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随筆紹介  「マンション建設お勧め隊」    文科系

2017年05月24日 10時06分55秒 | 文芸作品
 マンション建設お勧め隊   H・Sさんの作品です

「おばあちゃん、畑仕事ごくろうさまでございます。きついでしょう、草取り仕事は」と、若い男の声がかかる。中腰で畑の草ぬきをする私の姿が彼には哀れに見えるらしい。
「僕Aホームの○○○です。この畑何坪あるのですか? 一戸建にはちょうどいい広さに思えるのですがね」と、話しかけてきた。
「40坪ありますが、私は花作りが面白いので畑仕事は苦にしておりませんよ」と、返す。
「高台ですので水害の心配がない。バス停には近い。高速に乗りやすい。だから、この地域は人気があります。40坪なら手頃ですので買い手が付きやすいですよ。考えてみてくれませんか?」、畑の売却を勧めてきた。
 畑が住宅に換わる。これ以上住宅が建て込んでくると、息が詰まるではないか。そんなこと嫌だ。草ぬきは大変だが花も緑もある方がよいから売る気はないと断った。が、彼は40坪の一戸建てに執着があるらしく何度か畑仕事をしている私に話しかけてきたが、私の頑固さに呆れはてたのだろう。ぷっつりと訪問は途切れた。〈ああ、やれやれ〉と、私は胸をなでおろした。

 何日か経過した。今度はAホームの別の二人組が私宅を訪ねてきた。
「この宅地と畑を寄せれば一二〇坪はありますねえ、今のお住まいも建て替えの時期が来ておりますから、建て替えを検討されて、鉄筋三階建にして一階をお住いにして、二、三階を賃貸マンションにしませんか。畑仕事をやらなくてもいいし、家賃収入が入りますので副収入で気楽な暮らしができると、私どもはお勧めしているのですが、考えていただけませんか。またご主人がおられる時にお伺いいたします」
 ばあさん相手では話にならんと言うようなそぶりで、マンション建設お勧め隊の二人組は再度の訪問を告げた。
「どんなにお勧めされても、家は建て替えません。夫も同じ気持ちです。ぼろ屋でもこのままでいいのです。お金はいりません」
 きつい言葉でお勧め隊を追い返した。
 それ以後も二つの中堅建設会社のお勧め隊が、同じ計画を持ち込んで来た。この業者たちは十年間空き家にすることはないと強調したが、人口は減少しているので借り手など見つかるはずがない。

 こんな狭い土地にマンション建築を勧める背景を私なりに考えた。建設会社の営業マンから見れば、広い土地持ちのマンション経営のターゲット物件が無くなった。次は小規模地主だと私達に目を付けたらしい。古家を壊す、瓦礫を廃棄させる、重鉄骨三階建てを建てる。この3事業で利益を得る。それを考えているのだろうと、私は推測した。
 もし、マンション経営を承知したとする。畑と庭が潰されるので木も花も消えてしまう。近隣の家は一日中陽が当たらない。3人の幼子を育てている奥さんの家の洗濯物が全く乾かなくなる。こんなことが毎日続くと、隣家との良好なつながりはなくなるだろう。何回も言い寄られたが追い返してよかったと私は思っていた。だが、相手も強者、手を変え品を変えて作戦を立ててくる。現在、毎週のように手紙作戦で勧誘が続いている。
コメント
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