の借金だらけ。今や世界最大市場・中国に対しては特に、「馬があって仲良しの習主席」に揉み手をして、市場参入を図っているという現状が関の山である。もっとも、大きいのは、資本とかデリバティブ、あわよくば為替売買への参入なのだろうが。ただし、先進大国日本に対してだけは、相変わらずの強面を通しているのだ。日本為政者、外務省がトロイからだろう。』

 さて、このコメントにもあるように20世紀に人類史上初めて成った世界反戦組織の背景には、「民主主義の発展」や「人種差別は悪である」があるのは自明である。このことはどれだけ強調してもし過ぎることはない。また、これらがあればこそ50年続いた冷戦時代にも核兵器が使われなかったのだとか、大国同士の大きな戦争も無くなったのだとか、政治暴力殺人が決定的に減ったとかの歴史的事実ももたらされたのである。そしてもう一つ、善悪両面があるとは言え世界経済が一つになった意味も大きい。これを根本的に乱すようなことがあれば、「自国も含めた世界に大変な事態を招く」とどんな大国の為政者もよく知っているのである。

 以上、この200年程の人類史に起こって今の世界為政者を大きく動かしている諸要素を出来るだけ広く眺められない世界論、その平和論は駄目なものだと言いたい。そうでなければ、カナダや南米諸国の「独自外交」も、米中ロの行動も、EU結成の背景でさえも、理解できないはずである。日本人の情勢論は、「現実、現実」と言いながら歴史的知識が足らないからその現実の見方が短期的かつ一面的だし、現実をも動かす理念問題に極めて弱いと観てきた。日本人は、学者でも人文社会系は極めて弱かったのであって、そのことが今の政治(意識)の惨状を形成しているという側面が大きいと言いたい。国民は極めて勤勉かつ優秀で、自然科学でこれだけ成果を上げてきた国の政治的惨状は、そういうことだとしか僕には思えないのである。この政治的惨状が最近の日本に招いた典型が、例えばこの事であるとは、何度も述べてきたとおりだ。

『 日本国民一人当たりGDPの歴史的推移というものだ。各国比較順位も含めて。一九九五年、二〇〇五年、二〇一五年で、こう推移している。順位は、五位、二三位、三二位と極端に落ちていく。一人当たり金額も、四万三千七七四ドルが三万四千六二九ドルにまで落ちた。この劣化ぶりが、九五年と一五年とそれぞれ十位の国との比率を観てみると、非常によく分かる。日本が三位であった九五年は十位の国の一二六%だったものが、二〇一五年には五七%にまで落ちてしまった。他国がどんどん上がってきた間に、日本GDPだけが急減しているからだ。十位の国はこの二〇年に、三万四千八七一ドルから六万五一四ドルにまで上がったのである。これが「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれてアメリカまでを買い漁った当時からの、黄昏れた日本国の末路なのである。』
 
 この政治惨状を日本の右の方々にもよく抑えて頂いて、例えば、こんな想像力を働かせて頂きたいと、切に望むものである。
『新世紀初めころの日本が後世こう語られるのは必定である。薄汚れた支配者達が、世界一質も高く働き者の庶民がいた国を、若者に希望がない急激な人口減少国などと、ここまで堕としてしまった黄昏れた時代だった、と。』
コメント (7)
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