年を取る覚悟 S・Yさんの作品です
近頃、十年ほど前にある男性が言った言葉が思い出されてならない。
当時八十歳近かったこの男性は、終活と称して身の周りの品々の大半を処分したと言った。アルバムの写真も全て捨てたと聞いたときは、少なからずショックを受けた。友人や家族、たくさんの趣味の仲間たちとの思い出、絆までが消されてしまったような気がしたからだ。病が彼をそうさせたのだろう。その時はそう感じた。
歳月を経て、いま私も彼に似たような心持になってきたことに驚いている。年齢相応に体の不調はあるが、不治の病というわけではない。ただ老いてきたことで不思議なほど物欲が薄れてきている。これは自然の成り行きなのだろうか。以前に収集していたテレフォンカード、切手のたぐいは今後どうすればいいのか。持っていても仕方がない。欲しくて求めたはずの食器や服飾品の数々、使う頻度が少なくなって仕舞ってあるだけ。そしてそれらがあることすら忘れていることが多い昨今。有名人のサイン入り色紙やTシャツ、こんなものどうすればいいのか。持っていても意味がないものばかりに思えてくる。
そういえば先の男性がこうも言った。「高年になったら親しい友は作るな。居なくなる率が高いから、より寂しくなるばかりだ」そんなものなのか。でも今の私にはそれはできそうにない。どちらにしても歳をとるということは、いろいろと覚悟がいることだ。
近頃、十年ほど前にある男性が言った言葉が思い出されてならない。
当時八十歳近かったこの男性は、終活と称して身の周りの品々の大半を処分したと言った。アルバムの写真も全て捨てたと聞いたときは、少なからずショックを受けた。友人や家族、たくさんの趣味の仲間たちとの思い出、絆までが消されてしまったような気がしたからだ。病が彼をそうさせたのだろう。その時はそう感じた。
歳月を経て、いま私も彼に似たような心持になってきたことに驚いている。年齢相応に体の不調はあるが、不治の病というわけではない。ただ老いてきたことで不思議なほど物欲が薄れてきている。これは自然の成り行きなのだろうか。以前に収集していたテレフォンカード、切手のたぐいは今後どうすればいいのか。持っていても仕方がない。欲しくて求めたはずの食器や服飾品の数々、使う頻度が少なくなって仕舞ってあるだけ。そしてそれらがあることすら忘れていることが多い昨今。有名人のサイン入り色紙やTシャツ、こんなものどうすればいいのか。持っていても意味がないものばかりに思えてくる。
そういえば先の男性がこうも言った。「高年になったら親しい友は作るな。居なくなる率が高いから、より寂しくなるばかりだ」そんなものなのか。でも今の私にはそれはできそうにない。どちらにしても歳をとるということは、いろいろと覚悟がいることだ。