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随筆  僕は「ヒーロー」   文科系

2017年05月20日 03時20分25秒 | 文芸作品
 名古屋中心部の一角。五月の花々が咲き乱れているその小公園に歩を進めると、三三五五と遊んでいた子どもらの中から七~八人ほどが一斉に駈けて来て、僕を囲む。一~四年生ほどの男女なのだが、なかで一番高学年に見える一人が進み出て、拳を握りしめながら尋ねる。「いいっ?!」。僕はいつものように両脚を広げ、腰を落とし気味にして、下腹に力を入れる。
「さー、どうぞ!」
「バシッ!」
 教えたとおりに腰を回しつつ、全身の力を込めて拳が僕の腹に打ち込まれる。いや、打ち込まれると言うよりも、跳ね返されると言った方がよいかも知れない。現に打ち込んだ彼が、拳をブラブラと振りながら顔をしかめて痛そうにしているのがその証拠だ。それでも彼は僕の顔、目を探るようにして、
「効いた? 痛かったっ?」
「ちょっとね!」
 それからは我も我も、延々と挑戦者が続く。なんとか僕をやっつけようという気概を全身に漲らせて。握った拳の人差し指と中指との付け根できちんと打ち抜くと教えたとおりの正しいフックの打ち方をしっかりと確認しつつ挑戦が続く。このごろいつも、本当に、全く、切りがない。

 ここは、僕の最初の孫娘ハーちゃんがこの春に入学して通うようになった学童保育所の前にある市の小公園。僕はハーちゃんをお迎えに来たところだ。そしてこの「遊び」は、ハーちゃんの保育園で僕が開発してきた大人気の「スポーツ」である。人間の腹筋そのものが思っている以上に強いものなのか、それともランニングと並行して僕がジムで鍛えているせいなのか、腹筋だけを目標にさせている限りほとんど痛みを感じないとよーく体験済み、分かっているのだ。そしてなによりも、この遊びを子どもらがどれだけ大好きかというその程度にこそ、よーく通じているのである。好きな理由は多分こんなところ、ゲームやアニメのヒーローが大好きだから。学童保育では特に、女の子の挑戦も続々と続くのである。ちなみに、子ども自身がその腕を折り曲げるポーズを取ったり、僕の下腹部を撫でてみたりしながら「筋肉見せて!」という注文も度々だ。僕はアニメのヒーローなのである。スポーツ大好きの僕としてもまた、興味津々の、面白くって仕方ない遊びになって、
「おーっ、今のは効いた! そのフォーム忘れんようになっ!」
その男の子が自分の拳に目を懲らしつつその形を確認している顔の、なんと誇らしげなこと! シオリちゃんと言う四年生の子だが、小さい身体の割に並外れた威力を示したのである。こういう子は、いろんなスポーツが得意に違いない。全身の協調能力が高く、筋力もあるということだから。

 ところで、この出来事からは僕には想像も出来なかった副産物が生まれた。ハーちゃんの心の中にも僕という大ヒーローが生まれ直したのである。それも「強いヒーロー」という以上のものが。なかなか見たこともないように目を輝かせながら、彼女がこう語ったから分かったことだ。
「爺ーは、学童でも大人気なんだねー!」
 確かに、彼女にとっては確固としてそうなのだろう。学童保育所でこれほど子どもらを自発的に集められる術など一年生ではもちろんのこと、最上級生でもなかなか持ち合わせていないはずだから。この事件からこの方、やんちゃなハーちゃんが僕の言い付けをよーく聞くようになった気がする。子どもには「子ども特有の能力世界」があるという、新たな大発見であった。



 昨日の閲覧数は、2,109! しかも、16日(火)から1,703、1,832、1,957と来た上でのこと。「ベネズエラ」連載がそれだけここの読者に大きな意味を持っていたのかと思いを馳せることができて、嬉しかったこと! 
コメント (2)
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