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米中関係、老碩学の予言   文科系

2018年10月05日 06時49分59秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 米中経済・関税問題は、単なる経済問題では到底済まなくなる。ということを2011年に予言していたあるイギリス人老碩学の言葉を紹介する。若くして東大に江戸時代の教育制度を学びに来て以来日英を行き来してきたような、政経版ドナルド・キーンのようなお方だ。
 以下も去年11月にここにエントリーしたもの。ロナルド・ドーア著書への言及はこのブログに多いが、こうすればバックナンバーが読める。ブログ右上の検索ランに彼の名前を入れて、その右を「当ブログ内で」として、天眼鏡印をクリックして検索をかける。すると、ブログ本欄が全て彼のことを書いたエントリーに替わるから、好きなものをお読み願えるということ。よろしく。


【 東アジア諸国に脱アメリカ徴候  文科系

2017年11月15日 | 国際政治・時事問題(国連・紛争など)

 東アジアサミットなど一連の首脳会議で、アメリカの力、信用が急激に衰退していると示された。北朝鮮問題、中国の南シナ海領有権問題、一帯一路開発問題など、現下ほとんどの東アジアをめぐる重要問題において、以下のように。

 北朝鮮問題では、「国連の制裁枠内でよろしい。それ以上のことは不要」という中ロの方向が支持された。「独自で、どこまでも制裁強化を」という日米の方向は浮いてしまったということで、安倍首相の「圧力を最大限まで強め、向こうから話したいという状況に追い込む」という演説も虚しく響いた。ましてや、「北を完全破壊する」と語ったトランプの言葉は、アメリカ軍部にさえ支持されていないと判明した。加えて、最大当事者の一方である韓国政府が以下のような態度を改めて表明したのでは、日米の振り上げた拳も一体どこへ向かうのやらということ。韓国首脳はこんなことを述べたのである。
①米韓安保は、これを軍事同盟には発展させない。
②北への軍事行動は、起こさないし、起こさせない。

 さて、今にも北との戦争が始まるかのように吹き回った日本のマスコミは、何と無責任な連中かと今は思わずにはいられないのである。

 次いで、南シナ海問題。これについてトランプは、ベトナム、フィリピンに対してちょっと口を利いたらしいが、ほとんど脈のある反応を得られなかったようだ。要は「当事者2国で解決します」という、中国の立場と同じものしか返ってこなかったのである。直接の当事者がそう語るのだから「公海」問題も困難な事態が起こるだろうとも言えなかったということだ。

 なお、もう一つの中国一帯一路開発問題でも、アメリカは「参加要望」のようなことを演じたらしい。これに絡んだ中国主導のアジア・インフラ開発銀行とともに、日本の面目丸つぶれということだろう。日本が総裁を務めるアジア開発銀行の将来も、中国の大陸陸海横断開発への参加も、弾き飛ばされたままということになっていくのだろうか。

 物経済の長期不振から、隠密裏のような金融グローバリゼーションに活路を求めてきたような日米。結果として、アジア通貨危機、ロシア通貨危機、南米通貨危機、リーマンショックなどなど数々の金融搾取を働いてきたものだが、その陰で世界にどれだけ不審感を植え付けて来たことだろう。その揚げ句が、嘘の理由で始まったイラク戦争、アラブの春の内乱と混乱、公然たるシリア内乱工作、今度は「北の脅威」では、もうどの国も付いては来ないと、そんな世界情勢到来と観る。

 こんなある老碩学の文章を改めて、再掲してみたい。

『 ドーア本あとがき、「米中関係」で「挑発」 文科系 2016年10月08日

 今紹介している、中公新書、ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(2012年6月第五版)のあとがきほとんどを抜粋してみたい。これを読めば、この本が日本の民主主義信奉者にとっていかに大切な書であるかが分かるというもの。

『「序文に代えて」で書いたように、一九四五年は正に、「終止符を打って再出発」の時期だった。人類同士が7000万人を殺した戦争に対する反省はそれくらい深かった。
 将来、金融化経済の不合理さ、不公平さに対して反省する時期は来るだろうか。同じく7000万人を殺さないで。歴史の教訓があるとすれば、「不可逆的に見える傾向でも、永遠に続くことはない」、であるし「大きな戦争がなければ大きな社会変化もない」である。
 そう考えると、どうしても世界の軍事力、外交力のバランスという現実にぶつかる。本書で描いた日本経済のアングロ・サクソン化は、米国が西太平洋における軍事的覇権国家であり、日本と安全保障条約を結んでそこに基地を持ち、その基地を移設しようとする内閣(たとえば鳩山内閣)を倒すくらいの力がある、という事情と密接な関係がある。
 詳しく論じる余地はなかったが、三、四〇年も経てば、西太平洋における覇権国家は中国になっているだろう。2010年、北朝鮮が韓国の延坪島を砲撃した。世界的な非難が広がる中、アメリカは黄海での韓国との合同軍事演習に航空母艦ジョージ・ワシントンを派遣した。この空母の航入を、中国は一時激しく拒否した。後で認めることになるのだが、この事件は長い冷戦の始まりにすぎないだろう。米ソの冷戦は半世紀近く続いた。熱戦にならず、何千万人もの犠牲者を出さずに終わったのは、ゴルバチョフが東中欧における米国の覇権を認め、「負けた」と手を上げたからだ。
 今度は半世紀も要さないだろうが、中国が勝ちそうだ。なぜそう思うかと言えば、次の条件を勘案しているからだ。
 ○ 今後の米中の相対的経済成長力
 ○ 政治的課税力ー国庫歳入の成長力
 ○ 国威発揚の意思の強さー軍事予算拡大の用意
 ○ 人的資源・・・・・・・・

 西太平洋における覇権の交代はほとんど必然的だと思うが、それについての大問題が三つ。
①アメリカにゴルバチョフがいるか、である。それとも、何千万人もの死者が出そうな実際の衝突、つまり戦争の勝ち負けに決済が委ねられるだろうか。
・・・・・・・・・
③60年もの間、日本を行ったり来たりし、日本人の友達が多い私にとって大変関心が高い問題だが、土壇場になっても、日本は依然として米国に密着しているのか。独立国家として、米中が何千万人を殺しかねない衝突に突き進まないよう、有効に立ち回れるのかどうか。

 「新書」の目的が、挑発的な問いかけで読者を考えさせることだとしたら、挑発はこのくらいで十分だろう。このあたりで筆を置いていいと思う。』

 これまで2度にわたってここに紹介し、後は3度目が残っているこの本によれば、「アメリカではこうだ」という理屈の下に、日本が米国共々経済から外交、軍事にいたるまでいかに危ない橋を渡って行きつつあるか。そのことが、日本経済最新変化の解明を通じてとてもよく分かる本だとつくづく考え込まされている。
 なおこの著者は、「ロンドン大学LSE」から、そこのフェローの資格を得ているイギリス人。かつ、若いころの東大留学時代(江戸時代の教育制度を学びに来た)からの日本オッカケでもあって、日本文学者ドナルド・キーンのマクロ経済版のようなお方だ。本書を書き上げたころは85歳と推定されてなお、この「日本語」健筆。本書中には、60年前の日本にこんな生き生きとした「論壇」があったとして、こんな下りもあった。
「一方に、「岩波文化人」(私の親しい友人であった丸山真男や加藤周一や、まだ珍しく元気であった鶴見俊輔をはじめとして)、他方に、彼らを「進歩的文化人」と野次って、その愚かさを攻撃する「保守派」の福田恒存や江藤淳など、その間の論争を懐かしく思い出す』(P109)」』


 日米の国家累積赤字は、それぞれのGDPに対して2倍と4倍。これらの国が自他国民向けにその国家財政で出来ることはもう知れている。対するに、中国の対外収支は伸びるばかり。対外互恵関係、いわゆる「ウインウイン関係」も、好む好まぬにかかわらず中国の余裕が大きい。株などで儲け逃げていくばかりの日米にどこの国が寄って来るのかと、どんどんなっていくことだろう。トランプのやっていくことは、物経済は保護主義で、金融は規制撤廃を迫ると、そんな自分勝手、得手勝手ばかりになっていく。】
コメント (7)
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